第5話 いざ、墓地ダンジョンへ

「ナ、ナンダココはー」


 墓地ダンジョンの入り口にたどり着いた俺は驚いたようにそう声を上げた。

 もちろん、ここまではジンの作戦通りだ。

 吊り橋効果というものを狙って、墓地ダンジョンに入れば――。

 どうやらレイナはすぐに俺にメロメロになるらしい。


 まあ、メロメロにまではなる必要はないが、ちょっとくらい仲良くはなりたいしな。

 俺はそういうわけで、ジンの作戦に乗ったのだった。


「ココに帰り道の手掛かりがあるカモナー」

「……本当ですか?」


 俺が言うと、彼女は胡乱げな目でこちらを見てきた。

 俺は冷や汗をかきながら、必死で頷いて答える。


「ほ、本当だとも」

「そうですか……。わかりました、それなら行きましょう」


 レイナの賛同も得られたので、俺たちは墓地ダンジョンに潜り込む。

 しかしその時、後ろでガサガサと音がしたことに、俺たちは気が付かないのだった。



   ***



 俺はレイナを連れて墓地ダンジョンの魔物をバッサバサと斬りまくっていた。

 まあここに出てくる魔物は『不死王スケルトン・キング』や『醜鬼王ゴブリン・ロード』などなど、取るに足らない魔物ばかりだったが。


「すごいですね……」


 そんな俺を見てポツリとレイナが呟いた。

 う~む、何がすごいのだろうか?

 これくらいなら、普通に村の子供たちでもできることだ。


 レイナの反応に、俺は首をかしげながらも変わらず次々と魔物を倒していく。

 そんな時、ダンジョンの入り口のほうから叫び声が聞こえてきた。


「うわぁああああああああああ!」


 なんだなんだ?

 誰かいるのだろうか?


 しかし聞いたことがない声だ。

 村の人ではなさそう。


 しばらくすると、ガチャガチャと金属が擦れる音と、パタパタとした足音が聞こえてきた。

 そして現れたのは数人の騎士だった。


「たっ、助けてくれ!!」


 その騎士たちは必至な声でそう言ってきた。


「え、ええと……どちら様で?」

「そんなことを言っている場合じゃない! スケルトン・キングが来てるんだ!」


 なぁんだ、スケルトン・キングか。

 驚かせやがって、全く。


 俺はやれやれと首を振りながら後から現れたスケルトン・キングと対峙する。

 そして剣を構え――。

 一撃で一刀両断した。


「…………え?」


 騎士たちは素っ頓狂な声を上げる。

 何か変なことでもしてしまっただろうか?


 俺が騎士たちの様子に首をかしげていると、彼らは再び叫び出し出口へと一目散に走り去っていった。


「う、うわぁあああああああああ! 化け物だぁあああああああ!」


 って、おいおい。

 人を化け物扱いすんなし。


「……う~ん、俺って化け物なのかな?」

「そこそこ……いや、かなり化け物だと思いますよ」


 俺がぽつりと呟くとレイナが呆れたように言う。

 そうなのか……俺って化け物なのか……。

 彼女の素直な言葉に、思わずガックシと肩を落とした。


「ってか、さっきの騎士たちは誰なんだろう?」


 俺の言葉にレイナは俯き、表情に影を落とした。

 それから小さな声で言う。


「おそらく、私を殺しに来たのかと……」

「へ? なんで?」


 レイナの言葉に俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。

 彼女は暗い表情のまま、こんなことを言うのだった。


「信じてはくれないと思いますが……私はこの国の第三王子に嵌められ、追放されたのです……」

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