夏恋の句 - 甘夏連作 -

甘夏

夏恋の句

好きなんて言えない薄荷はっかの匂い立つ


思い出を夏恋なつこいと呼ぶことにする


前髪を気にして初夏の糸雨しうけぶる


傘立てに置き忘れたり戻り梅雨


窓に残響ざんきょう 薄けぶり遠花火


なにもかも熱を帯ぶ立夏りっかのわたし


薄墨うすずみの乾きし際の半夏雨はんげあめ


初盆会はつぼんえゆくゆくはと口癖にして


夏蜜柑むけば爪半月そうはんげつも泣く


麦茶干す喫茶きっさの窓辺雨のおと


夏の蝶ひらりひらりと君の嘘


ラムネ瓶しゅわり気泡のため息ね


夏果なつはての恋やザラメの砂糖煮る


風鈴を仕出しだす思ひ出のあの人


夏草に隠してもなお罪は罪


さみしさをこぼしたやうね夜光虫やこうちゅう


ネモフィラの青 今日、友は結婚す


ほどきの紐のかたさや風薫る


甘夏のジャム苦味さえ好ききに


夕涼みぽろり本音のこぼれけり

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