第2話 奴隷
「ティリウスのほかは六人か、自己紹介は…俺からか、ルイだ。渡り人ってのらしいからよろしくな」
みな頭を下げる。
「私はティリウスです。見ての通りハーフエルフです」
ハーフエルフ?あぁ、異世界だしな。
そういえば手枷がしてあるから全員分とってやる。
「あ、ありがとうございます」
「つぎは私ね、ギーネ、十七歳。前は盗賊団にいたわ」
赤い髪のショートカットで小柄な体型だな、それにしても盗賊もいるのか。
「つぎわたし!ミルカ、七歳、口減しで売られたの」
ミルクティー色の長い髪を結んでいる。まだこんな子供なのに奴隷にするなんて、
「つぎ俺っちがするっす、アインっす、歳はわかんないっす。生まれてからずっと奴隷っす」
青い髪の獣人?耳と尻尾があるから獣人だろう。人懐っこい感じでまた見回りをし始めた。
「つぎは俺、ディナ、リザードマンだ」
馬の世話をしていたリザードマンのディナがやってきて話をする。話し方が独特だな。
「話、上手くなくてすまない」
「いいよ、ちゃんとわかるから」
頭を下げてまた馬の方へ戻っていく。
いまがティリウス、ギーネ、ミルカ、アイン、ディナ、で五人か。
後二人いるな。
「奥に二人いますが怪我をしていて」
「見せてくれるか?」
奥に行くとこれまた大怪我じゃないか。
「なんかないのか?」
バックを探ると小物入れが出てきた、開けてみると。
「ポーション!それがあれば助かります」
「よし、お願いします」
俺には使い方がわからない。
ポーションを二本渡して、蓋を外して二人に飲ませる。すると怪我が良くなっていく、逆再生のようだった。
「う、あ、」
「二人の紹介はまた今度で、ここから街は近いのか?」
「は、はい」
暗そうな顔をするティリウス。
「なにかあるのか?」
「私達はそこで売られる予定だったので」
あー、売られると思ってるのか。
「売らないから安心しろってかそしたらどうしようかな」
ティリウスはパッと明るくなって、これからどうするかを考えてくれた。
ディナとアインが御者、残り五名は中に残り、俺がディナとアインに挟まれる形で馬車は出発。街に着くと門兵に事情を説明。そこで食い殺された男をアイテムボックスから出して証明すると同時に渡り人認定される。
渡り人認定されると、冒険者ギルドでギルド証を作りFランク冒険者になった。そして宿を取って買い物に出かける。
上手くいって良かった。
まずはミルカ達の服を買いに行く。
このままでもいいと言ったが、俺が困るということでまずはミルカ達、女服を見に行く。
怪我をしていた二人は宿で待機してもらっている。
「ねぇ、ルイ様はどんなとこにいたの?」
手を繋いでいるミルカが聞いてくる。
「んー、奴隷も盗賊もいないような世界だな」
「へー、奴隷がいないんだ」
ミルカは奴隷がいないのが不思議でたまらないようだった。
服屋に着くと金はあるから一人三着ほど買ってくれと頼んだ。女だから色々必要だろうし、宿の子の分も一緒だ。
「男三人か、ディナもアインも遠慮なく欲しいものがあったら言えよ?」
「俺は、剣が欲しい」
「俺っちも剣がいいっすね」
「へー、二人とも戦えるのか?」
「戦闘奴隷だから」
戦闘奴隷?
「他にも奴隷に区別はあるのか?」
「借金奴隷、犯罪奴隷、って感じっす」
ほうほう、ミルカが借金奴隷で、ギーネが犯罪奴隷か。
「お、串肉だ!三本くれ」
「十五ゼルだ」
「十五ゼルってどれだ?」
貨幣を手で広げてアインが教えてくれる。
一ゼル 鉄貨
十ゼル 銅貨
百ゼル 銀貨
一万ゼル 金貨
十万ゼル 大金貨
鉄貨五枚と銅貨一枚を渡し、三本串肉を貰うとディナとアインに一本づつ渡す。
「い、いいんっすか?」
「奴隷、基本的にはない」
「俺は一人で食うのは嫌なの」
三人で串肉を食う。
二人は涙目だ。
「美味い」
「肉なんて久しぶりっす」
喜んでもらえてこっちも嬉しい。金貨はまだ大量にある。やはり運がSSだといいことあるな。
「ルイ様!着替えてきまし」
「あ、肉串」
「分かってるよ、みんなの分も買うから、それより着替えてきたんだな」
「「「はい」」」
肉串を三本追加して今度は男達のものだ。
服、ブーツ、革鎧、剣など男もそれなりに金がかかるな。あとギーネも短剣を買った。
「いやっほー!久しぶりにこんな格好させてもらった!」
「剣の手入れ道具もお願いします」
ディナの言う通り剣の手入れ道具を買って、俺はアイテムボックスがあるからそこにバックの物を全部入れてディナにバックを渡す。
「ルイ様?」
「ディナに荷物持ちをお願いするよ」
「分かりました」
ディナはバックを肩にかけ誇らしげだ。
宿に戻ると二人は正座で待っていた。
「「ご主人様おかえりなさいませ」」
「えっと、ただいま。とりあえずみんな腰掛けようか、地べたはダメね」
ベッドに腰掛けると、ミルカが横に来て、みんな椅子やベッドに腰掛ける。女部屋だから六人部屋しかなかったんだよな。
「とりあえず二人にもう一度自己紹介するね、渡り人のルイだ」
緑の髪の怪我の酷かったほうは綺麗な金色の目をしている。
「私はハーフドワーフのネレといいます」
金髪の子は背丈が高く少し吊り目気味だが綺麗な顔立ちだ。
「私はヒューマンでディアンヌと申します」
これで全員自己紹介が終わったな。
「えーっと、奴隷を解放出来るのかな?」
「そ、それはお捨てになるということですか?」
ティリウスが顔を青くしてる。
「え?解放されたくないの?」
「あ、渡り人様でした。奴隷は一回なると一生奴隷紋が刻まれてしまいます。なので主人のいない奴隷は、また主人を探すか、死ぬかの二択しかないのです」
まじかぁー、ここに来て運が悪いのか?
「じゃあ、俺じゃ嫌な人はいるかい?」
まさか誰も手を挙げなかった。
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