運のない男〜死んだら悪霊も一緒に死んだらしく運が回復しました〜

あに

第1話 運が悪い


 あぁ、運が悪い。

 ビギナーズラック?なにそれ?

 初めてやるものは大抵負ける。だからもうやらない。

 

 目の前で女の子がトラックに轢かれそうになってる。

 あぁ、運が悪い。

“ドン”

「キャァァァァ、だ、大丈夫ですか?」

「だ、だい、じょぶなわけ」

 ないだろ。

 俺は女の子を助けなかったわけだが、避けたトラックが突っ込んできた。


 あぁ、運が悪い。


「大丈夫か?神じゃけど」

「大丈夫に見えるか?」

 変な爺さんが話しかけてくる。

「まぁ、大丈夫じゃな」

「へ?!」

 身体は大丈夫だった。

「一緒にいた悪霊は死んだみたいじゃがな」

「悪霊?俺の運の悪さは?」

「悪霊のせいじゃな」


 ひとしきり泣いた後、

「んで。なんで俺ここにいるの?」

「死んだからじゃが」

「これからなのに?」

「じゃから異世界にいかんか?」

 異世界ってばあれだよな。

「生き返ることは」

「できんのじゃ」

「んじゃ転生になんの?」

「そうじゃな、転移でもいいぞ」

 バブーから始まりはやだな。

「んじゃ転移で」

「了解じゃ」


 身体が透けていく。

「あの!異世界特典とかは?」

「ないな、あ、文字くらいは助けてやるわい」


 あぁ、運が悪い。



「ここどこよ?」

 見渡す限りの大草原の道にいた。

「あ、ラッキー、お金拾った」

 金貨かな?薄汚れた金貨を服で拭いてポケットに。

「おっ、あっちにもあるじゃん」

 コインを拾っていくうちにポケットが重くなっていく。

「おっ、バックが落ちてる。ラッキーだな」

 バックに入れようとすると中に入ってるものが頭に浮かぶ。

・服一式×十五

・ブーツ

・鉄の剣

・鍵束

・契約書×七枚

・魔導書

・金貨袋

・小物入れ

「へぇ、けっこう入ってるんだな。てかこれがマジックバックってやつか」

 金貨袋を取り出して金貨をポケットから入れていく。

 なんでこんなに落としてるのかと思い、周りを見てみると落とし主らしき人がモンスターに食べられている所でした。

「うおぇぇぇぇ」

 夕食前だから胃液しか出てこなかったがこれじゃ俺も食われちまう。

「あ、鉄の剣!」

 バックから鉄の剣を取り出すと思ったより軽い。軽く振ってみるとサマになっている気がする。


 モンスターはゴブリンのようなので強くはないだろうが、人型が最初かよ。

「フンッ」

 食われてる人には悪いが食事に夢中なゴブリンを斬る。

 ゴブリンは倒れて動かなくなった。だが一匹じゃないから続けて斬り続ける。

 計五匹のゴブリンの死体と食われかけの死体が一体。

 武器なんかはもらっておいてあとは、

「あれ、馬車か?」

 馬車が一台止まっている。

 

 用心深く馬車に近づくとゴブリンが出てきたので斬る。

「うおぉ!ビックリした!」

『ギギ』

「まだいるのかよ!」

 袈裟斬りにして倒してみると胸に黒い石があるのが見えた。

「あ、これが魔石ってやつか!」

 転生モノでよくあるやつだな。

 他のやつにもあるのか見てみるとこいつだけのようだ。

「ゴブリンの親玉だったのかな?」


「た、助けて」

 馬車の中から聞こえてきたのでカバーを捲ると、数人の女、子供、獣人?リザードマン??

「???」

「私達は奴隷です。主人がいなくなると」

 話を聞いてみると主人がいなくなるとほかの主人ができるまで首輪が締まって苦しいそうだ。

「俺でよければ」

 契約書の名前を俺に書き換えればいいだけらしい。元主人が死んだので名前は消えていた。


「はぁ、ありがとうございます」

 ひー、ふー、みー、と七人もいるんですけど。

「あの、俺、この世界がよくわからなくて」

「あ、渡り人様ですか?ならまずは私がご説明します」

 他の奴隷の人達はビックリして話を聞いている。

「まずはステータスと唱えてください」

「ステータス」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 運河 類うんが るい 二十一歳

 レベル 8

 力 C

 体 C

 速 D

 魔 B

 運 SS


 スキル 異世界言語

     アイテムボックス

     剣技

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おぉ!運がSSだ!」

 他も悪くないし、なんだよ、アイテムボックスとかつけてくれてんじゃん。あの神様ツンデレか?


「渡り人様は異世界言語とアイテムボックスを持っていると聞いています」

 なんだよ!初期特典かよ!

「あるな」

「やはり渡り人様なのですね」

「そうみたいだな、ルイって呼んでくれ」

「ルイ様ですね」

 よくみるとみんな貫頭衣ってやつか?それしか着てなくて色々見えてしまっている。


 喋ってる女は汚れてはいるが銀髪の長い髪、瞳はエメラルドの様な色をした美人さんだ。

「名前は?」

「ご主人様が付けてくださるのが一般的です」

「元の名前は?」

「ティリウスです」

「じゃあティリウス、色々教えてくれるか?」

「はい!」

 嬉しそうに両手を合わせて頷くティリウス。


 馬車は牢屋の様になっていたので、鍵束を取り出して鍵を開ける。

「おれっち、馬車の見張りをするっす!」

「じゃあ俺は馬の世話を」

 二人が飛び出しながらやることをいってきたので任せることにした。


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