第16話 決断

【涼ちゃん、これできれいになったよ、さきが

ごめんね。悪気は無いから許してあげて、普通に戻ると反省すると思うから】


当然だな、何なんだよ!もう。


洗うのるいに手伝ってもらった。まさか真上から、

さきの…考えただけで、まったくあの酒乱!


でもさ、得したこともあるね。

髪をるいに洗ってもらって。なんかお得!


とりあえず戻った俺達は、そこにしょぼんとしてる

るいに告った新人社員とさきが。


【さきほどは、さきさんがご迷惑おかけして…】


青年、悪いのは君ではない。そこの女だよ!


【ごめんなさい、本当に…せっかくの海を、涼さん本当にごめんなさい。反省しています】


何だ、さき、吐いて酒抜けたのか?別人だな。


【もういいよ、るいに洗ってもらった。さきさん、酒あまり飲まないようにね】


【はい…涼さん、お詫びってことではないんですが、本日のアクティビティ、全てこちらで持ちます。領収書はいただきたいのですが…】


経費!無理だろ、さすがに。何とかなる訳ないよな。


【最初のアクティビティ、バナナボート🚤、こちらにどうぞ】


さき、拍子抜けだよ、そんなに大人しくならなくても。普通でいいんだよ。


【バナナボート🚤いいね、大好き!】


るいが喜んでる。良かった。これから挽回だ。

さき、ナイスアシスト。


ちょっとトイレ。まだ順番先でしょ。


【るい、ちょっとトイレ、青年、るいを頼む】


【お任せを、るいさんに男は近づけさせません!】


一番心配だけどな、もう、るいに告るなよ。


さきもトイレ?まだ吐くのか?

俺の後を追ってきた。


【涼さん、ごめんなさい。楽しく盛り上げようとついお酒飲んでしまって…涼さんのるいへのサプライズ、台無しにしてしまって、もう、駄目だな、私】


さきがしゅんと落ち込んでる。


【これから楽しく行こう!もう何とも思ってない

から】


【涼さん、優しいな…るいが好きになるの解る】


【さきも…ごめん、さきさんも彼氏いるでしょ】


【さきでいいですよ。呼び方。私は涼さんにして慣れるようにします。誰か紹介してくれませんか?と言えるわけないですね、もう私は戻ること確定してるからね】


【そうか、それも何か寂しいね、せっかく共通の友達になれたのにね】


【期待させないで下さい、勘違いしちゃいますよ】


その瞬間、凄い音と激痛、目の前に無数の星が…

きれいだ!何だ。ここでタイムパラドックス…

そんな…意識を失いそうだ!何が起きたんだ?


【こら、てめぇ、涼スケ〜っ!、ふざけるな~!】


るい、お前が殴ったのか?とんでもない力だぞ!

意識飛んだぞ、あぶなー、なにしてんの、るい?


【また、さきと二人で、何やってんの!さきも

なんで、ニヤニヤ喜んでんの!】


【違うの。るい、涼さん悪くない。私が勝手に…】


【勝手に何?人の旦那に、誘惑しようとした?】


るい、落ち着け!今日なんかこんなのばっかだ。


【るい、さきさんがさっきのこと謝ってきて、それだけだよ。何もないよ、るい、今日ヤキモチ焼き多すぎない?】


【何ー!うるさーい、涼スケ!ーーーーー】


思いっきり、きたー!恒例の!

イテー!とんでもなく、イテー!脛〜!


【涼さん、大丈夫?凄い音した。折れてない?】


さきが心配してくれてる。


【大丈夫!それよりも、るいに説明してきて】


【解った、るいー待ってーーーーー】


バナナボート🚤どころでない、何なんだよ、もう。

るい、ヤキモチ激しいよな、特に今日は。


【るいさん、怖いっすね、大丈夫ですか?】


青年よ、るいに告って蹴られなくて良かったな。

脛ばっかだぞ、アイツ。


【何か、不思議な魅力ありますよね、るいさんって、あっすみません。もちろん絶対に手は出しません。職場では、るいさんを守ります】


信用ならんな。こいつ。るいの魅力解ってるだけに。要注意人物だ。


【涼さん、るい連れてきた。ちゃんと説明も】 


まだ納得してないな、るい。


【涼ちゃん、聞いたよ。本当なら許す!】


【るい、解ってくれて、ありがとう。あと、脛もう蹴るなよ。見て、直りかけにまた青タン】


【うわ、あざすごいね。ごめんね、涼ちゃん、ちゃんと話聞くよ。これから】


とりあえず落ち着いた。バナナボート🚤!

間に合うかな?

何とかセーフ。るい、俺の順で、


【さきは乗らないの?】


るいの問いかけに、さきは、


【また吐くと迷惑かけちゃうから…】


青年が、


【俺達も乗りましょうよ、さきさん!】


俺もなんか可哀想になって、


【さきさんも乗れば?気持ちいいよ】


結局、四人で乗ることに。最初はゆっくりだが、

徐々にスピードを上げ出して、何とか振り落とそうと、必死に捕まるが、耐えきれず、るいが、

落っこちた。るい、落っこちたけど笑って、楽しんでる。俺が引き上げると、わざとるいが引っ張って、俺まで落っこちた。ライフジャケットがあるのでまったく問題無し。


【ビーチまですぐだから、先行っていいよ】


俺がそういうと、


【駄目です、Uターンして引き上げます】


融通きかないな、しょうがない、戻るか。


さきさん、元気ないな。まだ気にしてるのか?


【吐きそう…】


待て待て待て!ここで吐くなよ!青年、さきさん連れて行け。


【さきさん、トイレまで我慢して!吐かないでくださいよ!】


大騒ぎな日だな、今日。さきの酔ったのが原因だな。悪気なく反省してるけどさ。


【涼ちゃん、今日さきにお願いしたんでしょ】


【さきさんに聞いた?】


【もう、さきって呼んでるの知ってるから、無理しないでいいよ、理由も解ったから。ヤキモチごめんね、大人げないな、私、でもとても楽しい!】


さきが戻ってきて、


【明日も休みでしょ、ここのホテル予約してあるから、今日は思いっきり楽しもう!ここのホテル、夜のディナーブッフェ凄い人気だよ】


【俺が予約しておさえました!、後、数名の女性達、ディナーから合流します。綺麗どころなので、こうご期待!俺次のアクティビティ予約してきますね】 


青年、でかした!


【涼ちゃん…喜んでる…】


るい、違う違う、勘違い!綺麗どころの反応でなく、

泊まれるからだよ、勘違いしないで。


【泊まりで喜んだだけ、るい、安心して】


【今日の私、どうかしてるね、楽しいけど、なんか不安もあって、ちょっとトイレ】


るい、不安なのか。さきが、


【涼さん、るい、不安だと思う。この世界から私は戻るけど、そうすると、るいは孤独に…支えてあげて、この先、何があってもるいを離さないで】


【解ってる、大丈夫】


【あと、ユキのこと、今度詳しく教えて】


【難しいけどさ、記憶ないし、子供になっちゃってるし、それに会えるかな。いろいろあってさ】


玲奈と会わないとユキにも会えない。それに、このことを話すとして理解してもらえるかな?

どうしても会わないとならない時は…さきにも、

同席してもらうか。それしかないな。


その日はシュノーケリング、パラセーリングを、

その後、美味しいディナーブッフェを堪能して、

るいと部屋に戻った。さき、青年もそれぞれ。


【るい、テラスでカクテル飲まない?少し】


【いいね、行こう。フルーツもね】


二人でテラスに。波の音、暖かく湿った風、

たくさんのキャンドル、ここは最高だ。

るいの本心を聞き出そう。


【るい、今日は楽しかったね】


【涼ちゃん、さんざんな目に会ったけどね、さきの…直撃だもんね。頭上からさ】


【まいったよね、あれは、ところでるい、元の世界に未練ないの?】


【ないよ…って言いけれないね。少しはある。だって生まれ故郷な訳だし、でも涼ちゃん離れるのは嫌だから、それはなんとしても避けたい】


【そうか、俺もそっちに行ければね、記憶の残る確約があれば迷わないんだけど】


【涼ちゃんはこの世界で何度か未来、過去に行ったりしてるでしょ、この世界の記憶しかないし、ここにいることが最良だよ】


るいの横顔を見て、ドキッとする。

何度見ても、素敵だね、るい。


俺はるいの全てを受け入れることはできる。

ただ、俺にもしものことがあったら、るいは…

一人ぼっち。今回、ここにさき達を呼んだのは、

プライベートでも気の許せる仲間を作ってほしくて。るいは職場で人気あるけど、仕事抜きでもね。


様子見て社交的だし、モテる。

るいはこの世界で幸せになれる!、なれる…

なれる…………………はず…だよ…


なぁ、俺は言い聞かせるだけじゃないか?

るいの人生奪うことにならないか?

自分本位じゃないか?


【涼ちゃん。何考えてるの?】


るい、俺は…間違ってないか?


【るいに見惚れただけ!可愛いね、相変わらず】


るいは恥ずかしそうに、腕をつついてきた。

そしてしがみついてきた。


その様子を見て、可愛い、でも寂しさを誤魔化す、

そんな気持ちのるいにも見えた。


何か、苦しいな。こんなにそばに、最愛の人がいるのに、何で気持ちはこんなにも遠いのか?


るいとの人生、もし俺がまた、時空の狭間に引き込まれたり、何らかの拍子で過去に戻ってしまったら?


るいは?


守るって意味は何なんだ?






















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