第10話 海
【るい、水着、どうだった?】
【大丈夫だよ。サイズ合ってる】
るいを驚かせようと、奇麗なビーチのオーシャンビューホテルの予約を入れておいた。
ここは玲奈と出会った場所でもある。
そして、二度目の人生でも、このときも玲奈と
幸せになろうとして、やり直すはずだった。
あえてここを選んだのは理由がある。
想い出の書き換え、それとここに来ても迷わない、
その二つ。るいに約束するためだ。
るいの性格なら解ってくれる。俺の真意を。
そう信じていた。
【今週末、海に行くよ、泊まりだからね】
【ほんと、涼ちゃん!楽しみー!】
【俺も楽しみー、るいの水着!】
じーと見てる。来るぞ来るぞ、脛にプロテクタしてるもんね。もう余裕。さー、いつものこい!
【…涼ちゃん、恥ずかしいな、ちょっと…】
えっ、拍子抜け。照れてるの、何で?
るい、らしくないぞ。
【じゃ、来てみたら?ここで】
【…うん】
おい、どうした?るい、もしかして?
【こういう水着は来たことないの?】
【でも、涼ちゃん選んでくれたから…着る】
ごめんね、るい。もっと地味にすれば良かった。
俺の好みで選んでしまった。
…着替えてる…なんか、すまん。
部屋から出てきた。恥ずかしそう…
でも、びっくりした。凄い似合ってる!
【似合ってる…凄く】
何もそれ以外の言葉見つからない…素敵過ぎて、
こんな素敵な人が俺の奥さんなの!
【涼ちゃん、ありがとうね】
これは海で絶対にるいをボッチに出来ないな。
ずっとそばにいなくては駄目だ。
見れば見るほど、完璧だよ、ほんと。
週末が楽しみだ。心配だから👕も着せておこう。
さあ、来たぞ週末!念願の海。
【涼ちゃん、ここの海って】
【覚えてる?】
【何で!玲奈と出会った場所じゃん!何で、ここにしたの!未練が残ってるの?玲奈のこと…】
ヤバ、俺の真意を解ってない。
【涼ちゃんとの大切な想い出の海にしたかった…】
泣きながら、しゃがみこんだ。周りの人が見てる。
まいったよ、これ。そうじゃないんだ。るい。
【あいつ、あんなに可愛い彼女泣かしてるよ】
【ひどいな、この場所で喧嘩?】
【ひどーい、サイテー!】
もう、頼むよ、るい。一旦ここから離れよう…
【るい、おいで、泣かないで】
るいは素直に、引っ張った手を振り払わず、
立ち上がり、俺についてくる。
片手は手で涙を拭っている。
余計に可哀想だ。なんか、俺も泣きそう…
人気のない、ビーチの端の岩場に。
【るい。ごめんね】
【涼ちゃん、泣いてごめんね、恥ずかしいよね】
【るい、想い出の書き換えしたかったんだ】
るいは、キョトンと。意味が解らないみたい。
【書き換え?何の?】
【もう、ここはるいとの海、玲奈との想い出は今日変わった、書き換え完了!、それと約束の海】
【約束って?】
【るいを絶対に離さないって約束】
【でもさ、涼ちゃん、前からね言おうと思っていたけど、ユキのこと。もしユキに記憶戻ったら、私は涼ちゃんの前から消えるからね】
【何で!ユキのこと?記憶が戻ったとして、何で、
るいが俺の前からいなくなるの】
【だって、ユキも涼ちゃんも元の世界で結婚しておたよね?それなら本来そうすべき…ん、涼ちゃん?】
俺はるいの口を手で塞いだ。聞きたくない!
間違ってるかも知れない、比較することは。
でも…俺は本当に正直な気持ちで、
誰よりも、るいが愛おしい。
ここで、ユキ、玲奈が目の前にいて、俺を受け入れてくれたとしても、それでも、
るい、俺は君を選ぶ。
その気持ちを伝えようと、深呼吸して、その瞬間、
今度はるいが俺の口を塞いで、
【駄目、言わないで!私の決意が揺らぐ!】
俺はるいの手首掴み、口からはずして、
【何だよ、決意って!今ここに捨てていけ!、そんな決意はいらない、嬉しくない!俺がここにるいを連れてきた理由は少しも乱れていない、俺には、るい!
なんだよ、もう俺の全てを支配している。気が付いてないのか?それなら本気で怒るぞ!】
るいは見たことない表情でびっくりしてる。
驚いているような、不安なような、何とも言えない表情だ。
【涼ちゃん、何があっても一緒にいてくれる?】
【ああ、それ以外何の選択肢があるんだ?】
るいは力が抜けたように、倒れ込む。危ない!
ここは岩場だ!慌てて抱きかかえた。
【涼ちゃん、幸せにしてくれてありがとう、この先何があっても涼ちゃんのそばにいます、そして絶対に離さないで!離さないでね、涼ちゃん!】
るいを強く強く抱きしめた。
不安にさせてごめんね。
【るい、何があっても離さない、覚悟して!
誰かと比較とか、離れるとかの言葉は禁止!】
るいは、笑顔に。いつものるいになった。
【涼ちゃん、今凄く暖かくなったよ】
【夏だからな、暑いよな】
【そういう意味じゃな〜〜〜いっ!馬鹿!】
いてー、脛だよ、また脛蹴られたよ、
水着だから痛み倍増!
【るい、お前いつも脛ばかり狙うんだ…】
でも、るいを抱きしめたままだぞ。
根性見せてやる!
【涼さん、大丈夫ですか?】
何が涼さんだ、ユキの呼び方マネして?
あー、脛イテー!
るいは俺にしがみついてきて、ヤバ苦しいって!
【涼ちゃん、涼さん、涼!もう、なんて呼び方しても、そばにいてくれるって、本当に信じられる!
ありがとう、私の旦那さん】
るい、苦しいーーーーー、息が、息が!
【あっ、ごめんね、涼ちゃん】
ふー、やっと息が出来る!るい、力強いな。
るいの両肩を掴んで、引き寄せて約束のキス。
パラレルワールドに告げる。この先俺達の前に
現れるな!何があっても引き裂かれないぞ!
何が人生のやり直しだ!この人生以上がある訳
無いだろ!
るい、最初で最後の俺の初恋。
本当の恋に気が付かせてくれた。
るい、ビーチに戻ろう。
脛イテーな、ズキズキ!あっ、既に青タン…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます