第5話 オリオン
走って、走って、部屋に。
【るい!】
るいの眠ってる姿を見て、ん?メモ?
※涼ちゃん、ごめんね。私が居るからこうなるんだよね、駄目な私だね。ユキとの約束もあったのに、玲奈まで涼ちゃんから取り上げてしまって…
もういないほうがいいのかな?どっかに行ってしまったほうが…涼ちゃん幸せになれるのかな?
涼ちゃんは自分の幸せを考えてね※
椅子に腰掛けて、机にうつ伏せになって寝ている、るい。
えっ、この薬は?何だ!
【るい、吐き出せー!何としても!】
無理やり起こして、背中を叩いて、
【るい、しっかり!頼むから吐き出してくれ!】
ん?目を覚ましたか?
【るい、大丈夫か?今、救急車呼ぶからな】
【ん…涼ちゃん…?救急車?】
るい、意識ある、良かった。ほっとして、
腰が抜けた。
【意識は?るい、気分は?】
【涼ちゃん、どうしたの?】
【どうしたのじゃないよ、どれほど心配したと思ってるんだよ。とりあえず救急車を】
【大袈裟だってー、体冷えたんだよ、☔濡れたから、この風邪薬眠くなるね、それに効きすぎ】
【風邪薬?睡眠薬じゃないの?】
るいは、キョトンとして、
【何で睡眠薬?涼ちゃん持ってないじゃん】
そして、何かに気がついたように、るいは、
【あっ、そうか!睡眠薬ね、ふふっ、るいはそういうタイプではありませーん、そんな乙女心は…】
と、言いかけたるいを強く抱きしめて、
【涼ちゃん…痛いよ。涼ちゃん?】
何も言葉がない。るいはずっと一人でいたんだ。
それを悟られないように、明るく。
【るい…もう少しだけ】
【涼ちゃん…痛いんだけどな〜】
【もう少し我慢して】
るいは諦めたのか、言われた通りにしてる。
俺は言葉でなく、涙がとまらない。たぶん、
声も出せない。
【涼ちゃん…るい、涼ちゃんと出会えて幸せだったよ、だからね、これからは…】
【るい、少し黙ってろ!】
【解った。これ前もあったね、覚えてる、そうそうら、あの時はさー】
俺は黙らない、るいにキスをした。
ただこれは、黙らせるためでないことは自分でも
解ってる。何十秒し続けただろう。るいは、
【涼ちゃん、苦しいって。もう】
るいは、少し笑いながら、俺を見てる。
【るい、俺は決めた】
【玲奈のこと?るいも協力するからね】
【違うよ、るい】
【何が違うの?】
【るいとずっと一緒にいる。これから先ずっと】
るいは、困ってる。
【涼ちゃん、それは違うでしょ、玲奈と…】
【るい、玲奈は、もういいの。言うこと聞いて】
※るい、困ったときはいつも支えてくれたね。
※るい、玲奈とユキと俺のためにいつも自分を抑えてくれたね。
※るい、この世界に来て不安だらけで、それでも明るく太陽のように暖かく包んでくれたね、
※るい、こんな情けない俺を頼むね。
※るい、愛してる。
るいにささやいた。るいは何も言わない…
るいの気持ちを無視してるのかな?俺は。
【涼ちゃん、オリオン見に行こうね、約束!】
るい、それは冬にならないと。ん?どういうこと?
【涼ちゃん、オリオンが見える場所がいいな、もし無理ならオリオン見える季節までに…ね】
???るい、何が言いたいんだ。
【もう。鈍感!だから、涼ちゃん、モテないんだよ。なんで私から言わせるの?せっかちな女って思われたくないから言葉選んだのになー】
あっ、旅行ね。でもオリオンが見える季節までって、冬?冬に?それまでに?
【呆れたー、解るまで涼ちゃんと話さない!】
【一緒に住むんだから。それは無理だろ、るい】
るいは少し考えて、
【それでもいいか、涼ちゃんの本音解ったから】
【何だよ、はっきり言ってくれよ】
【もう。いいの。嬉しかったから】
るいはとびっきりの笑顔を見せてくれた。
なんて素敵な。俺には不釣り合いだよな。
【涼ちゃん、玲奈としっかり話して。答えが出てるにしてもね。曖昧にしておくの、嫌でしょ、すぐには無理だけど、いつか…ね】
【そうだね、るい。よろしくね】
【こちらこそ、よろしくお願いします】
もう、迷わない。これで良かったんだ。
みんなを幸せになんて、俺がどれほどの男だと勘違いしていたんだ、自分で自分を呆れる。
一人を幸せにする。それはね、るい…
あなたです。
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