第341話 あなたのためならとろろもおろすの。だって新妻だから。
「ふぅ。やっと駅についた。ひより、大丈夫だったかな…。ちゃんと、あの友達と仲良くなれたんだろうか。。」
ひよりの入学式を見守り終えて、仕事をしていた由奈氏。かわいいかわいいひよりが、今どんな気持ちで自分の帰りを待っているのだろうと、胸が張り裂けそうなどこまでも過保護なマザー化していた。仕事を終えて自宅の最寄り駅に着くと、ひよりの大好きなシュークリームを2つ買った。1個半がひより、残りが自分の分だ。
「ひよりのおかげで、小走りする機会が増えたな…。運動不足に丁度いいや。」シュタシュタ…
あなた、ドライキャラ捨てたの…?結構前から捨ててたね。そうだった!
そんなマザー由奈が競歩の如く、ひよりの待つ家に急ぐ。「おうちにいるよ!」とはひよりからメッセージが来ていた。しかし、大学での様子はまだ聞いていない。
「ひよりっ!ただいま!」ピヨチャン!
「由奈さんっ!やっと帰ってきたのね!」バタバタバタ!!
「ひより、どうだったの?」オイデ!
「ううっ…し、し、しゃんっ!!」ガハッ、ピョン、ガシッ、ギュ!
「ひより…、、嫌なことでもあったの…?」ヨシヨシ
安定の塩顔を見るなり、由奈の胸に飛びついて顔を埋めるぴより。ああ、なんてかわいいの塊。由奈は、埋めるほどでもないかわいいサイズの胸からそっとひよりを離すと、顔を覗き込んだ。フンガフンガ!!
「(´இωஇ`)チャパパ…」*ちっぱいと言うと怒られるから濁した。
「どうした?嫌なことあった?!」
「あ、ごめん。別になんもなかった。なんか、雰囲気に飲まれておせんちめん。」ニャハ
「な…なんだ…。もう、、びっくりさせないでよ。そろそろ髪の毛抜けそうなくらいには心労重なってるんだからね。」
「あい、、それはほんとーにもーしわけないとは思っていまする。足を向けて寝られません。。まぁいつもひよりのちっぱいを向けて寝ていますが。あ、せめて晩ごはんは作らせていただきましたのでどうぞ。あ、おかばんお持ちします。」ケガヌケタラタイヘン…
今更、甲斐甲斐しく由奈の鞄を持つと、キッチンへと逃亡したぴより。捨てられないための3箇条は、本気で怒られる前に逃げる、泣いて効き目がなかったら謝り倒す、身体でごまかせるときはとにかくマスラオ。
やれやれと靴を脱ぎ、遅れて家の中に入ると、久々にひよりが腕によりをかけた晩ごはんがテーブルに並べられていた。
「え、どうしたの?今日なんか、おかずたくさんあるね。全部作ったの?」
ひよりは、ひよこ柄のエプロンをひらひらさせて、くるっと回るとまたちょっと面倒くさいドヤ顔でキメた。キュピーン
「へへっ、ひよりももう大学生だかんね!愛する人がお仕事を頑張ってくれてるんだもの。新妻として当然なのです♡」
「ひより…。」カオガウザイ…
「ご覧くださいませ!ひより特製の白米!ひより特製のなめこのお味噌汁!ひより特製の肉野菜炒め!ひより特製のぉー、ツナサラダ!そしてひより特製のぉーーー!とろろ!!」*恩着せがましい
「とろ…ろ…。頑張っておろしてくれたんだね。」
「まじ、手がかゆかった。。」カイーカイー
「ありがとう、いただきます。」
「おビール飲む??」
「あ、じゃあ。うん。」
由奈は思った。わかった。わかったから早く、大学どうだったのか言えよ…と。しかし、ぴよりがなぜか絶好調だったからとりあえずビールが注がれるまで待った。
「はい、どうぞ。お召し上がりください♡」
「はい、いただきます。」モグ…
「どう?美味しい?奥さんの手料理♡」
「美味しいよ。ていうかなんなの?そのテンション。」
「だって!やっと大学生だし?本格的に同棲♡って感じだし!これから毎日、ひよりのご飯でお迎えするのよ!裸エプロンは突然やるからワクワクしててね?」
「そっか。嬉しいよ。裸エプロンは別にそういう趣味ないからいいけど。でもあんまり無理しないでね?それで…大学はどうだったのさ?」
「まぁまぁ。それはゆっくりお話しますから!ひよりのかわいいエプロン姿に見とれててよ♡」
「………。」
つうか、なぜ大学の話をしたがらないんだ。。気になりすぎて落ち着かない…。
「ひより?あんまり楽しくなかったの?」
「いえ。あ、とろろ食べてるからちょっと待ってね。」ズルズル・・・
なんなんだ、、一体・・・。
続く。
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