第340話 お腰につけたきびだんご1つ私に下さいな。的なほっぺた・・・

 大森笑美、18歳。都内の進学校を卒業し、国立難関大に入学した。

 彼女には、子どもの頃から努力したと胸を張って言えるほどの強い自負がある。


 大森笑美、いきます。


 私は教職者の両親の元に生まれた。上には兄が2人。上の兄が一番優秀で、今は外資系金融会社に勤めている。下の兄は現在大学院生だ。年齢が近くないこともあり、特別仲が良いわけではないが、喧嘩をするほど近しく接してもいない。


 子どもの頃から、私には焦りと不安があった。兄2人の出来が良いこと、同じだけの期待を私にかけてくる両親。周りの人も、私が「出来る子」であることを当たり前に見ていただろう。


 頑張らないと。ちゃんとしないと。そう思えば思うほど、周りのクラスメイトが遊びに夢中になる姿を見ると嫌悪感があった。


「馬鹿みたい。何が面白いんだろ…。」


 学校からまっすぐ家に帰り、勉強をすればするほど安心できた。


「私はやることをやっている。他の子とは違う。」


 しかし、高校生にもなると、周りには変化が起きていた。


「笑美、聞いて!彼氏ができたの!」

「…え?いつの間にそんな…」


 衝撃だった。いつも一緒にいる友達は、学校では私といる。彼氏ができそうなそぶりなどなかった。


「塾で仲良かった男の子に告白されたんだ♡」

「そ、そうなんだ…。良かったじゃん!!」


 気がつけば、私より成績の良い同級生も、彼氏彼女が出来始めていた。どこにそんな暇があったの?いつどうやってそうなったの?


「どうしよう、、私も付き合わないと…。」


 人と比べる癖ができていた。人より出来ないことがあると不安だった。しかし、私は気の抜きかたを知らなかった。


(皆、メイクしてる。美容室とかアパレルブランドの話も詳しそう。。)


 まずい、出遅れた…。笑美が一つのことに囚われている間に、周りは色んなことに目を向けていたことに気づいたのは高校三年生の頃だった。しかし、すでに大学受験は目前。笑美の焦りと不安はさらに増幅したのだった。


 ただ伸ばしただけの髪の毛、ほとんど手入れをしていない顔。そして、恋に進展しそうもない交友関係。これを切り開くには時期が悪い。そう、


「私…大学デビューしてやる!!」


 こうして、わずか数ヶ月の間に、笑美は凄まじい自分改革をやってのけたのだった。


「うん。完璧ね。」


 人生で初めて、髪を染めた。雑誌を見ながらメイクも覚えた。スタイルは元から良かった。すらりの伸びた背は気がつけば170になっていた。磨けばそれなりだと自覚していたのだ。


 だけど…笑美は入学式に奇跡をみた。


(なに…、このちびっ子…。え、もしかして…私と同じ入学生??)


 笑美の目に飛び込んできたのは、自分とは真逆の、背の小さな女の子。こどものようなあどけない顔にはまるですあまのようなほっぺた。くりくりとした目で、不安そうにしている小動物…。


「妖精さん…お名前は?」*思い出補正

「ひよりだよ!六浦ひより!」


 思わず声をかけたその妖精さんは、ひよりと名乗った。そして、一人で淋しいから私を必要としていると。


 ……かわいい。私がどれだけ頑張っても、この小さき命の尊さ、可愛らしさは出せやしない…。そして、一人では生きられない妖精さん。私にそばにいてほしいの…?


 私が、守るよ!!!さぁ、肩の上に乗ってっ!!*イマジネーションの旅にでかけた笑美。


「笑美ちん?どうしたの??」ドチタ?

「あ、ううん。なんでもない。ちょっと考え事。」

「ひよりの飴あげるよ。ほい。」

「・・・ありがとう。」

「おいしいよ、ミルク飴。」コロコロ

「・・・ちょっとだけ、、ほっぺた触ってみても、、いい?」

「え??いいよ。笑美ちんもやわこいのすき??」

「うん、、」


 フニフニ・・・モニモニ・・・サワサワ・・・


 好き・・・ウォォォォ‼


 お前もかよ。

 続く。

 

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