第337話 保護者みっけた!
入学式が始まる5分前。由奈は来賓席から前方にいるひよりを見ていた。
(ひより…何やってんだ。なんで座らないの、、。あ、恥ずかしくて知らない人の間に座れないのか!?)
人見知りが発動していたぴより。両手をもじもじさせながら、一歩前に足を出しては引っ込めていた。ステップを刻むかわいいの塊ぴより!
しかし、由奈はもどかしくも手を出すことはできない。ひよりが少し動くたびに由奈の体もぴくっと揺れる。不本意にもステップを刻む由奈氏。厳粛な式が行われる前だというのにフュージョンをキメるこのカップル。
今すぐ助けに行きたい…だけどそれをしたらひよりのためにならない。ああ、涙が出そうだ。。*幼稚園のお歌発表会で我が子だけ泣き叫んでいる母の気持ちに近いです。
(ああっ、どうしたら…。あ、ひよりが歩いた!歩いた!そう!右!左!いっちに、いっちに!歩いたっ!!)*初めて歩いた赤ちゃんに歓喜した母をご想像下さい。
頼むっ、頑張れ!もうほとんど着席してるよ、ひより!そうだっ、そこに座れ!あぁぁぁっ!!誰か声くらいかけてやれよっ!可愛そうだと思わないのか!!まだこどもだぞ!!!*周りにいるのは同級生です。
来賓席で1人立ったままオロオロしているやけに若くて美人な由奈氏。ものっすぉい目立っていた…。エ、ナニアノビジン…フシン…
さぁ、でもやっとこさ座ることが出来たよ!やったね、ぴより!そのわらび餅ほっぺたで、お隣に座っている同級生にきゅるんとコミュニケーションを爆発させちゃいなっ!
「ありがとう!一人だったからどこに座ったらいーかわかんなくて焦ってたの!」テヘヘー
「そうなの?空いてたら座って良いんだよ?まぁ、大体の人が入学前に友達作ってたりするしね。臆しちゃうとこあるかもね。」
「ひょえ?(‘◉⌓◉’)…友達どうやって先に作るの??」
「SNSで知り合って…。結構皆んなやってると思うけど…。」
「そ、そーなの??(‘◉⌓◉’)」ピヨリヤッテナイオ?
「まぁ、私は高校の同級生いるし、知ってる先輩もいるからやってないけど…って、入学式始まるよ。」
「あ、うん。シー!だね。。」ピヨリシズカニデキルー!
入学式が始まる。小声で話していたけど、静まり返った会場に気づき、ひよりもお口をへの字にチャックした( ̄ヘ ̄;)ムン
学長の挨拶が始まり、一同が真面目に耳を傾けている。しかしぴよりはあることに気づいて青ざめていた。
(ひ、ひより、、出遅れだったかも。。と、友達できるかな。。お昼ご飯、一緒に食べてくれるかな…。ぼ、ぼぼぼ、ぼっち飯やだな。。)ガビーン
チラッと隣の子を見る。ひよりとは対象的に、大人びたウェーブのかかったロングの茶色い髪、しっかりと化粧をした派手目の顔。
(綺麗な子だけど、渋谷っちとも違う感じだな…。今まで話したことないタイプ…。)
同級生も先輩も、同じ高校からこの大学に入学していると言っていた。難関国立大学だ。きっとひよりの高校より学力の高い高校だったのだろう。そう考えると、ちょびっと人見知りが発動してきたぴよたん。
(早く終わって、由奈さんに会いたい。カンガルーみたいにお腹の中に入ってひきこもりたい。。据え膳上げ膳でお世話してもらいたい。。)*なんて思考
朝とは打って変わって、不安一色のひよりだった。(´ . .̫ . `)ショボン…
そして、入学式が終わると…
(ふぅ…。終わった!由奈さん…)キョロキョロ
人が多すぎて由奈を見つけられない。会場を出てから落ち合うしかなさそうだ。立ち上がり、移動しようとしたその時、、隣の女性が話しかけてきた。
「終わったね。ねぇ、学部どこ?」
「えっと、経済だよ!」
「あ、一緒だ。私、大森笑美。えみでいいよ。」
「う、うんっ!あ!ひよりはひよりだよ!六浦ひより!」ピヨリダヨ!
「ひよりね。宜しく。あとで友達と合流するけど、一緒に行く?」
「いーの!?行くっ!」
「あはは。なんつーか、小動物だね。」
「笑美は大動物だね!」*背が高いと褒めたいのに完全に言葉を間違えたぴより。
「大動物…。まぁ、でかいとはよく言われるけど。」
椅子から立ち上がる笑美。すくっと直立した瞬間、ひよりはセカンドインパクトのような衝撃を感じた。
「ほわぁ…、、由奈さんより大きい。。」キリンサンガスキデス…
「ゆなさん?誰?」
「あ、えーと。あ!そうだ!あのね、今日来てくれてるの。帰る前に会わないと!」
「そうなんだ?じゃあ、私は先に行くよ。」
「えっ!ま、待って!一緒に行きたい!ちょっとだけ話してくるから待ってて!」オネガイステナイデ‼︎
「ん、まぁ。いいよ。」
ひよりは思った。この人を逃してはならない。ひよりの大学初日を無事に過ごすには、この人とのご縁を必死に繋ぎ止めるしかない。っていうか、ぴよりの面倒を見てください。そう切実に、大森笑美を離すまいと考えたぴよりは奇行に走った。ぎゅ。っと笑美の手を握ると、親子感を出しながら由奈の元へと引導する。ここだけの話、身長差は23センチだった。ちょうど足のサイズくらいですね。
一人で心細いに違いないぴよりを探しておろおろしている由奈が、新たな親子関係をすでに見つけていたぴよりを見て、驚いたのは書くまでもなかった。
続く。
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