第336話 ひよりのハツがミジンコみたいなった
「あ、桜が咲いてる~!みてみてみてみてみてみて!ほらほらほらっ!」ウロウロ
「ホントだ。でもひより、大学までの道をちゃんと覚えてね?」
「桜餅食べたいね。うん、わかった。あれは梅?桃?お腹空いてくるね~!」
「朝ご飯食べてそんなに経ってないでしょ。ほら、ここの角曲がるんだよ。覚えてね。」
「わかった。宅急便の車が止まってる交差点を右ね!」
「いや、毎日停まってるわけじゃないから、その覚え方はまずい・・・。」
ひよりがこれから4年間通う大学は、ひよりの自宅から電車を二本乗り継いだ所にある。駅からは歩いて10分かからない位だ。今日のうちに、ひよりに駅からの道を覚えて欲しい由奈は、なるべく道を教えずに歩きたかったがそうはいかなかった。甘えん坊将軍ぴよりの由奈への頼りっぷりは留まるところを知らない。
「やっぱり。。私がいると余計にひよりがダメになる気がする。。」
「由奈さんっ、手繋いでもいーい?」
「ダメ。もうすぐ着くし。それより、一人で大学まで行けるようになりそう?」
「んー、道は大丈夫そ。電車の乗り換えがまだ意味わかんない!」
「まぁ、そのうち慣れるでしょ。明日から一緒にこれないんだからね?覚えないと毎日迷子になっちゃうんだよ??ほら、着いたよ。」
これから長く通う場所だ。さすがのひよりも独りになればちゃんとするだろうと、懸命に思い込もうとする由奈氏。正門の前に立ちあたりを見渡すと、体育館に向かう人の波が。続いてそちらに歩くと、生徒と来賓は別の入り口から誘導されるようだった。
「ほら、ひより。ここから1人で行くんだよ。」
「わかった。由奈さんはあっちだね。終わったら会えるよね?」
「会えるけど、すぐ仕事に行くからね。じゃあ、またあとで。」
「ちぇ。由奈さんとスクールラブしたかったな!じゃ!行ってくる~!!」トテテテテー
かわいいセリフを言うと、すぐに別れを告げて入場口へと走るぴより。意外にすんなりと行動したので由奈は面を食らった。
「お。意外と1人でも大丈夫そうだな。だよね。いつまでもお子ちゃまでいるわけにいかないって、ひよりもわかってるんだな。よしよし。」
今日は安心して仕事に行けそうだと、笑みをこぼしながら来賓席へと歩く由奈。これからまた、新しい環境で頑張るんだね、ぴより。ずっと近くで見守っているからね。*お母さんの心境。
そして、今日は良い子にしてくれているから、夜は抱き潰そう。*ひよりが彼女なのも忘れない。
だがしかし、ひよりは単に深く考えていないだけだったんだ。。
「うわぁ~!人が沢山いる!この人たちがひよりの新しい同級生なんだね!えーと、どこに座ればいいかな。。空いてる席は、、えっとえっと・・・。」
ぴより、行きます。
うっ。。良く考えたら、知ってる人がいないんだった。ひよりがなまじ頭が良すぎるせいで、、ちょっと難関大なんて受かっちゃったもんだから、、同じ高校の人がいないんだった。。
これはまずい、、ひよりの内なる人見知りなぴよりがこんにちはしてきた。。び、び、びぇぇぇ。。だ、誰か、、お隣に座ったら仲良くしてくれそうな人は・・・。ゆ、由奈しゃんっ、、怖いよぅ。。
大変だ。ひよりは自分が孤独なことに気づいてしまったんだ。来賓席の方を向いて由奈を探すが見つからない。誰も助けてくれないんだ。どうしよう、、赤羽っち、、渋谷っち、、大宮っち、、あと戸田っち、、。もじもじとしながら立ちすくんでいると、あとから入場してくる人がどんどん席に着いてしまう。怖じ気づいたぴよりは、ミジンコの心臓をバクつかせていた。
「お隣座っていいですか、、これを言うだけ。簡単だ。頑張れ、ひより。」
今までのひよりではなかった。だって、すぐ近くには由奈さんがいる。もし失敗しても、逃げ帰る場所はあるんだ。だから思い切りいくんだ。勇気を出せ、ぴより!!
そして、ひよりの目にはアスリートの炎が灯ったんだ。*必要あるかは別として。カッ‼‼‼
「ひ、ひよりは背が小さいから、、1番前に座ろっかなー!あ、あそこが空いてるな。一番前じゃないとダメだからなー!!」*大きな声で言い訳をのたまうかわいいの塊。
「あ、ここどうぞ?空いてるよ。」
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!あ、うん!」ピヨリスワリュー‼
言い訳が功を奏して、声をかけてくれた1人の女性。ひよりの新生活、お友達第一号現る!?
続く。
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