第283話 ぴより最強説確定
佐々木由奈。知的でクールな人気者だよ。
人間じゃなかったら、砂漠の砂か、さらさらの塩ってくらいドライな女なんだ。だけど、かわいい彼女にはとっても甘くて弱いんだってさ。唯一の弱点だよ。
で、試練に立ち向かっているぴよりを信じて、ベランダで耐えること小一時間。
「姉上…。終わりました。。」
「はっ、優司、、お、終わったのか。…で?ひよりは無事なのか!?」
「あ、はい。えっと、僕じゃないほうが良い気が…いや、僕の貫禄がないからですが…」
「そうか・・・」
そっか。優司、、お前…なめられたんだね…ひよりに…。そっか、うん。
由奈は肩を落とすと、ゆっくりとひよりのいるリビングに向かう。
「ひよりー?どうだったかな??」
「あっ、由奈さん!お勉強終わったよ♡」
「はかどったかな??」
「うん♡」
あれ??ひよりは満足そうだけど??
不思議な由奈は優司の顔を見るが、優司は浮かない顔をしている。これはこっそり優司に聞くしかなさそうだ。
「ひより。優司を下まで送ってくるから、お風呂の支度だけしてくれる?」
「あいあいさー♡すぐ戻ってきてね?」
「はいよ。優司、行こう。」
「あ、はい。じゃあ、ひよりちゃん。またね。。」
「優司先生、ありがとうございました!」
ビシッと敬礼して、にっこりんちょなぴより。佐々木姉弟は愛想笑いをひよりに向けると、そそくさと玄関を出たのだった。
「おい、どういうことだ?」
「えっと、ひよりちゃんってやる気はあるみたいなんだけど、脱線が凄くって。。姉さんの話になったり、例文に出てこない架空の物語が頭の中ではじけちゃうみたいで。。」
「やっぱりか、、ひよりの創造の世界は宇宙よりも広いんだ、、。」
「正直に言いますが、、知り合いじゃない方が良い気がします。姉さんや俺だと、気を許しすぎちゃうのかも。俺の友達とかに聞いてみましょうか、、」
「いや、、私の知らない奴にひよりを任せるのは私が嫌だ。男でも女でも嫌だ。」
「わぁ、、そっかぁ!」ウフフ・・・
「私がちゃんと話しておく。だから、あと2ヶ月、頼むよ。」
「ね、姉さんが、、俺だけを頼ると言って、、グスッ、、わかりました。やらせてください!」
「いいか、舐められるな。だけどお前、厳しくしすぎな時もあったぞ。ひよりがしょぼんってしてたじゃないか。褒めて伸ばせ!あの子は笑顔が似合うんだ。」
「わぁ、、理不尽・・・いや。はい、善処します。。」
こうして、少しやつれた優司は自分の家に帰っていった。由奈はエレベーターに乗ってひよりの元へと戻る。
ひより、、ひより、、ひよりは純粋無垢。天使なんだ。。私たち大人が、、できるだけ汚さずに、、尚且つこのコンクリートジャングルで生きていく強さも与えてあげないといけない。。
「この任務を与えられた私は、宿命だと思って、やるしかない。。」
由奈が玄関に着くと、ひよりが外に出て待っていた。
「あ、由奈さん来た!お迎えにいこうとしてたよ♡」
ああ、この笑顔。守らなければ。由奈は小麦粉の袋に穴が空いていたみたいに愛しさで溢れた。
「ひより・・・。今日は頑張ったね。かっこよかったよ。」
「へへ。ひよりは頑張るよ!由奈さんが一緒にいてくれる限りね!!」
由奈はひよりの小さな体をギュッと抱きしめて、持ち上げた。ぷらーんと宙に浮いたひよりは、あんよをパタパタと動かして笑っている。
「由奈さん、早くお風呂はーいろ!」
「うん。そうだね。」
今日も全力で冒険したこの子を、綺麗に洗ってあげよう。可愛い天使。可愛いほっぺたさん。ひよこ界のプリンセス。
*この物語は振り切った恋愛中のカップルの視点でお送りしております。
お風呂に入ると、ひよりを抱っこして熱い湯船に浸かる。ひよりは体を由奈にもたれて、安心し切った顔でズンドコ節を歌っている。
(ああ、信頼し切って安心している顔だ。お風呂でひよりを説得するつもりだったけど、、こんな顔を見たらできないよ。今は、、ゆっくり疲れを癒そうね。)
「ひよりはズンドコ節が上手だね。」
「うん!きよしもドリフもいけるよ♡」
「ひよりは子どもの頃から町内会で歌ってたんでしょ?歌手になりたいと思ったことは?」
「うーん、、歌手になりたいと思ったことはないね!だって、ひよりはその頃にはもう歌手だったから!」
「なるほど、、さすがひよりだね。確かに、その頃からもう歌姫だったんだもんね。」
(そうか。やっぱり、この子が話す言葉は真理だ。そう、、私は歌手になるということに思い込みがある。職業として、テレビで歌うみたいな形が固定観念としてあるんだ。だけどこの子は、、この声がある限り、生まれた時から、そして永遠に歌姫なんだね。)
「ひより。ひよりってかっこいい。私、ひよりのこと大好きだな。」
「ひよりも由奈さんがだーすきだよ♡」
由奈は決心した。
大丈夫。なにがあっても、私が稼ぐ。
「ねぇ、由奈さん?ん?由奈さん??あれ?お手々がいやらしいですが、、おつまみになってますがっ!?ひゃぅん♡」
アァァァァァァァ・・・・・・・・・ン♡
続く。
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