第282話 子育て1級だったはずなのに…

「じゃあ、、今日は1時間だけ。がんばろうね、ひよりちゃん。」

「うん、わかった!」ピヨリヤレルヨ!!


 ついに優司による家庭教師が始まった。内心、由奈にとって優司は任せるに適任ではあったが、だとしても自分以外にひよりを任せるのは心配だった。


(優司…ひよりを任せられる器か、今日見極めるからな。)


 …という心の声が顔に出ている由奈を尻目に、ひよりはあくまでも優司より自分のほうが偉いという態度が滲み出ていた。優司は年上だけど義理の弟というスタンスのぴよたん。


「俺…いや、僕が間違えていたよ。えっと、勉強中は馴れ合いにならないように、お互いに敬語で話そう。いえ、話しましょう。ひよりさん。」


「ほい!わかりました!」


「ありがとうございます、。では、、ヒアリングが一番不安だと姉に聞いています。僕が例文を読むので、日本語に訳して下さい。」


「ほい!由奈さん、見てる?♡」*こいつ…


「見てるよー♡」*こいつもか。


「で、では…Your sense of love has been shaken off.」*貴方の恋愛感は振り切っています。


「難しい…貴方のせんす…ブラ?ブラジャーの好み!!」


「では、もう一度。今度はゆっくり行くね…。Your sense of love has been shaken off.」


「優司さんって英語得意なんだね。由奈さんもカラオケで英語の曲歌うよ!めちゃくちゃかっこいーよ♡」


「そ、そう…。今は勉強しましょう。あとで聞かせて下さい。」アト…ケイゴ…


 正直、ひよりは由奈が見ているので、授業参観でママが来て興奮してい小学生のように集中できなかった。


(もしかして…私が居るとこの子は勉強できないのか…?)*正解です。


 由奈は察した。

「優司。私、隣の部屋にいるから宜しく。」


「ああ、わかりました。」

 その方が良いと同じく察した弟。


「ಠ⁠ω⁠ಠえーなんでー。」

 お前のその態度だよ、ぴより。


 そして、由奈は無言で隣の部屋に行くと、ドアに耳をつけて様子を伺った。クール系型なし。。ひよりはしょんぼりしたが、ようやく勉強する気になったようだ。


 ここからは、隠れて聞き耳を立てる過干渉のママ、由奈の心の声をお届けします。ひどい有り様なので誹謗中傷はご容赦願います。


 ああっ、ひより。ようやく勉強する気に…。よかった、、やっぱり私がいると気が散るんだな。好き過ぎるんだな…。へへ。


 それにしても、、綺麗な発音だ、優司。わかりやすい…はず…うん?…なぜその和訳になる?ぴより??


 な、なるほど、、ピースを平和だと思わずに、手のポーズの方だと思ったんだね。うん、うん、ひよりは正解にしてあげたい。でもね?合格できないんだよそれじゃ…。でもそこがひよりのすごいところだよ。物語が浮かんでくるんだね…。例文に出てこないキャラがどんどん増えていく…。誰もディズニーの話はしていなかったのに、ミッキーとミニーが出てきたね♡


 ああっ!てめぇ優司!そんなきつい言い方するな!ぴよりが可哀想じゃないかっ!ああっ、ほら…しょぼんってなっちゃったじゃないかっ!!ひよりっ!ひよりっ!我慢して!泣かないよ!?泣かないんだよ!?


 くっ、、抱きしめに行きたいっ!ひより…。かわいい声で頑張ってるのが聞こえるよ…。ひよりっ!かわいいっ!発音ひどい!たまらないっ!


 た、耐えられない…。一時間も手を出せないなんて、、くそ!でも試験についていけるわけじゃない!ひよりが一人でやれなきゃ意味がないっ!ああっ!!ほぼ正解だった!今の!今のっ!!「惜しい!」じゃねーよ優司っ!ひっぱたくぞ!


 ぐっ、、お腹が痛くなってきた!やっぱり近くで見て…で、でもっ、、今ひよりの顔を見て、うるるんでもしててみろ…、「ぴよちゃん!」と叫んで抱きしめて、勉強は終わり!!と言ってしまいそうだっ!


 もうわかった。。今ココにある問題は…1つしかない。。


「私、ですね。気づきました…。」



 由奈はそっと…ベランダに出て待つことにした…。ピヨチャン…ピヨチャン…


 

 重症…。



 続く。

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