第278話 できたてのわらび餅みたいなほっぺをずっとすりすりしていたいんです。これって恋ですか?

「ああ、まだ胃がもたれてる。。昨日はひよりにつられて、ちょっと食べ過ぎたな…。」


 だって、、うちの子めちゃくちゃかわいいんだもん。*またこれかよ。


 ひよりって、ご飯食べてるときの笑顔がたまらなくかわいいんだよね。なんであんなに食い意地が張ってるんだろう??華恋さんとは取り合いにならなかったろうに。ガツガツと口の中にいっぱい入れて、ほっぺが膨らんでるのもかわいいんだよね。ふぐのマネ!ってごまかすのも好き…。


「ああ、ひより、、私の赤ちゃん。。」*ついに産んでしまったようだ。


 付き合っているのに日増しに恋煩いが重症化していく由奈とひより。ひよりはともかく、理性的な由奈という印象が崩れだしていた。もう誰も彼女をドライな女だとは思っていまい。

 仕事帰りの由奈は、駅直結のデパートにいた。約束通り、ひよりに新しいマフラーを買って帰るつもりだ。


「このデパートって、あまり来たことなかったな。市場調査もかねて、軽く回ろう。」


 今、由奈がいるこのデパートには、由奈の会社が運営しているショップがない。仕事熱心な由奈は、用事のないショップも見て回った。


(あ、このはんぺんのぬいぐるみ。ひよりが喜びそう。こっちは豆腐のぬいぐるみ?え、違いがわからない…。両方あげたら、ひよりが爆笑するなこれ。でもな、家にぬいぐるみは沢山あるし、これ以上子ども扱いするのも、、)


 気がつくと、ぬいぐるみが沢山あるファンシーショップや、ついにはおもちゃ売り場にばかり目が行く由奈。


(綿あめ製造機…。これをクリスマスにプレゼントしたら、、ひよりは確実に喜ぶだろう、、よもや、自分の体に綿あめを巻き付けて…「食べて♡」なんて言い出すかも。いやしかし、クリスマスだろ、、恋人達の最重要イベントだ。やっぱりアクセサリーだろ。やむを得ない、これは今買うべきか…。だって食べたい。)ピヨリマキヲ…


 全然仕事の市場調査になっていなかった。だって、ぴよりのかわいいが見たいんだもん。仕方なくない??


「ダメダメ。もうすぐ大学生なんだから。さ、ちょっと大人っぽいマフラーを買おう。寒いから早く買っておかないと。…モコモコしたやつ買おっかな、、かっわいいだろうなー♡」*決意ぐらぐらである。


 しばらく歩いていると、冬物の特設会場が目に入った。マフラーや手袋がたくさん陳列してある。由奈は早く帰ってひよりにご飯を作ってあげたいから、ここでさっさと決めようと会場に入った。


「うーん、そうだなぁ、、制服に似合うのも良いけど、年が明けたら制服はほとんど着ないだろうし・・・。どんな服にも合うとしたら、、グレーか、、紺、白、、」


 由奈が本気で悩んでいると、安定にラブコメらしく、若くてかわいい店員さんが由奈をチラチラと気にかけていた。しかし、今までもどんな女性がチャレンジしようと、頭の中がひよりでいっぱいな由奈を口説けた者はいない。さぁ、チャレンジするならどうぞ!無駄だけどなっ!


「お客様、宜しければご案内いたします、が・・・ぁぁぁぁっ!?か、かっきょよ!!(かっこよっ!!え、好きっ!!♡)」


「え、?ああ、ありがとうございます。ダークグレーが良いと思うんですけど、他にもありますか?」


「ダ、ダークグレー、鬼合うです!ち、ちが、お似合いですっ!!」


「ありがとう、、えっと、私じゃなくてプレゼントなんだけど、」


「あ、そうですかっ!じょ、女性用で宜しいですか!?私なら何をもらっても泣いて喜びま、いや、、いくつかご案内します!!」


「すみません、時間がないので助かります。女の子なんですけど、背がちっちゃいお姫様みたいなんです。なのであまり長くなくて幅もそんなに広くないほうが、、いや、グルグル巻きになってるのもかわいいのかも。。」


「(お姫様…?妹さんかしら、、)そうですか、、えーと、こちらの短いタイプは人気ですよ。持ち運びやすいのでこの時期にぴったりです。」


「なるほど。暑くなったらカバンに入れたいですもんね、、そっか。なるほど、、」


「寒い時期でしたらこちらのカシミアを、、肌触りが良くて暖かいです。」


「どれどれ、、ああ、すべすべだ。あの子のわらび餅みたいなほっぺたにきっと似合う!」


「わらび餅??やわらかすぎませんそれ!?きなこですか抹茶ですか!?」


「強いて言うならきなこですね。そうなんです、、信じられないくらい柔らかいんです。生まれたての赤ちゃんみたいに。私にとっては、、いつまでも子どもなんです。でも、そろそろ一人の女性として扱わないとと思い、、ちょっとダークな色にしてみようかと。」


「(え、お子さんってこと??既婚者??この人何歳なの!?なんてミステリアスっ!)そ、そうですか。」


「そろそろお腹を空かせて待ってるだろうから早く帰らないと…。一人で寂しがってる。ああ、そうだった。お揃いがいいって言われてたんだった!危なかった、忘れるところだった。」


 ここで、店員は由奈のことをシングルマザーだと確信した。子どもはおそらく小学校の高学年。


「では、試着してみてください。私が巻いても宜しいですか?巻きますね?巻きます!(親子でお揃いなのね?仲がいいわね。あ、やべ。すげーいい匂いする♡)」


「え、普通に巻いてくださいね??!」


「お似合いですっ!私ならいつまでも見ていられます、最高です!あと私、子どもに懐かれるタイプです!!」


「は?え?…うーん、そうだなぁ、、あ。わかった。どっちも買って行こう。2人で交互につけたら良いんだ。色はお揃いだし。うん、決めました。この2つを買います。」


「かしこまりました、お嬢さん、気に入ると良いですね!あと私、料理も得意です!」


「はい。え、?えっと、プレゼント用に包んでください。」


「はい♡あの、私は子連れでデートでも…構いません!」


「そ、そうなんですか、え?あの、早くお会計を………」


 と、こうして・・・無事に?マフラーを購入できた。マフラーと一緒にメモ用紙に連絡先を書いたものを渡されたので、ようやく口説かれていたのだと気づいた。そして逃げた。


 あーびっくりした。変な店員さんだったな。それよりも、、いろんなぴよりが見たいから、同じ色だけど違うマフラーを2つ買ったよ。交換こしながらつけようね。ああ、「わぁ!」って顔をしたぴよりが目に浮かぶよ。もしかして、寝るときもつけるって言い出しかねないな。まったく、困ったちゃんだ。


「そうだ、、ニット帽も今度買おう。ボンボンがついてるやつが良い。」*ひよりを大人にする計画が進まない女。


 早く家に帰らなければ。お腹を空かせて待っているに違いない。だけど、今日はカロリー控えめにしてあげる約束だ。野菜入りの湯豆腐だけにしよう。きっとしょんぼりするはずだ。それがまたかわいい。


 デパートから駅に向かい、電車に乗る。もうすぐ帰るよとひよりにメッセージを送る。ひよりが待っている。このプレゼントを渡したら、ニッコリ微笑むひよりが見られる。それだけで、由奈の仕事の疲れは吹っ飛ぶのだ。


 最寄りの駅に着くと、改札を抜ける。ひより、ひより、早く会いたいよ、ぴより。


「ん、呼んだ??」

「え?」


 外へ出た瞬間、聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはいるはずのないひよりがっ!


「ひよりっ!?な、なんでいるの?夜は出て歩いたらダメって言ったでしょ?」

「ジョギングがてらお迎えだよ。ほら、ひよりって今、学校で一番ホットな女子だからさ。美貌を保つためだよ。」

「もう、、すぐ約束破るんだから。。」

「だってさ?どうせ走るんだからお迎え来た方が効率的だかんね!」

「まったく。。」

「それ、紙袋・・・ひよりの??」

「ああ、うん。待ちきれなかったの?」

「うん!マフラー!ひよりが持つ♡」

「持つだけ?開けてみなくていいの?」

「うん!お家帰ってから見るよ♡」

「じゃあ、別に迎えに来なくてよかったじゃない。」

「だって、ひよりが持って帰りたかったの♡あと早く由奈さんに会いたかったのよ♡」

「そっか。じゃあ、帰ろう。お手々つなぐ?」

「繋ぐ♡片手にマフラー、片手に由奈さん!ひよりって愛されてるー♡」


 ど、どうですか、、このかわいいの塊はっ!うちの子、、世界一かわいいっ!


 オナカモペコペコヨ!!

 ソッカァ♡


 知ってるよ、ひより。食いしん坊のくせに、晩ごはんを先に食べたことがないんだ。必ず待っててくれる。


「ひより、お腹空いててもご飯食べないで待っててくれるね。食いしん坊なのに。」


「うん、だって2人で食べるに決まってるでしょ?それが1日で1番の楽しみよ♡」


「そうだね。2人で食べないとね♡」


「あ、デレデレの顔ね♡」


「好きだからね♡」


 今日はエッチに持ち込めそうなぴよりであった。グフフ♡


 続く

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