第163話 離れていてもあなたのことしか…節

 新学期。校門で会えた戸田っちと教室まで歩くひより。*小山のことはもう忘れている。


「二学期かぁ。いよいよ本気で勉強しなくちゃね。また図書室で一緒にやろうね?」

「うん!もちろーん!誰かんちでやるとすぐ雑談になるもんねー!」ピヨリコマルー!


「なによ?随分と機嫌がいーのね?まぁ、どうせ由奈さんのことだろうけど。」

「うふーっ!だって、幸せなんだもんっ!見て?肌が幼稚園のときみたいにスベスベなの♡」


「そんな効果があるとは…。まぁ、わかるわ。由奈さんって、なんていうか…夢中にさせる魅力あるよね。。大人っぽくて静かで。セクシーだし。」


 ああ、戸田さん。貴方にもわかってしまうのね…。ひより、いきます。


 ほんと、何なのかしら。。あの天から舞い降りし塩の塊…。あの目に見つめられたら一瞬で顔が火照るし、あの声で囁かれたら全身の力が抜けてしまう…。あの手に触れられたらそこから溶けてしまいそうに、、そして、侵入されれば宇宙に飛ばされ・・・。あん、、♡


 そして、大人なの。理知的で、先のことを見通す力があるわ。頭が良くて、優しくて、でも寝起きはとってもかわいいの。すんごいダルそう(笑)そしてエッチのときは夢中でひよりの…


「ねぇ、戸田っち。うちの彼女、完璧なんですけど!!!???」

「え、今さら?」

「なんでひより、付き合えたんだ!!??」ピヨー⁉?

「運とか、、タイミングじゃない?」*失礼。


「っていうか、教室ついた。・・・ん?何やら騒がしい、、」


 ひよりが教室に着くと、後ろの方で人だかりができていた。そこには最強トリオもいるようだ。そして聞こえる声は、、


「えーー!赤羽っち、彼氏出来たんだぁ!!」

「ふふふ。し・か・も!大学生~♡イケメーン!薄塩クール系~♡細マッチョで背ぇたかさーん!!」

「すっご。よっぽどかっこいいんだ!?」

「うん!そしてなんとぉ!ぴよりっちの恋人の弟さんなのだー!!」

「うぇぇぇぇ!!!??まじーーー!?」

「あ!噂をすれば、ぴよりっちも来たよ~!」


 ひよりは後ずさった。

「う、うわ。。陽キャの群れがこっちを見てりゅ。。こ、こわい。。」

「ひより、呼ばれてるよ・・・行きなよ。。私は無理。。」

「え、戸田っちも来てよ!!」

「嫌だ、あんなにいるのはこわい!!」


 元々は地味で大人しく学校生活を送っていたひよりと戸田っち。最強トリオとは仲良くなれたが、陽キャ集団に入って話をするのはハードルがまだ高かった。


赤羽「おーい、ぴよりっち~!お姉様!なんちゃってーー!♡」

渋谷「ぴよりっちね、休み中に指輪もらったんだってーーー!!」

大宮「花火を見ながら、ロマンティックに指輪を渡され…見つめ合った二人は〜!きゃー!」


 最強トリオの声は、高々と教室に、そして廊下にまで響いた。


 ひよりの後ろから廊下まで来ていた小山は、そのまま教室を通り過ぎた…。そしてトイレで少し泣いた。


 ひよりは、、ひよりは、、


 めちゃくちゃ気分が良くなっていた。イクゾォ!


「ひゃだぁーー!!みんなっ、それは言わないでって言ったじゃなーい♡えーもうー困っちゃったなぁ!!なんのことかしらーー?」


「ごめんごめん、つい。でも皆に幸せのおすそ分けしてくれたっていーじゃーん!」


「そ、そうね?皆がそれでハッピーになれるなら?話さなくも?ないけど??」


 戸田っちは静かに自分の席についた。

(始まったよ。。ひよりは褒められるとしつこくてくどくて面倒くさいんだよね…)


 親友に見放されたひよりは、どこまでも調子に乗った。


「でもね、学校には指輪をしてこないことにしたの。もしもなくしたら困るから…。世界で1番大切なものだから…。あ、でも写真ならあります。どうしてもと言うなら…」


「そこまで言うなら見せてよ(笑)」


「わかりました…。フォルダ指輪を展開します…。ぽちっとな!」


 フォルダ指輪とは、様々なアングルから指輪だけを撮った写真と、ひよりの薬指にはめられたバージョンの写真の保存場所である。


「うわぁー、同じような写真がこんなに…(笑)」

「愛が重い(笑)」

「よっぽど嬉しかったんだね(笑)」

「ひゃだー!恥ずかしい~♡」モットイッテ‼


 と、ここで。良いところに気づくモブはいるものである。


「これ、ペアリングだよね?」


「え…?」フリーズぴより


「オソロイでしてるんでしょ?」


「え、あ、うん。そ、そう。」


 ひよりは咄嗟にペアリングだと言ってしまったが、、今始めて気づいたのだった。


(由奈さんの分、ない。ひよりがあげてないから…。お揃い、、お揃いがいいのに、、そういえばひよりしかしてない。。)


 ひよりがNumbersの世界へ飛び立つと、担任の先生が教室に入ってきた。それぞれの席に散るクラスメイト。


 ひよりは、よちよちと自分の席に座った。そして、朝のホームルームの記憶がないほど、由奈の指輪について考えるのだった。


「つ、作る・・・?」


 続く。 

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