第158話 六浦姉妹。突します。

「じゃあ、明日も勉強会に参加する人は、渋谷っちの家に集合ね!」

「わかったー!ばいばーい!」

「ほいほーい!」


 午前中からの勉強会を終えた5人は駅前でご飯を食べて解散した。


「ひよりは家に帰るんでしょ?一緒に帰ろう。」

「あ、戸田っち、先に帰ってて?ひよりはこれから冒険があるから!」

「そうなんだ、、じゃあ、またね!」


「・・・。行ったな。」


 戸田っちを見送ると、ひよりはスマホを見た。ひよりは企んでいたんだ、、。


「よし、行くぞ。。」


 ひよりが向かった先は、、由奈が通っていたクリニック。そう、戸田っちのお姉さんが勤める内科クリニックだった。

 ひよりは頭では理解していた。由奈は自分だけを好きだと。しかし、乙女の心は複雑なのだ。。由奈が片思いをしていたかもしれないみちるという看護師を一目見てみたかった。真似が出来るならしようと思ったからだ。健気なひより。かわいいの塊。。


 でも1つ問題があった。それはひよりがめちゃくちゃ健康なことだ。風邪も引いていないのにクリニックには入れない。しかし、ひよりにはある秘策があった。


「15時までに着かなくては。。約束に遅れたら恐い。。」


 ひよりは慌ててクリニックへと向かうのだった。ちょうど風邪を引いていると情報を掴んだ、姉・華恋との待ち合わせのために。。 


-----------ひよりが15時ギリギリでクリニックの前に着くと、すでに華恋がひよりを待っていた。


「あ、お姉ちゃん!お待たせ!風邪、大丈夫??」

「・・・なんで嬉しそうに言うのよ、、全然大丈夫じゃないわ。。あんた、覚えてなさいよ。。」

「あーん、怒らないで?かわいい妹のお願い、たまには聞いてくれても良いでしょ?」

「ごほっ、、と、とりあえず、、立ってたくないから行くわよ、、。」


 姉の華恋は愛する恋人との時間を邪魔されたくないので、恋人の愛加といる時はどんなに頼んでも一緒に来てくれはしなかったろう。しかし、風邪でいつもより弱っていた華恋。妹の「風邪を引いてるなら連れて行きたいクリニックがある!」という訳のわからないお願いをうっかり聞いてしまったのだ。仕事を早退して・・・。


「うう、、最近ずっと冷房つけて裸で寝てたから、、つ、つらい・・・。」

「ひよりもそうだけど、、朝起きたらタオルケットにくるまれてたりするから風邪引かないよ!ミイラみたいだよ!」

「由奈さんが管理してくれているのね、、良い彼女じゃない、、ゴホゴホっ」


 夜は裸で寝落ち姉妹。由奈と愛加はとても似た苦労をしているのだった。さて、2人がクリニックに入ると、受付には戸田っちの姉、あかりがいた。


「こんにちは、、あれ?ひよりちゃんじゃん?」

「あかりさん、こんにちは。お姉ちゃんが風邪で大変なんです。助けてください♪」

「え、なんで笑顔で、、じゃあ、問診票書いてお待ちください。」


「さぁ。お姉ちゃん。座って問診票書いて。」

「ったく、、私、会社の近くにいつも行く病院あるのに、、」

「まぁまぁ。ひよりのためだと思って。」

「うう、、ぐらぐらする・・・。」

「ひよりが書いてあげるよ。身長はひよりと一緒で149だよね。」


 この時、戸田あかりは気づいた。ははーん、さてはひよりちゃん、みちるさんを見に来たな?と。にやっと不適な笑みを浮かべると、ひよりのサポートをしようと思いついた。これは今晩の良い酒のつまみになる、と。


「みちるさーん、新患入りましたー!」


 わざと大きな声でみちるを呼ぶあかり。


「はーい、え、なに?新患って普段言わないじゃん、、戸田ちゃん。。」


 あかりが呼ぶ声、そしてそれに応える声を聞いて、ひよりは問診票を華恋に突っ返してガタッと立ち上がった。


 あの人が、、由奈さんが片思いしていた(かもしれない)女・・・みちるっ!


 由奈はそれはないと断固として言ったはずだけど、ひよりは結局気になっているうちに思い込んだ。そして、ついにみちるを見たんだ。。


(あ、あ、圧倒的美人・・・。そして、おっぱいがある。。)


 ま、まけた。。これは負けた・・・。どう考えても女の魅力の塊だ、、。惨敗である。。見てはいけないものを見てしまった・・・。とひよりは固まった。そしてタイミング良く、みちるがひよりのそばに近づいてきた。


「風邪ですか?辛そうですね?先に見てもらいましょうね。」


 さすが看護師であった。ひよりではなく華恋を一目見て、すぐに治療が必要だと気づいた出来る女、みちる。


(で、出来る!!全てにおいて負けなのかっ!!や、優しいっ!!!)


 もう、ひよりは勝とうとは思わなかった。こいつは出来る。勝てやしないと。。こうなれば、学ぶしかない。このみちるの魅力を全て今、ここで暴いてみせる!!


「看護師さん。姉が辛そうなので連れてきました。一緒に付き添って良いですか?」

「あら。そうだったんですね。優しい妹さんですね。すぐに呼びますからあともう少しだけお待ちくださいね?」

「はい!待ちます!」


 ひよりは華恋を連れて、診察室に通された。一部始終をガン見して、みちるを観察した。


(な、なんてことだ。。清らかで天使のような微笑み、そして佇まい・・・。優しく紡ぐ声に、、圧倒的ボディシルエット・・・。お、推せるっ!)


「じゃあ、おくすり出しますから、お大事にして下さいね。」

「もう終わりですかっ!!点滴とか打てるなら何でも打って下さい!!」*もっとみちるを見ていたいぴより。

「ちょっとあんた、、なに言ってるの?帰るわよ・・・。ごほっ!」


 こうして、ひよりはただのみちるファンになり、奇しくも彼女と同じ人に若干恋心を抱いてしまったのだった。。


 受付に戻り、ひよりはお会計をする。


「あかりさん、お願いします。」


 ちゃっかりしているひよりは、華恋の財布を持って会計した。そんなひよりに、あかりはぶっこんだ。


「綺麗だったでしょ、みちるさん。どうだった?」


 みちるを見に来たのがバレていたひより。


「えっ!!な、なんのことかしらー!?」

「あはは。みちるさん見に来たんじゃないの?ひよりちゃんも恋する乙女だね!」

「くっ、、バレてしまったなら仕方ない。。ひよりは女の修行が足りませんでした。。負けを認めて出直してきます。。」

「ひよりちゃんはかわいいから大丈夫だよ。前よりかわいくなったね!佐々木さんがひよりちゃんをかわいくしたんでしょ?」



「いえ。上には上がいることを今日知りました。ひよりは、、ひよりは、、もっと女を磨いて、、綺麗になって見せます!!!」


 その時だった。


「お願い、、ひより。。そろそろ帰らせて。。あ、あんた、私を家まで送りなさいよ?もう倒れる寸前よ・・・。」


「あ・・・。ごめん。わかった!」


 そうして、ひよりは華恋を家まで送り届けるのだった。


 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る