第6話 六浦家の宿命、全力失踪。あ、疾走。

 六浦ひより。高校3年生の18歳である。

 両親と、少し歳の離れた姉がいる。


 姉妹は似て非なりだが、共通点といえば、平均より低い身長と華奢なところ。小動物のように愛らしい。そして情熱を宿したくりっと大きな目。


 それ以外はあまり似ていない。

 姉は勉強よりも、恋に夢中になるタイプだった。ひよりが小学生になった頃にはすでに、片思いの相手を追いかけ回し、好きなアイドルグループに夢中だった。


 親が何を言っても聞かない奔放な姉を反面教師にして、ひよりは真面目で現実的に育った。

 ガリガリ勉勉といった感じで、成績表を見るのがなにより楽しみな子。


 恋に浮かれてエラーを起こす他の女の子達を見て、冷ややかな念を抱いていた。


「ふん、バッカみたい。勉強しないで浮ついたことばっかり。お姉ちゃんも友達も、なにがそんなに楽しいんだろ?」


 そんなある日、姉が失踪した。正しくは、恋人の家に入り浸りになった。姉はすでに成人しているし、母親は半ば諦めて放任している。無我夢中に恋人ですら追いかけ回す姉。冷笑ものだと思っていた。がしかし、


「あ、ぴより久しぶり。」

「え、お姉ちゃんじゃん、行方不明かと思ってた。」

「そんなわけないでしょ。私はいつだって、あの人の腕の中にいるわ。」

「なんか、今回の恋人はすごいご執心だね?そんなにかっこいいの?」


 あ、しまったと思った。ひよりは知っていた。姉が女性だけに恋をすることを。綺麗なの?かわいいの?と表現するべきだった。しかし、


「すごく…かっこいい。。綺麗で、美しくて、可愛くって、、運命に出会ったの。」


「へ、へぇ?まぁいいけど。写真とかないの?」

「あるよ?フォルダの中はあの人で埋め尽くされているもの。」

「見せてよ。気になる。」

「見せてもいいけど、、好きにならないでね?いえ、好きにならない人などいないか。」


 なんだその人は、、どんだけだよ?芸能人かなんか??

 ひよりはこの時に人生の大転換が訪れてしまったんだ。


「はい、私の愛しい人よ。愛加っていうの。」

「どれ、。。。。。。え?わ。。。。。」

「素敵でしょう?素敵大権現でしょう?」

「え、まぁ、うん。そうね、綺麗な人だと思う。」


 そうして、姉は恋人の元へ転がり込んでいった。同棲ね。


 その日の夜、ひよりは眠れなかった。


 ひより、イキます。


 あんな人、、あんな人とお姉ちゃんは、、付き合ってるんだ。恋人、、、お姉ちゃんとあの人。すごい、、なんだろう、この胸の痛み。素敵。私もあんな人と、、恋か。恋、、したくなかったんじゃないんだ。あんな人ならきっと、私はお姉ちゃんの気持ちがわかると思う。


 夢中になって、恋人から離れていられないお姉ちゃん。でもわかるな、、だってきっと、ずっと見ていたんだ。。綺麗で、可愛くて、、それで、


 私、、あんな人と恋がしたい。お姉ちゃんみたいに。

 だって、あんな素敵な人を見つけただけでお姉ちゃんは幸運だ。そりゃ運命だって言うよ。それで、あの人からも、愛を受け取るのでしょう?それが毎日??


 あ、どうしよう、私きっと、勉強に手がつかななると思う。ずっと、運命の人を見つめていたいと思うんだと、、思う。。。



 って、考えてたら、朝になっちゃった。。学校行かないと。

 さて、着替えて、、朝ごはん食べてっと。髪の毛、、、ちょっと染めたりしてみようかな。今のままじゃ、素敵な恋人のそばにとてもいられない。


 そうね、今日は友達にメイクの仕方を教わって、、それから美容院に予約して、、か、かか可愛い下着も?や、まだそこまで、でもううん。用意はしておかないと、いざという時に、、。



 ああ、恋の神様はこの情熱的な少女の願いを、ここまで秒速で叶えるものなのか。


 玄関を開け、エレベーターに乗り、マンションのエントランスに着く。


 学校に行く。ただのいつものルーティンだった。


 はずなのに。


 時が止まってしまったんだ。



 エントランスで見かけた、一人の女性に目を奪われて。



 かっこいい・・・。

 そして、綺麗。か、かわいい。



 出会っちゃった。。運命の人に。




 六浦家の宿命は、命懸けの恋をすることだった。



 キラキラしてる・・・。ちゅき。。あ、腰が抜け、



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