第15話 太陽のペンダント
気づけばこんな夜更けだというのに私は、目を覚ましていた。
気分は最悪。忌々しく蘇ってきた過去に、私の額は汗でびっしょりだ。小さい頃の記憶は薄れつつあるのに、どうしてあの時のことは鮮明に記憶しているのか。
その答えはいたってシンプル。過去の全てが私のトラウマなのだ。父と母がこのペンダントと共に私を置いていったあの頃が。
「また会えるって言ってたの…お母様の嘘つき。」
その名を呼んだところで無駄だというのに。私は未だ両親を追い続ける。
母と父を探し続けてもう、三年になるのかな。思えば、これっぽっちも収穫がない。そもそもこの広い世界で二人を探しだそうとすること自体が馬鹿げてる事なのかもしれない。
私は肌身離さず持つ母のペンダントを取り出し、殺風景な天井に向けると、日をモチーフにした赤の宝石細工が施されたペンダントが虚しく揺らいだ。
これを形見とでも言うのだろうか。当時、母がとても大事にしていたことだけ覚えている。
このペンダントを私に託し、二人は遠くに行ってしまった。置いていったことに恨みや憎悪だなんて思ったことはない。何か必ず意味があるはずだと、そう信じて私はこれまでの道を歩んできたのだから。
ただ会って話しをしたい。考え出すとそんな気持ちだけが積もっていく。
「託すか。お母様どうしてこのペンダントを…。」
ふと思い返したのは、アゼルの言葉。
そういえば、アゼルもあの月形のペンダントを託されたって言っていた気がする。
どこか同じ境遇にあるのかもしれないな。
あの時、アゼルの悲しい顔を見て私は、何一つ言葉をかけてあげられなかった。
託すというのは、実は悲しいことなのかもしれないな。
「……あれ?」
呆然と考え込んでいた私は、ぶら下がるペンダントを意味もなく見つめる。
しかしあまりにも精巧な作りであったため、自然とそういう仕様なのかと思っていたが。
私はある点とこの窪みが結びつくのを感じた。
「あ、」
そうだ、アゼルのペンダントだ。どうしてあの時頭をよぎらなかったのだろう。確証はないけど、これはペアネックレスなのかもしれない。
月と太陽のペア。番が欠けたもので…って、私なに一人で盛り上がってるんだろう。それがなんだって話よ。何かわかるわけでもあるまいし。
「はぁ~。夜くらい気持ちよく寝させてよ。」
まだ夜は深いようだ。月明りを嫌うように、私はブランケットを被る。
次はどうか良い夢を見れますようにと。
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