第11話 お、お高いですね、愛剣さん!
「えっ!? そんなに高いんですか!」
「すまねぇな。素材だけで見積もってこんくらいはする。そこからうちへの依頼料を含めると…とんでもない額になっちまう。それに鍛えれる保証はねぇ。」
安くて120万アースだなんて…。一瞬立ちくらみそうになる。
でも上級冒険者に依頼するとなるとそれぐらいのお金は飛ぶのかもしれない。貯金も110万500アースってところか…。
素材だけで全財産を上回るだけじゃなくて、入手できる保証もない。
今の私じゃ到底手がつかない代物だ。
「てかリズよぉ~。ホタル鉱石だなんて知る人ぞ知るってやつだぞ。お前からその名が出たときは驚いたが、俺も研いでる分じゃまったく気づきもしなかった。ほんと不甲斐ねぇ。」
「このアホンダラが。昔教えたろうが! 鍛冶師が見抜けねぇだどうすんだ。」
「痛って~な、親父! 仕方ねえだろ。実物は初めてなんだから!」
大親父さんの拳骨がコテツさんに落ちる。大親父ことドワーフのオオテツさんは息子さんには手厳しいようだ。
「嬢ちゃん。さっきも言った通りそいつの元はホタル鉱石っつー…そうだな50年ぐらい前に出回ってた希少鉱石だ。」
50年前って…私の愛剣はどれだけ年期ものなんだ。さっきから驚かされるばかりだ。
「今じゃその錬鉄法も鍛え方も廃れちまってるわけよ。わしじゃ打てるかどうかも分からん。」
「オオテツさんでも無理なんでしょうか?」
オオテツさんが目をつむって俯くなんて…本当にどうしようもないらしい。しかし、私は諦めきれずにいた。
「申し訳ないが新しい武器の購入を勧める。修理費、材料費だけで中位冒険者レベルの得物なら釣りは十分出る。」
「そんな…でも、」
「らしくねえな。お前ならさっさと切り替えちまうと思ってたよ。」
当然、そうすることも考えた。でもこの剣は12の頃からずっと一緒に戦ってきた相棒だ。ここでお別れだなんて絶対に嫌だ。どうにか突破口を見つけたい。
「はいわかりましたとはやっぱりいかねぇもんだよな。まあこれは助言だがよ。嬢ちゃんが言ってた自称鍛冶師とやらの元に行ってみたらどうだい?」
「やっぱりそれしかないですかね…。」
あいつは…。アゼルは鞘に収まった状態の剣を見て、その素材や状態の変化に気づいた。なぜ気づけたかなんてわからない。でも少なくともホタル鉱石については知識のあるようだった。なら彼に頼むのが得策なのかもしれない。
「これは鍛冶師の感だがよ。そいつは腕の立つ鍛冶師だとおもうぜ。そいつ何て名前だっけか?」
「名前はアゼルよ。南通りの七番町で店を開く予定だって。」
「アゼルか。聞かない名……いやどっかで聞いたことがあるような……。とりあえずその兄ちゃんの所に行ってみろ。何か策があるかもしれねぇ。」
そうして、結局私は彼のもとに行くことになったのです。
あ、ちょっと待って。お店にお金返すの忘れてた…。急がなきゃ!!
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