第2話花を摘みに行ってる場合じゃない

思ってるより転生した人生はシビアだ。

忙しい飲食店で働いていた頃より、もしかしたらブラックかもしれない。労基ないの?

思ったことをいえないどころか表情も変わらない。インプットされた言動をしているようだった。

ゲームのキャラってこういう気分なのかな。ありがたいのは、痛覚があまりないことだ。

ただたまに頭痛があって寝込んでいるけれど、どこか痛みは遠くて、昼間から寝ていられる優雅な生活は、非常に心地いい。

Wi-Fiがないことを除けば。この状態をSNSにあげたらバズるかな。いや、信じるわけないか。

なんだっけ、ホラー映画にもなった、不思議な駅に迷い込んだ人の実況。笑う人もいたけど、けっきょく話題になって映画にもなった。

もしかしたら印税で暮らせるかもしれないのに。まったく、こういう時にまさかの圏外。

はじめて見たよ、圏外。

「お嬢様」

あ、あの子だ。

何を言われるか分からない気難しいお嬢様…つまり私(ほんっとごめん)に声かけて世話しなきゃいけない。こんなんいやに決まってるよね。

ほんとにごめんね。

「なに」

口をついてでるのはこんな言葉ばかり。

鬱になりそう。

「お食事をご用意致しました」

ありがとう。

って!言えよこの口!

「遅いわ。もう出てって。目障りよ」

はあー!?

「申し訳ございません」

頭を下げた侍女に向かってお茶を投げつけた。熱いお茶を。

ちょっと待って待って…しんどい…。

「聞こえなかった?」

「申し訳ございません」

逃げるように去っていく姿に涙が出そう。なに?どうしたらそんなことができるの?

「なんであんな猿に身の回りのことをされなければならないの…お父様は私を愛してないんだわ…」

涙がぽろぽろこぼれた。

いやいやいや、なに言ってんの?

もうやだ…飲食店で働いてる方がまし。誰かもとに戻して…。

ん?手真っ白。白人さんか。ってことは…あ、さっきの侍女ちゃん、黄色人種だったから。たとえ転生したとしても…こんなのみたくなかったわ…こんな転生ある?

誰か…元に戻して…。

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悪役令嬢に転生したら人格破綻した私 @akera3

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