第23話 洪水と龍笛の音色
『その鈴を振るな。頭が痛い。やめろぉおおおお。ジィィ―――ッ』
「やめろと言われてやめるバカはいないのよ。真奈美さんから出てお
澪は
「お兄ちゃん、
「あーこれ、
「動画で⁉」
化蛇の本体が真奈美の身体からすり抜け、真奈美はふらついて
「ううん……。頭が痛い……」
真奈美は顔色も身体もすっかり元に戻った。
「大丈夫? 真奈美さん」
「うん……少し横になれば大丈夫」
「やった! 化蛇と切り離し
「わかった。真奈美さん、ここにすわって」
真奈美を移動させて、木の下に座らせた。凪咲は空を見上げると、黒い雲がせまっていた。
「ミオミオ、雨が降るみたいよ」
「まさか……。化蛇が呼んだ⁉
化蛇が用水路に逃げるので、澪と快斗は化蛇を追いかけた。
「逃げた方向は、大山川家の
化蛇は霊力で大きな池の水を
「化蛇が溜め池にいるぞ。なんだ⁉ 池の水を全部
快斗は走り出した。
***
化蛇が吸い上げた水は黒い雲となって、バケツをひっくり返したような雨を降らせた。
――その昔、この地域では川がよく
「もしも
木の下で
「そんなことない。弱い心は誰にだってある。化蛇と決着つけたら、お母さんに悩みを言ったらいいよ」
「……何でわかるの?」
「真奈美さんは成績優秀。立派な家柄で、恵まれた環境。だけどわたしには分からない大きいプレッシャーがあるのでしょう」
「うん、そう。母の期待に応えようとがんばって、いつの間にか笑えなくなってた……。テストで満点とってもそれ以上を求めてくるの。終わりがなくて、すごくつらかった。友達も本当にわたしが好きでそばにいるのかわからない……ママ友のつながりだけなのかも」
「化蛇は人の心の隙間に入り込むのが上手な妖怪なの……。あのこれ、ミオミオの受け売りなんだ」
凪咲はペロッと舌を出してほほえむ。
『お前はきてもらおう……。甘い
「!!!」
見上げると化蛇が凪咲たちの頭上にいた。
「これが化蛇の顔なの……」
水の
「きゃああああ」
「凪咲さん」
凪咲を捕まえた水の縄は解かれ、化蛇の背中に乗せる。そして空に飛び立とうとしていた。
『ついでに、川の水をこの村にあふれさせてやろう』
化蛇は川の水を村に流そうと再び水を吸い上げた。
「化蛇! もうやめて! 村の人を困らせないで!」
凪咲は泣いてうったえる。
『くくく……。楽しいのにやめられないよ。それより自分の心配でもしたらどうなんだ。お前はワシの嫁になるんだぞ』
「えええ! 河童も蛇も、全妖怪お断りです!!」
『じゃあ、断ったらこの村をあふれさせちゃうぞ。いいか、これを止めるには
「そんな……ひきょうだわ!」
「おお。すげぇ。『AYA🐾NEKO』アプリに
「快斗さん!」
「ほんじゃー俺も水を
歩きながら快斗はポケットに入れていた笛を取り出して吹く。
……それは深く
心にしみるような、
『ひゃーおっかない』
たちまち悪霊が散って逃げていった。
「お兄ちゃん、前より上手じゃん」
澪は照れくさそうに褒めた。凪咲もお礼を言う。
「快斗さん。ありがとうございます」
「当り前だろー。凪咲さんには言ってなかったね。俺の部活は
『ちっ……』
化蛇はまだ
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