第11話 学校七不思議

 オカルト研究部の活動初日、凪咲なぎさと人型に変化へんげしたノアムは赤坂澪あかさかみおの家に集まった。澪は小学校の七不思議ななふしぎをまとめたノートを凪咲に読んでもらうことにした。


「この学校の七不思議の調査報告ノートです。あたし学校で浮いているのに、こういうたぐいの話の時だけ情報を教えてくる子達がいてさ……。といっても、七つ以上にエピソードあるから、疑問や分からないことがあったら聞いてね」

 澪は研究の成果を発表できて満足気だ。


 エピソード① Lvレベル.200( 除霊:可)

 だれもいない音楽室にピアノの音がする……。


 調査結果:いつの時代の話か不明。ピアノが大好きだったが、病気で亡くなった女の子の霊。


 エピソード② Lv.350(除霊:可)

 だれもいない体育館にボールがねる音がする。


 調査結果:二十年前、学校帰りに児童が交通事故で亡くなった、バスケ好きの男の子の霊。


 エピソード③ Lv.400(除霊:可)

 誰もいない花壇の花が手入れされている。


 調査結果:三十年前、学校で用務員が熱中症になり、校庭で倒れ亡くなった。花が好きだったので、児童が花の水やりをサボると怒って花壇近くに出る。


 エピソード④ 未確認のため未測定(除霊:不明)

 三階の女子トイレにドアをノックする「花子さん遊びましょう」というと「はーい」と答えるらしい。「何して遊ぶ?」と聞いてくるので「ままごと」や「縄跳び」と返事をすると危険な目に遭うらしい。赤いスカート、おかっぱ姿の少女。


 調査結果:噂だけで確認できなかった。




「あわわ。ちょっとまって!」

「どうしたの?」


 凪咲はノートをめくってエピソードを読んでいたが、途中からブルブル震えノアムにノートを渡した。


「う、うーん。わたし怖くてもう読めない。澪さん、このレベルって何? 除霊もできるのね」

「あ、気づいちゃった⁉ あたし霊が視えるから、レベルが低いほど、弱くて無害の霊だって数値化すうちかしているの。澪査定さてい、最大1000レベル。数字が大きい程、霊力は強いのよ。簡単な除霊ならできるけど、強いのは準備が必要です」

「澪さん、すごいですね」


 ノアムが読んでいたが、澪にノートを見せる。

「エピソード⑦……これって怪しくないか?」

「どれどれ?」

 澪と凪咲はノートをのぞいた。



 エピソード⑦ 未確認のため未測定(除霊不明)

 三階建ての校舎なのに、夜の学校には、四階があるらしい。四階に上ると二度と帰ってこられない。異世界につながっているのではないか――という噂。



「ああ、それですか? どこの学校にも出てくるよくある七不思議のひとつだと思うけど……? さすがにあたしは夜の学校に忍び込む勇気はないので、実際に四階があるのか確認していないです……。なので、レベルも除霊ができるかもわからないですね」


 澪の話を聞き、ふむ、と考え込むノアム。


「恐らく、どの学校にも同じようなエピソードがあるなら、歴史ある学校が異界いかいつながっている道があるのかもしれませんね。確認してみましょう、凪咲さん」


「ええ! わたし。無理、怖い、無理、怖い……」

 「無理」と「怖い」を繰り返す凪咲。


「はーい。あたしも行っていいかな? いや、絶対行きたいです! ついでに兄も霊感強いから連れて行きたい」

 赤坂澪は手を挙げて張り切った。

「もちろんだよ。でも赤坂さんの両親は心配だろうから、まず親に許可をもらってください」

「その点は大丈夫です。先祖が陰陽師おんみょうじだったって聞いた」


「陰陽師……あの、怨霊おんりょうしずめる呪術師じゅじゅつしのことですか? もしかして安倍晴明あべのせいめいの子孫ですか?」

 ノアムは顔色を変えた。

「まさかー。そんな名門の土御門家つちみかどけ流派の子孫しそんじゃないよ。したっぱだと思う。ママ達は人助けになるなら喜んで送り出してくれるはず」

「ありがとうございます」


「澪さん、だから霊感強いのね。じゃあ、わたしは行かなくていいかな?」

 ノアムは怖がる凪咲の耳元でささやく。

「凪咲さん、当日はボス貓鬼びょうき霜雪そうせつさんにも協力してもらいましょう。それと凪咲さんが行くならボーナスです。猫のおさわり一日フリーパスポート券がもらえますよ」


「一日中⁉ 」

 凪咲は動揺した。

「今なら、猫まみれ、おなかモフり顔うずめ優先券がもらえますが、いかがいたしますか?」


「猫まみれ……。わたし、もうがんばるしかない。行きます!」

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