第10話 霊感強めの澪さん

 赤坂澪あかさかみおは霊感が強くて霊がえると言った。


「澪さん……じゃあ、聞くけど、短期留学生のノアムさんのこと、どう思う?」


 ドキドキしながら凪咲なぎさたずねると、澪の眼鏡めがねの奥の瞳がキラッと光る。


「……ただならぬ気配オーラを感じていますが、もしかしてやんごとなき一族のお方ですか⁉ モンキャット王国の王子様だって噂でしたね……。やっぱり王子ですか? キャーキャー!」


(ノアムはあかやしじゃなくてちゃんと人間にえているんだ。そして澪さん意外とミーハーなんだね)


「あ、ううん。それはわからない。えーとね、ノアムさんも妖怪について調べているから、聞きたいと思う。今度、会えるかな?」

「日にち合わせてクラブ活動しましょう! でも……。ノアム王子様が来るなんて、あたし緊張して上手く話せるかなー」

 澪は顔を真っ赤にして照れていた。



 ***



 家に帰ると、ノアムはクローゼットの中にいた。お茶を飲み、猫騎士姿でくつろいでいるので、澪のことを話した。


「霊感強い、赤坂澪あかさかみおさんですか。凪咲さんお手柄ですね」

「えへへ」

最高機密トップシークレットなのに、澪さんに話してしまったけど、大丈夫だった?」

「ええ、まったく霊のえない人に話すと問題ですが、この件は話が大きくなりましたのでいいでしょう」

「ところで霊感強い澪さんだけど、ノアムのことは普通の人間に視えるんですよ。どうしてわたしって最初に会った時、猫ノアムのことが視えたの?」


「それはわかりませんが、凪咲さんはボス貓鬼びょうき霜雪そうせつさんもえるので相当霊感強いですよ」

「ええ! でも今まで幽霊なんてみたことないよ」

「そうですか。では周波数しゅうはすうが違うのかもしれませんね」

「周波数ですか」


「はい、テレビやラジオなどの周波数のように、霊、あやかしが視える方はその周波数しゅうはすうを合わせることが上手な方なんです」

「げげっ! わたし不幸にも妖波ようはに合っちゃったのね⁉」

「凪咲さん、地味に傷つきます」

「あーはは。ごめんねー。それで澪さんと今度『オカルト研究部』に集まることになったんだけど、ノアムも来てね」

「わかりました。ではどこに集まりますか」


「澪さんの家」



 ***



 今日はオカルト研究部の部活動初日。


 凪咲と人型に変化へんげした留学生ノアムは、赤坂澪の家の前に来た。玄関にはプランターに花が咲き、小さな庭付き一戸建ての家だ。インターフォンを鳴らした。澪の母が出迎えた。


「あらいらっしゃ~い。澪に友達を連れて来るなんて……う、嬉しいわ。この子が失礼な態度とったら言ってね~。ママは友達の味方よ。全力で澪を教育し直しますわ~」

 澪の母はしゃべりだすと止まらないらしい。


「ママーやめてよ。恥ずかしい。凪咲さんと――初めまして留学生のノアムさん。二階のあたしの部屋に入ってください」

「お邪魔しまーす」


 二階に上がって澪の部屋に入ると、男の人が部屋の扉からひょっこりのぞいた。


「おお。ようやく澪に友達か~。妹は人と合わせようとしない空気読めないマイペースだから、扱いづらいけど、よろしく頼む」

「やだ、兄ちゃんまで! えっと、こちらは中学二年生の兄の快斗かいとです」

「初めまして、快斗さん」

 凪咲とノアムは挨拶する。


「実は兄も、オカルト研究部の部員なんだ。くわしいよ! むしろあたしは兄の影響受けてオカルトが好きになったよ」

「お兄さんよりも詳しくないわたしが副部長なんていいのかな?」

 凪咲は安易あんいに引き受けて、不安になった。


「いいのー。だって兄は中学生だし、さて座布団ざぶとんに座ってくださいね」

 そして澪は凪咲に小声で恥ずかしそうに言った。

「どうしよう! 王子様に何をお出しすれば喜ぶのかなぁ。嫌いな食べ物や飲み物ってあるのかな?」

「うーん。特にないと思うよ」


 赤坂澪は箱に入ったクッキーと、烏龍ウーロン茶やスポーツドリンクをテーブルにおいた。


「紙コップがあるので、お好きなドリンクを自由に注いで飲んでください」

「澪さん、ありがとう」


「学校の七不思議ななふしぎが知りたいんだよね。それと気になったんだけど、凪咲さんが言っていた大妖怪が小学校を乗っ取る事と何か関係あるの?」

 凪咲は困ってノアムを見る。ノアムは咳払いして言った。


「――ああ。大いに関係ある。この学校には、人間界と霊界をつなぐ通り道がある。そこから霊界の悪い奴らが人間界に入り込み。心に隙間のある人間に取り憑いて、利用しようとしているんだ」


 真剣な眼差し、蒼玉サファイアブルーの猫目で見つめられると澪はこれ以上詮索はしなかった。


「わかりました。じゃあ、この小学校の七不思議をまとめたノートを見てください」







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