第4話 貓鬼のために密偵活動
「
「そうです。あやかしが
猫将軍とモブ猫又、さらに化け猫たちがわらわらと集まり、頭をぺこりと下げる。
(かわいい猫……いや、ちがう妖怪だった。猫又って言ったっけ? あーでも。
「いっ……いやだ! 断る」
「――はくじょうだな」
猫将軍は大きな長いため息をつき、あからさまにがっがりする。まるでこっちに
「はぁぁぁ?? わたしは受験生なの! そっちの事情は自分達で解決すればいいでしょうが」
「そこをなんとか」
「いやです。わたしに何のメリットもない」
凪咲はキッパリはっきり言う。
「メリットですか……。では申し上げます。猫の
「……!」
凪咲の眉がピクリと動くのを見逃さず、猫将軍が目を光らせた。
「ならば、一日に二十分でどうでしょう?」
「うっ……」
「にゃふう……。やはり引き受けていただけませんか。
「いい……
「そうですか!
したり顔の猫将軍が自慢の長い
(しまった! 勢いで引き受けてしまった)
言ったそばから後悔する。
「大丈夫です。わたくし妖騎士ノアムが、命に代えても、
ノアム人型騎士は誓いのポーズ、拳を心臓におき
「ううっ。だまされた気がするけど、守ってくれるならがんばる」
「はい、ノアムに任せてください」
***
神猫が支配する、
次の日、小学校の教室にいた。
小学六年生ともなると身長が百五十センチ以上背が伸びてパステルカラーのランドセルを背負うと
(はあ。学校は地獄だと思う。こんな地獄のような箱に閉じ込められたら息苦しいよ)
「なぎさー。もしかして中学受験組⁉」
給食のあとに、友達の
「いちおう……まあ……」
「うっそ。
「なんで敵なの?
「あ……だって
大山川家は代々続く名家で教育熱心で有名な一家だ。事の発端は大山川の母親が役員会の打ち上げで「子どもにとって当然の権利だから中学受験をするべき!」と熱弁したからだ。
「光莉のお母さんと受験がどーゆー関係しているの?」
「大山川一派は受験組でしょ。うちの母は中学受験反対派だから対立しちゃってさ。受験なんてそれぞれ家族の事情もあるし、好きにすればいいじゃん。いちいち干渉しないでほしいよ」
「ソレな。うちらまきぞえ食らってるし、なのに猫ようかい……」
「なに猫ゆかい? いま猫の話したっけ」
「あーはは。なんでもない」
(危ない。危ない。猫妖怪の密偵に
***
凪咲は家に帰って二階の自分の部屋でくつろいでいると、
「あれ? 今日は猫おもてなしの日だったのに猫がいないね。おさわり自由二十分の契約ってノアムのことだったの?」
「いえ――。次回からどんな種類の猫をおもてなしするべきか聞き取り調査に参りました」
「え、じゃあ今日はおさわりナシか」
凪咲はため息をつく。
「
おもむろにサーベルを置き、
「ちょーっとまった―――――‼!‼」
「なんですか?」
「何で服脱ぐ? わたし、女の子の前で⁉」
「……脱いだらほぼ猫ですよ。モフモフだし」
「いい? 誇りをもって!! いったん、
「……そうですか」
「じゃあ、女の子の前で裸にならないで服を着て。今日は本物の猫は我慢する」
「本当にいいのですか? いつでもプライド捨ててモフモフ猫になりますよ」
「結構です。あなたは騎士。だから今日は猫のぬいぐるみで我慢します」
凪咲は
「これが本物だったらなー。もっとモフモフかな。楽しみはとっておくね」
凪咲はいつの間にか寝てしまい、ノアムは布団をかけてあげた。ぬいぐるみと一緒にスヤスヤと眠った凪咲を見ながら思った。
(なんだか憎めない娘だな……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます