修羅場

ここは、ドラックカエルちゃんジャンプ。


現在ここでは、修羅場になっていた。


というのも、直下型の地震によって周辺地域の大部分が崩れ去り。カエルちゃんジャンプの店内も半壊して、天井に穴が空いている状態。


しかし、周辺地域で無駄にデカい駐車場のおかげもあり避難民が殺到。やはり、無駄につめている薬剤師に周辺地域の個人医者のボランティアや料理店の店長のボランティア等もあり周囲で一番マシな避難所になっていた。



というのも、無駄に何故か水道が死んでいるにも関わらず例の銅像の涙だけは止まってない為清い水が確保でき。そのおかげでトイレやシャワーも無時、他の避難所では支援物資と称して使えない消費期限切れやらレンジが必要な物資を送られる為仕分けが必要とかいう今食料と水が大至急必要なのに訳が判らない手間を増やされている。


就活の学生やら、騒ぐだけの外部の人間等居ない方がマシまである。



しかし、カエルちゃんジャンプが一番マシなのは例の黒電話が生きていた為に本店に対して直接色んなものを要求できるというのがデカい。


ただし、お約束の不毛のやり取りは毎回やらされている為。避難所化している側からしたら、マシではあっても素直な感謝はちょっとできないのである。



一例を、あげて見よう。


店長「もしもし、本店はろわですか?テントと水が足りないんですが」


はろわ「水は、無限沸きの像があるでしょう?」


店長「避難してきてる奴らが多すぎて、像が足りねぇっつってんだよ。ポリタンクでも像でも給水車でもいいからよこしてくれって!!」


はろわ「今日の夕方伺いますんで、給水車とめるためのスペースで八台分位あけといてくれます?」


店長「大型で八台分だな、大至急やっとく!」ガチャ


とか


店長「もしもし、本店はろわですか?食料と日常品が足りないんですが」


はろわ「食料のうちわけ教えてくれます?野菜とか果物とかお菓子とか」


店長「ピストン輸送で千人単位の炊き出しが毎日出来る位に送ってくれって、内訳とかいいから温まって腹いっぱい食えるだけの料理が作れる材料送ってこいよ。バカ野郎!」


はろわ「判りました、日常品はカエルちゃんジャンプに普段卸してる倍位もってけばいいですか?炊き出しが目的なら、ドライバーと料理人も一緒に手配しときますね」


店長「なるはやで頼む!」ガチャ



とまぁこのように、本店はろわは普段通りの応対をするわけで早く物資が欲しい現場とはかなり温度差というか食い違いが発生している。


ちなみに、なるはやで要求したものは一時間後に倉庫に耳を揃えて積み上げられていた訳で仕事は早くて正確なので現場として文句はかなり言いづらい。


そもそも、被災地でレンジなんて使えるかどうか判らないし。お金も商品が買える店が生きて無ければ無意味だ。


乃ち、インスタント食品などあっても食べられないもの等も結構あるしレトルトパウチなど湯が沸かせるかどうかも判らないといった有様なのだ。



それでも、この本店の黒電話はちゃんと(要求したものは期限通りに送ってくる)。


その為、受話器を置いてから店長が毎回吼えている。




「こっちは、大ピンチなんだから内訳とかきくなよぉぉぉぉぉぉぉ」


それを、店員が無言で肩を叩いて首を左右に振る。


「店長、本店はあの調子ですから諦めましょう。他の避難所と比べて格段にマシだし、ちゃんと支援はしてくれるだけ何倍もマシじゃないですか。例の何でも弾き飛ばす結界で、マスコミやイミフなボランティアや火事場泥棒みたいなセキュリティ的に問題起こしそうな人間のシャットアウトまでやってくれてる上。手厚い支援も、無料でやってくれてるんですから」



店長は項垂れながらも「そうだな、確かにマシではあるもんな」。


例の制服を着た店長と店員が、外を見渡すとまるで野戦病院みたいになった一角が見えた。



「避難してきた人にテント渡して、場所案内して。後は怪我人に使う包帯と消毒液きれたらまた本店に請求しなきゃなぁ」


「いつも、いやな声も舌打ちもしませんからね。本店は、いつものどかにこっちの要求聞いて妥当なら対応はしてくれる」


「緊急事態でレスキューな時でも、のどかに対応されるからムカつくんだが」


「それは、諦めましょう」



泥だらけになった、子供が泣いているのが見えて店員がそっちに走っていく。


諦めましょうといいながら、何とも言えない苦笑で笑った店員の背中。



「店長さん、本店はなんて言ってたんですか?」


「あぁ、卯敷(うずき)さん。食料や炊き出しの材料はピストン輸送してくれるそうなんで、朝と昼は店内のもので使えそうなもんで炊き出しやってくれますか」


任せとけと、にかっと笑って自分の力こぶしを叩き卯敷がはりきっていた。


開いた天井から、空を見て雨が降らないかと心配し。

俺達は、瓦礫の作業には加われない。何故なら、非力で邪魔になるからだ。



俺達は薬屋、とはいっても昨今の薬屋は何故か食料品や水なんかも扱っているが。


怪我とか、避難所を維持する事に力を注がせてもらう。


「俺達に、出来る事を」



だから、なぁ本店はろわさんよ。


「いつも、ありがとうな」




そういって、作業に戻っていく。



「でも、もう少しでいいからさ。避難所の苦難ってのを判ってくれってのは贅沢な事なんかね。せめて、登録式にしてくれよ。こんな時でもダイヤルって勘弁してくれ」



カエルちゃんジャンプでは、店員も店長も何とも言えない顔で今日も一生懸命働いている。


その後、大型トラックサイズでやってきた給水車でも足りなくてもう一回黒電話に対して不毛なやり取りを店長がする羽目になるのだが。


今日も明日も明後日もそのまた先もずっと、店長が黒電話に向かって吼えているのはもはや名物と化して誰も気にしなくなった。


いわく、店長は部下に怒鳴った事は一度も無い。「あの黒電話に向かってならしょっちゅう怒鳴ってるけど」と言われる様になったとさ。

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