白百合の一族

※母、ハクアに魔導の真髄を学びたいと言った結果ハクアの双子の姉の所に修行に行った時の話。



「よぉ、クラウディア」


そこに居たのは、母親と全く同じ顔の変態。


ハクアの姉:ブロシア・ニューブリッツ。


常時、褌とサラシと棘つきのショルダーパットだけで生活する変態エルフである。


これでも、魔導に関してだけなら自分より上とハクアに言わしめたいわくつきのハクアの姉。



(欠点が全部変態によってるからって母さんは言ってたけど)



ちなみに、見分け方がブロシアは標準的なエルフと同じ膨らみかけ位の大きさしか胸がない。


それ以外、身長も顔もほぼ一緒なのだ。



「さぁ、今日も暑苦しくいこうではないか!」



全然関係なさそうな、筋トレメニューから朝は始まる。


朝は三百五十回の腹筋から始まり、超高速早回しの様なピッチでマラソンをする。



ちなみに、その間全属性を頭の上で旋回させながらだ。


「最初は何言ってんだこいつ、そんな事やれる訳ねぇだろって突っ込んだっけ…」



所が、「そうだな!お手本は必要だな!!」とか言って全属性の他にかなりハードなボーイズラブ本を十冊位同時に浮かべて属性とは別に念動で動かしながらパラパラ捲ってその内容を水魔法で全部再現しながら炎と闇で背景作って光魔法で微妙に局部だけ隠しながら…。



その状態で筋トレ始めた時は、「うわぁ…」って言って絶句した初日。


「さぁ!クラウディア。我が愛しの妹の娘よ、こっち側の世界へ」とか言い出した時は殴りてぇと思っても私は悪く無い筈。



(なるほど、母さんが言ってた事が良く判る)



母さんが実家に帰りたくない理由にして、人としての欠点がほぼ全部変態に集約されているという意味。



(コントロールがおかしいだろ、どうやったら人にあんな真似が出来んだよ)



「HAHAHA、妄想力は全てを解決するのDA」


とかいって、魔導を極めたいって母さんにいったのは私だしなぁ…。




「妄想力ってことは、想像力って事か」


そういって、土で大好きな兎を手のひらに作り出す。



「の~んのん、そんな大人しい想像では人の度肝を抜く事など出来はせん!」


私がお手本を見せてやろうとか言って、土ゴーレムがサイクロップスにバニーガールの衣装着せたものに指みてぇな耳飾りつけさせたものを作りだして「これがっ!兎さんだ!!」とか言った時は本気でぶっ壊してやろうと思った私は悪くない筈。




「まぁ、実際本気でぶっ壊すつもりで魔法撃ったのに筋肉がてかっただけで霧散した時は本気で目をひん剥いた訳だけど」



あれから、強そうなものは何でも想像しながらどうすれば勝てるのか必死に考えた。


ドラゴンにキメラ、肌が人の顔になった人面悪魔など…。



風下に居ただけで全て生命力と魔力を奪いつくす蝶なんてのも、開発して出来る様にした…。



それでも、相変わらず「大人しい!優しい!女の子にそれはとても大事な資質だ。しかし、妄想力を高めねば私の偶像を貫くには至らない!!」



そういって、千人単位のブーメランパンツの獣人が太陽の笑みを浮かべて迫って来た時はお前の頭の中にはそんなものしかつまってねぇのかよって本気で蹴りをいれた私は悪くない筈。



実際蹴ったら光の様に消えて背後に回られて卍固めに決められて袋叩きにされた上で、指鳴らしただけで完全に治療が終わってるとか言う…。


「はっはぁ~!」


とか言いながら、その獣人達と一緒にポーズ決めながら腰フリながら歩いてくんのマジで止めろって。



「ヒントをやろう、具体的にイメージする妄想力、己のイメージを動画の様に捉える事、魔力をどう使えば効率的にそれを成せるか。ついでに言うなら、その妄想を信じる力こそが強度に直結する。クラウディアちゃん、魔力の総量では人でもエルフでも君の母さんでも私に勝つ事はできない。それでも、強いのは妹ハクアという事実だ」




よく考えろ、君が想像する化け物たちは君が信じるに値するかを。

よく考えろ、君が効率よく魔力を使っても長期維持でも数でも私には勝れない。


それで、勝負に勝つには?私に一発入れるにはどうしたらいい?


「私の魔力を打ち破れる程、君には強く信じるものがない」



子供の君には難しいかもしれないが、魔法と魔導が違うのはそこなんだよ。



精霊が使うのは精霊魔法、魔法は所詮属性や力学化学などの学問。


普通に使えば、自然は偉大であり雄大であり魔法の方がはるかに強いさ。



「だが、極めてそれを越える程の妄想力と魔力があれば魔導は自然を超越する」



魔導は理屈じゃないんだ、ただ強い精神力。

怪我を治すイメージさえあって、そのイメージに自身の魔力が足りればそれは叶う。

そこに才能なんていらないんだよ、強度が足りていればいいんだから。



逆に言えば、燃費はすこぶる悪い。精神力でごり押ししてるだけなのだからな、それでも私は魔法を使うもの達に基本的に負けたことはない。



「何故なら、規則正しく。又、礼儀正しいものや面白みのない真面目さは全て私の敵だからだ」


どや顔で、そんな事を言い出す。母の双子の姉を、本気で頭かちわって海に捨ててきたいと思った私は悪く無い。




「私の筋肉とボーイズラブを愛する心、危ない服装を愛する心を打ち砕くには私の精神力を上回る程の強度がいる」



魔力総量は才能だ、だがクラウディアは人なのに私に迫る程魔力総量は高い。

並のエルフなら、並の神ならねじ伏せられるだろう。

君には魔法の才能もある、属性相性もほぼ全部あるって凄いね。



「君に足りないのは、強度の方なんだよ」


そういって、座禅を薦められた。



「それが強いと信じる心、それが何より素晴らしいと愛する心…」


どんな化け物よりも、どんな広大な自然より。

魔導は、その想いの丈で実現するものなんだ。



「私が、何より信じるもの…」



その日の夕方、クラウディアはブロシアの妄想に勝つ事が出来た。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る