第5話

「オレはもう疲れた」

 強気な牛沢誠二が珍しく妻の梓に弱音を漏らした。

「えっ、何ですって」

 洗濯物を洗っていた、梓は思わず

耳を凝らした。

「いっ、いや何でもない」

誠二が慌てて前言を撤回した。

誠二は小さな建設会社を経営していたが

資金繰りに窮してしまい、多額の負債を

背負ってしまったのだ。

おまけに友人の保証人になってしまい、

その負債も払わなければならなくなったのだった。

「あのねぇ」

「なに」

「この前買った宝くじ」

「うん」

「当たったのよ」

「いくら」

「十億円」

「イーッ」

誠二が言葉を失った。


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