第7話 ごめんね
「おう、お前さ……しっかりしてくれよ……」
なかむらくんが怒った感じで僕に言ってくる。
「ごめんね」
よくわかんないけど、謝った。
きっと、なかむらくんは僕がもたもたしてるのを怒ってるのかなって思って、急いで校舎に向かって走り出した。
「おうおう、待て」
なかむらくんがおおきな声で後ろから呼び止めてくる。
後ろを振り返ったら、彼がはあはあしてすぐ近くにいる。きっと、ぼくのところまで急いで走って来たのかなって思った。
「え?」
分かんない。僕はいったいなんで呼び止められたのかなって思った。
「お前、少なくとも今日は良いかもしれないけど、明日以降、周りの足をひっぱるなよ?俺が全部教えてやるから、俺について来いよ」
そうやって言って、校舎のほうに歩きだす。
そんな背中についていった。
なかむら君はいったい僕に何を言いたかったんだろうって思って、なんだか頭の中がふわふわしてた。
その日の夜
僕たちはごはんを食べて、みんなでお風呂に入った。そして、寮の部屋でテレビをつけながらみんなで話してた。
どこから来たとか、何が好きかとか、お父さんとお母さんのこととか。そうやって、話してると、あれ?そういえばなんで僕って家に帰ってないんだ?って思ってきた。
そうやって思うと、なんだか耳に話が入ってこなくなって、気づいたら目から涙が出てた。急に寂しくなった。ごめんねって言いながら、なんか誰かが背中に手を置いてくれてた。
なかむらくんだった。
ひとしきりそうやってした後、消灯の時間がきたからみんなで一斉にベッドに入った。なんだか、布団がつめたいなって思って、丸くなった。
廊下を誰かが歩く音がして、ちょっとドアが開いた。そっちは見なかった。ていうか、あんまり見たくなかった。
目がなんかまぶしくなる。懐中電灯の光かなって思った。これは、見回りらしい。
ドアが閉まる音がした。
そういえば、なんでこんなことをしているんだろう?あの家に来たおじさんは家から通うって言ってたと思うんだけど。僕はなんでこんなことをしなくちゃいけないんだ…?
「ねぇ…」
上から押し殺した声が聞こえた。
ぼくの上にいるのはゆうたくんだ。そのはずだった。
「ねぇ…泣いてる?」
「泣いてない」
……
たぶん、上でその時ゆうたくんは体の向きを変えていたんだと思った。きっと、その時の僕と同じく最初は営内のドアに向かってたけど、窓のほうに向きなおったんだと思う。カーテン越しに少しだけ透けてる月の明かりを見ていたんだ。
「おれさ、ここに来た時、なんにもできなくて……で、パパとママに会いたくてしょうがなかったんだ」
……
「でも、いま俺ここにきて2週間目だけど、なんとか耐えられてんだよね」
「そうなんだ」
「おれ一人だったら、無理だった、ここの友達がいたからここまでこれた」
……
「もうさ、ここまで来ちゃったんなら俺たちは一生離れられないから、お前のこと俺たちが助けるから…」
なんて言っていいのか分からなかった。
「だからさ……一緒に頑張ろう?」
なんだか、口から声が出なくて、体の震えが止まらなかった。だから、ベッドの上をトントンってした。
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