第4章 浪包海域/ロマンの海
千は、
千は港町にいる。
「さて、ここの王の剣はどこにあるだろうか」
千は王の剣を探すため、港町の人々に聞き込みを行う。
港町では、特におかしな事は起きていない。収穫が無く、千は港をぶらぶらと歩く。
港には、漁船の他に木造の小型の船が泊まっている。千が見つめていると、声を掛けられる。
「お前も、冒険に興味があるのか?」
千に声を掛けたのは青年だ。青年は、動きやすい服装をしている。
青年の耳にはデバイスが無い。これは、青年が隊に入っていない事を示している。
「君は?」
「俺は
和二は木造の船を指差す。
「俺はこの船で、世界中を旅して、宝を手に入れているんだぜ!」
千は目を輝かせる。
「面白そう! 丁度僕も探しているものがあるんだ。ついていっていいかな?」
「もちろんだぜ」
和二は千を船に案内する。
船には甲板と、船を操作する舵輪、そして下の部屋へと降りる階段がある。
「最近、気になるものを手に入れたんだぜ」
船にて、和二は宝の地図を見せる。宝の地図には浪包海域全体と、ある島にバツ印が書かれている。
和二は、バツ印を指差す。
「このバツ印の場所に、宝があるかもしれないんだ!」
「確かに。調べてみよう」
「ああ、出航だ!」
和二はいかりを上げ、舵輪にて船を進める。
海上を進む千達。
千は海にいる魚や、海上を飛んでいる海鳥を見ている。すると、海からエビの暗魔が飛び出し、甲板に着地する。エビの暗魔は、人ぐらい大きなエビの見た目をしている。
千は目を見開く。
「海の中に暗魔がいるという話は、本当だったのか……」
「出てきやがったか」
和二は運転をやめ、千の元に駆けつける。
千と和二は、魔機を具現化する。千は剣の魔機で、和二の魔機はサメをモチーフとした鋸だ。
千達はエビの暗魔に攻撃するも、エビの暗魔の鎧は頑丈で、攻撃が効かない。
千は槍の魔機に変える。そして槍の魔機をエビの暗魔と甲板の間に差し込み、エビの暗魔をひっくり返す。エビの暗魔の腹は、鎧が無く柔らかい。
千達はエビの暗魔の腹に攻撃し、エビの暗魔を倒す。エビの暗魔は消滅する。
「これで一安心だぜ」
和二は舵輪の前に戻る。そして再び、船を運転する。
「和二も、魔機を持っていたんだね」
「ああ。護身用だけどな。浪包海域の暗魔は主に海上を通る船を襲う。だから、ここの船乗りは魔機を持っているんだぜ。魔機使いを雇っている場合もあるけどな」
「へー」
船が進みつつ、千達は会話している。
千達は、南国島で食料を補給している。南国島は美しい海岸近くに、果物や野菜を扱ったお店が並んでいる。
買い物を終え、千達は船に戻っている。千達の遠くに、白愛がいる。白愛は、架想市で千と共に戦った仲間だ。
白愛は沢山のフルーツを袋に入れて持っている。
「おーい!」
千は手を振りながら、白愛に近付く。和二もその後に続く。
白愛は、千の方を見る。
「白愛は、ここで何をしているの?」
「私は、ここでケーキ用のフルーツを買っているの。千は?」
「俺達は、宝島を探しているんだぜ」
和二が話に割り込む。
「白愛、宝島について知らない?」
千が聞くと、白愛は少し間を置いて、話し出す。
「宝島か分からないけれど、シーランティスの伝説については、本で読んだことがあるよ」
「ホントか!? 教えてくれ!」
和二は食いつく。
白愛はシーランティスの伝説について話す。
「いいよ。シーランティスは、浪包海域にあったらしい国。資源が豊富で、近隣の国々を侵略して支配していた。しかし神々の怒りを買い、海に沈み、滅亡したと言われているんだって」
「すっげー! そんな国なら、お宝も眠っているかもしれないな! 行こう千!」
「ああ!」
和二は走っていく。千は白愛に手を振り、和二の後を追う。
千と和二は、船の下の部屋に食料を置いている。
千は飾られている写真を指差す。写真には男性と子供が映っている。
「この写真は何?」
「ああ、それはな……」
和二の顔に影ができる。そして、少し間を置いて言う。
「……小さい頃の俺と父さんの写真だ」
「父さんはどうしたの?」
「父さんは浪包海域に旅に出て、行方不明になった。旅を続けていれば、いつか父さんに会えるかもしれない。それが、俺が旅するもう1つの理由だ」
千は写真を見る。
「そうか。いつか父さんに会えるといいね」
船は、濃い霧の中に迷い込む。和二は羅針盤で方角を確認して、宝島の方向へ進む。
しばらく進んでいると、霧の中に船が現れる。船には所々汚れや壊れがある。
「あれは幽霊船かな……」
千はつぶやく。
幽霊船は現れた時から、和二の船の横を並んで走っている。
「あの幽霊船、お宝を持ってそうだな。乗り込もうぜ!」
和二はいかりを下ろし、船を止める。すると幽霊船も止まる。
和二は幽霊船に乗り込む。
「ちょっと待って~」
千も後について乗り込む。
和二は辺りを見渡し、口を開く。
「この船は、見覚えがあるぞ。まるで――」
そう言いかけた時、骸骨の暗魔が現れる。骸骨の暗魔は人と同じくらいの大きさの骸骨の姿をしている。
千はメイスの魔機を、和二はサメの魔機を具現化する。
骸骨の暗魔は他の骸骨の暗魔らを召喚し、集団で襲いかかる。千はメイスの魔機で、骸骨の暗魔らを壊す。壊れた骸骨の暗魔らは消滅する。
和二は元の骸骨の暗魔に攻撃する。
すると、骸骨の暗魔が話し出す。
「その力があれば、自分の夢を託せるだろう」
和二は目を見開く。
「と、父さん……」
和二は、涙を流す。
「どうしたの?」
「骸骨の暗魔の宿主は、俺の父さんだ」
「えっ」
千は、骸骨の暗魔を見る。
「和二。宝島は危険な場所だ。あそこだけは、足を踏み入れてはならない」
和二は、強く宣言する。
「それでも俺は冒険者として、本当に危険かどうか確かめる」
「そうか……宝島に住む暗魔には気を付けろ」
そう言い残し、和二の父、いや骸骨の暗魔は消える。
気が付くと、千達は和二の船に乗っている。霧も晴れている。
「絶対に、宝を手に入れてやる」
和二は涙を拭いて、宝島を目指す。
千達は宝島に到着した。宝島は何も無いが、中央に巨大な二枚貝がある。
「あの中に、お宝が入ってそうだな!」
「ああ!」
千達は、巨大な貝の中に宝が入っているのだろうと予想する。
千達が宝島に足を踏み入れた瞬間、大きな貝に足を挟まれる。そして、魔機使いが現れる。魔機使いは貝のような鎧を着こんでいる。
「我が名はバイ」
バイの魔機は、貝をモチーフとした手甲だ。
「私は宝の地図をばらまき、ここへ冒険者をおびき寄せている。そして、上陸した冒険者を貝で捕らえている。捕らえた冒険者は、暗魔に変えている」
千は気づく。
「全ては、冒険者をおびき寄せる為の罠だったのか……」
「分かったぜ……父さんが気を付けろと言っていた理由も……」
千達は貝を壊し、貝から脱出する。そして、バイと戦う。
バイは大きな貝殻を召喚し、身を守る。千はハンマー型の魔機で貝殻を壊し、和二は隙を見て貝殻の無い所を攻撃し、バイに勝つ。
バイは魔機を捨て、貝の暗魔となる。貝の暗魔は、人より大きな二枚貝の姿をしている。
貝の暗魔が攻撃しようとして貝が開いた時に、千は銃の魔機で、和二は魔波で貝の中を狙う。そうして、千達は貝の暗魔を倒す。
貝の暗魔を倒すと、巨大な貝は消滅した。中から、王の剣が飛び出す。
和二は跳び、王の剣を手に入れる。
「何だ? これは?」
「それは、僕が探していた宝、王の剣だ」
千は、王の剣について説明する。
「すっげーお宝だな!」
和二は飛び跳ねる。
「宝も見つかったし、港町に帰ろうか」
「そうだな。千と会ったのも、港町だったもんな」
千達は、船に向かって歩く。するとクラーケンの暗魔が、海から現れる。
クラーケンの暗魔は、和二を攻撃する。そして、和二から王の剣を取り上げる。
「宝を返せ!」
クラーケンの暗魔は無視して、海に潜る。
「あのまま逃げられちゃったら、王の剣が分からなくなっちゃう!」
千はクラーケンの暗魔を追って海に飛び込む。和二はためらうが、結局千を追って海に飛び込む。
海の中、和二は魔波を飛ばす。しかしクラーケンの暗魔には届かない。
和二は息継ぎをしようとするが、千は止める。
「魔機使いは、息継ぎ無しで海中を泳ぐことができるんだ」
「そうなのか! 魔機使いって便利だな……」
千達は、深くへと潜っていく。
やがて海は深海となる。
深海は暗いが、魔機使いはある程度目が利く。なので千達はクラーケンの暗魔を追い続けることができる。
深海の底に、明るい場所がある。
クラーケンの暗魔は明るい場所へ入っていく。千達も入ると、そこには海底都市があった。海底都市の建物や道は綺麗で、明かりがついている。ただ、人の姿は見えない。
千達は海底都市に降り立つ。海底都市は、陸と同じように立って歩ける。
「海底にこんな都市があったのか……」
辺りを見渡す千達。
千は道沿いにある看板に近寄る。
「看板の字は見たことない字だ。なんて書かれているんだろう?」
「俺は古代文字も読めるぜ。任せろ」
和二は、看板を見つめる。そして振り返り、目を輝かせる。
「ここには、『シーランティス』と書いてあるぜ。シーランティスは、実在したんだな!」
そうここは、白愛が話していた場所、シーランティスなのだ。
千達がいる道は、神殿へと続いている。
「クラーケンの暗魔を捜しながら、あの建物まで向かおうか」
「そうだな」
千達は辺りを見渡しながら、神殿へと向かっていく。
千達は、神殿へと入る。
神殿の中央には王の剣が刺さっている。その後ろには像がある。像は目が5つあり、口のような部分が長く伸びている。顔はまるで、古代生物のオパビニアだ。像は人型で、手もある。
千達が王の剣に近付くと、像が動き出す。
「な、なんだ!」
像の目が光り、手で王の剣を囲う。像は遺跡を守る古代兵器だったのだ。
古代兵器は目からビームを放ち、千達を王の剣から遠ざけようとする。
「こいつを壊して、宝を頂こうぜ!」
「うん」
千達は、魔機を具現化する。
千は遠くから銃の魔機で攻撃する。しかし、あまり効いていない。仕方なくビームをかわしながら、ハンマーの魔機で攻撃する。和二も、後に続く。
「おりゃ!」
千達は、古代兵器を壊す。
「ふー、やっと王の剣を手に入れたぜ」
和二は、王の剣を手に取る。するとシーランティスに、海の水が流れ込む。
「急いで脱出するぞ!」
千達は神殿を出て、街を出て、シーランティスから脱出する。
海中で、シーランティスを見つめる千達。シーランティスは、完全に海水に浸かってしまった。
「どうして、シーランティスは海に沈んだんだ?」
「多分、シーランティスは、キャンバスの力で陸と同じように動けたんじゃないかな。しかし王の剣の持ち主が決まった事で、前のキャンバスの効果が切れた。その結果、シーランティスは海に沈んだんだと思う」
「へー。不思議な事も、あるもんだな」
千達は海面を目指して、泳ぐ。
海面から出ると船に乗り、港町へ向かう。
千達は港町へと戻ってきて、船から降りている。
「ありがとうな! おかげで宝が見つかったぜ! 父さんにも、会えたしな……」
「こちらこそ。海の旅は楽しかったよ」
千達は、握手をする。
「和二は、これからどうするの?」
「俺はこれからも旅を続け、宝を手に入れるぜ! 千は?」
すると船から王の剣が飛んできて、王の剣は浮かんでいる。王の剣は空間を切り開き、洋風な城が建っている城下町へとつなげる。
「僕は次の王の剣を探すよ。それじゃあ」
「またな!」
千達は、互いに手を振る。
千は和二と別れ、城下町へと入っていった。
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