第4話

「この男の子は意外と、後方支援タイプも出来るかも」「兄妹共に万能型だ」「将来有望」「二人パーティなら、女の子のほうがアタッカーだ」

階段を下りる彼らに、その声たちは、突然聞こえてきた。機械音声にも聞こえる声は脳内に直接響くようで、そのくすぐったさに逢魔は飛び上がった。

「だ、だれの声?」

「これも木霊の一種さ。魔法を得る者の好き勝手な批評をする」

刻は試すように、その声に問いかけた。

「アタッカーって攻撃する人。私、アタッカーに向いてるの、なんで?」

批評する木霊たちは黙ったあと、好き勝手に話し始めた。

「だって君、横の男の子よりも運動神経が良い」「誤差だ」「性格は加味してない」「いいや、性格こみー」

「初対面でしょ、私たち」

「わかるんだよ」「木霊ゆえに」「いやわからないかも」「ごめーん」

「適当なやつらだ」

逢魔は茶化すように言った

刻は兄と同じように、心底愉快そうだった。

「私はおもしろくて好き。この子たちだったら、異世界の旅についてきてほしいくらい」

「そんなにか?」

「そう言いながら、兄さんもそう思っているでしょう。双子なんだから」

「まあな。双子だからな」

「ボクらに好きって言った?」「好きってなに?」「うぃーらぶゆーということか?」「ついてきてって親愛の証ゆえ?」

「うん、そう」

「「「「木霊にそんなことを言ったの、キミがはじめて」」」」

ぽんっと音がした逢魔の頭の上を、見られない逢魔以外が見た。

黄金の細い糸を編んで作ったような、四つの頭がある小さな人型が、逢魔の髪を弄っていた。

顔のすべてが刻に言う。

「「「「ボクら木霊、キミに着いていくよ」」」」

その言葉と共に、逢魔の右手首と、刻の左手首にそれぞれ、細い金色の刺繡のような模様が浮かび上がった。

ガンダが目を丸くした。

「驚いた。ノロイ種がこうも簡単に、つながりを結ぶとは」

「ノロイ種、あとつながりってなんだ?」

「ことほぎには様々な不思議な生き物がいる。生き物は二種類いて、ヒトの味方をしやすいのがシュクフク種、そうでないのがノロイ種と呼ばれているんだ」

答えるガンダは、まるで師匠のようだった。

「ことほぎの生き物が、異世界人に味方をすると決めたら、特別なつながりが結ばれる。その模様が証さ。貴重なものだ。大事にしなさい」

逢魔は興味深そうに、刻は嬉しそうに手首の模様を見た。

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