第214話

「えー……最近社長業務ばかりしてあんまりダンジョン配信者してない如月司です、よろしくお願いします」


:なんの挨拶?

:草

:【¥5,000】ダンジョン行け

:定期的に始まる謎の雑談配信、俺は好きだよ


 謎の雑談配信って言うか……最近配信してないなーって思った時だけしかしないから。不定期ではあるけど、色々と忙しいとやるんだよね。


「今日は……今後のことを決めましょうかね。寝ても覚めても仕事のお話です」


:ならソシャゲやる手を止めろ

:言ってることとやってることが違うのでは?

:なに麻雀やってんだよ

:草

:麻雀やりながら雑談配信とか……普通に麻雀配信しろよ


「俺のゲーム配信とか誰も求めてないでしょうから手元画面を映したりはしません。で、今後の活動の話ですよ」


 色々と迷ったけど、やっぱり視聴者さんに聞いた方が早いんじゃないかなって思った。やっぱり俺の放送を楽しみに見てくれるのは視聴者だし、俺が好き勝手に考えて空回りしても困るから、最初から聞いた方がいい。あれだ……彼女に対する誕生日プレゼントとかサプライズとか考えずに相手に聞いちゃうタイプ……それが俺だな。彼女の性格によってはそれだけ別れようって言われるから気をつけろよ。


「俺としては、そろそろダンジョン探索者初心者講座をやりたいんですけど……あんまり面白味のある情報とかないんですよね。正直、魔力操作と魔力循環さえ完璧にできちゃえば普通に下層まで行けると思ってるので」


:君さぁ……

:草

:でも、カナコンちゃんはそれでEXまでなったよ?

:あれ、拡張して自分の外側に魔力流してるじゃん


「佳……ナコンさんの鎧は自身の周囲まで身体が存在していると仮定してそれに合わせて魔力を循環させながらそれに形を与えるとああなります。何言ってるからわからない人は安心してください、俺も正直何言ってるのかわからない」


:草

:やっぱり如月君も同格クラスが相手になると意味わからなくなるんだなって

:EXってなにかしらの分野でこうならないとダメなんだろうな

:神代ちゃんは?

:神代ちゃんは魔力の出力がやばいって話


 ふむ……確かに、EX探索者ってのは俺に理解できない部分が少なからずある人がなっていると思う。


「神代さんは魔力出力もそうですけど、あの自由性がやばいですよね。飛行する速度が速くてぐにゃぐにゃ曲がって飛べるところとか」


 あれは俺にはない魔力の自由性というか……想像力? あの人は式神術使えたら俺より強かったんじゃないかな。


「アサガオさんは子供の頃から魔力を視認していた経験から、魔力を手足のように動かすのがすごいですよね。しかもそれを応用するような形で好き勝手にオリジナルの魔法作ってるし……あの創造性は理解できませんね」


:確かに

:EXってすごいな


「カナコンさんはあの拡張の話が全く理解できませんし、相沢さんもなんで剣からビームでるのかイマイチわかんないですし」


 まぁ、そういう意味だと相沢さんが一番理解できるか? 盾と直剣を持って攻撃を防ぎながら戦う……探索者としてもっともスタンダードなスタイルで、初心者にもお勧めできる構成だ。相沢さんがそのすべてがEXレベルでまとまっているだけで、動き自体に意味不明なところはあまりない。


:神宮寺楓は?

:おばあちゃんは?

:神宮寺はちょっと……

:あれは別だろ


「婆ちゃん? あれは全てが理解不能でしょう。何を考えるのかわからないし、自由人過ぎて意味わかんないし」


:草

:探索者としてじゃないのかよ

:流石に笑った


 あぁ……探索者としての神宮寺楓か。


「婆ちゃんの理解できないところは……あの高速移動ですかね」


:やっぱり?

:身体能力お化け過ぎて草生えるよな

:あれはやばすぎる

:世界最速なのかな

:でも身体能力は衰えるからな


「いや、多分今でも世界最速だと思いますよ」


:そうなのか

:強すぎる

:意味不明な身体能力で草生えるもんな


「……これ、普通に言いますけどあの人の高速移動は単純な身体能力じゃないですよ」


 婆ちゃんも隠しているつもりもないのに、なにか喋ることもないから誰も知らないけど、神宮寺楓の高速移動は単純な身体能力による高速移動ではない。


:は?

:どういうこと?

:え?

:身体能力最強じゃないの?


「あの人の高速移動は、点と点を縮める魔法を連続で使用することでの高速移動です。まぁ……いわゆる縮地みたいな?」


:そうなの!?

:今明かされる衝撃の真実

:じゃあ高速で動いてはないってこと?


「まぁ……素でも速いんですけど、あそこまで意味不明な加速するのは全部魔法のお陰ですよ」


 素でも速いってのは理解不能な部分だけど。


:じゃあ如月君もその魔法使えばできるんじゃないの?

:そんなことができるなら普通はやるのでは?

:実はEXはみんなやってる説


「いやぁ……あれは無理ですよ」


 説明するのが面倒だから言わないけど、あの縮地法みたいな魔法は緻密な計算を連続でし続けなければいけないようなものだ。しかも、かなり融通が利かないので一度設定した場合は飛ばなければいけないと決まっている。短距離での使用は基本的に想定されていないような魔法だが……婆ちゃんはそれを天性の才能だけで相手の動きと加速した自分の動きを把握して、即座に最も有効な場所へと飛ぶ。


「あれが真似できたら問答無用でEXになれるので、目指している人は真似してみらたらいいんじゃないですかね。ちなみに俺は連続使用が無理なので諦めました」


:アサガオちゃんとか神宮寺楓のこと結構尊敬してるからできるのでは?

:もっと信者みたいに信仰している神代ちゃんができていないんだから察しろ

:EXってそんな簡単に目指すものなの?

:違うよ

:そもそも実力で昇格する訳じゃないからね

:推薦式だからな……


「基準としては、80階層ぐらいまでソロで行けたらEXになれると思いますよ。それかパーティーで70階層ぐらいまで潜ってそこのモンスターを相手に1人で複数体まとめて相手にできるとか」


:無理だよね

:無茶言うな

:やっぱりEXって草生えるわ

:なんで草生えたの?

:如月君って……強いんだね

:わかってはいたけど、わかっていたつもりだけだった

:これからも如月君の動画楽しみにしてるわ


「いや、なに雑談配信ももう終わりかみたいな雰囲気出してるんですか。本題はこれからの活動方針なんですから」


:あ、そうだったわ

:すまんすまん

:これからね……ダンジョン初心者講座でいいんじゃない?

:もっと基礎的なことやろう


 やっとちょろちょろと意見が出てきたな。これをまとめて次の配信で生かそう……ダンジョン基礎講座だったら動画でもいいけどね。

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