第172話
爆発炎上しながら四散していく幽霊船を見ていると、なんだか映画を見ているような気分になった。大航海時代や海賊をモチーフにした映画とかだと、結構ありがちなシーンじゃない? 敵船が凄い爆発しながら沈んでいくのとか。
幽霊船を爆発させた張本人である朱雀は、自らの戦果を見ながらドヤ顔をするように上空を飛び回っていた。
「……今回はこのまま帰りますかね。ちょっと幽霊船相手に時間もかかっちゃいましたし……隕石がいっぱい降ってくるようなダンジョンに長くいるのも嫌ですし」
:隕石が理由だろ
:まぁ……隕石は確かに嫌だな
:【¥50,000】お疲れ
:オーストラリアのダンジョンだから最初は視聴者数も過去最高の推移だったのに、幽霊型のモンスターが大量に出てきたところあたりからちょっと視聴者数減ったのは面白かったぞ
:幽霊嫌いな人って結構いるんですねぇ
俺も倒せない幽霊は嫌いだぞ。だからホラーゲームとかも幽霊に対して反撃できるゲームは好きだけど、反撃できずに逃げるだけのゲームとかはやらないからな。
ゴースト系が多いダンジョンって日本にはあんまりなかった気がするけど……青森県の恐山とかにダンジョンがあったらそんな感じになってたのかな? でも、土地柄とか関係なくダンジョンって生成されていたりするからな。ニューカッスルだって別に幽霊が多い話とか聞かないし。
「今回はあくまでお試しだったんですけどね。ほら、そろそろ新しくダンジョン配信者を増やそうかなって話もしてましたし、初期メンバーもそろそろ海外進出ぐらいは見えて来たじゃないですか」
:言うほど見えてきてないと思うよ
:そんなこと考えているのは如月君とアサガオちゃんだけじゃないかな?
:カナコンちゃんも考えてると思うけど、まずはEXって言ってたからな
:そもそも海外のダンジョン攻略を配信しようってのも中々の考えだと思うけど
:普通はやらないのよ
そうかなぁ……普通の人がやらないなら、それは面白い機会になるとか思ったりしない? 結局、ダンジョン配信者なんてひたすらにダンジョンを攻略する姿を見せるだけの仕事なんだから、他の配信者とかよりも視聴者のリソースの奪い合いが激しいと思うんだ。そんな時に、新鮮な体験をできるってのはなによりも大きな財産だと俺は考える訳で。
流行り物のゲームを配信することはいいことかもしれないけど、流行り物のゲームしか配信しない人は飽きられるでしょ? だから偶には自分が好きって思ったものをやらなきゃってのと同じじゃないの? 俺にとってはその自分が好きって思ったものが、海外のダンジョンだったってだけで。
「なんにせよ、日本のダンジョンだけだと足りなくなるんじゃないかと思って……俺が行きたかったってのもあるんですけどね? それでも、うちに所属する人は将来的にはこういうこともするかもしれないですよって所を見せておかないといけないですし……色々な事情があったので海外まで来たんですよね」
話している最中も普通に隕石は降って来ているが、嬉々として飛び回っている朱雀が勝手に破壊している。今となっては逆にその余波の方が怖いぐらいだが。
色々と言い訳したけど、単純に俺が来たかっただけだ。いや、将来的にみんなが海外のダンジョンを配信するかもしれないからって話も、新しく入社しようとしている人にearly birdはこういう会社ですよって示すためってのも嘘ではないんだけど。俺が来たかったって理由が一番デカいってだけで。
「まぁ、ダンジョンに関しては出現してから100年も経っていないので、国ごとに暗黙のルールがとかそんなにないですから……難しく考えずに、視聴者のみなさんも是非とも挑戦してみてください」
:海外旅行費は出ますか?
:自費決まってんだろ
:【¥5,000】旅行費も帰りの飛行機代もダンジョンで稼げば?
:草
:確かに
:【¥500】
:最高かよ
おー……割と盛り上がっているので、自殺行為だと思うとは言わないでおこう。本当にやる奴なんて多分いないと思うし……いないよな? 流石にそこまで馬鹿なことする奴はいないだろ。
「ちょっと配信のネタになるかなって思ったんですけど、深層まで潜っちゃうと普通に飛行機代どころかホテル代まで稼げちゃうんでつまらないですね」
:は?
:いや、そもそも深層まで潜ることは想定されてないのよ
:確かにネタとしては面白そうだけどな
:わかる
:【¥1,000】如月君は収入10分の1縛りにしても普通に帰ってきそうだからダメ
:普通にダンジョンからダンジョンまで歩いてみたとかの方がネタになると思う
「あー……渋谷ダンジョンから名古屋ダンジョンまで歩いてみた、とか?」
距離はかなり遠いけど……本気で走ったらどれくらいで付くのだろうか。
:多分それするんだったら自転車で日本一周の旅とかしてた方がいいと思うよ
:自転車で日本全国のダンジョンを攻略して見た
:長期企画ですね(笑)
:アメリカでやったほうが楽しいのでは?
「アメリカでそれやると果てしなく時間がかかるので嫌です。日本人の感覚では分かり難いと思いますけど、アメリカって滅茶苦茶広いんですからね?」
東京とかに住んでいる人が北海道の広さを実感することができないなんて言われますけど、そんな北海道よりも更に広いんですからね? それだけでも途方もない場所だってわかるでしょ。
:アメリカとかの知り合いいないの?
:おい、ぼっちになんてこと聞くんだよ
:元、ぼっちな
:恋人ができたこと恨んでる奴いて草
:【¥14,000】元俺たち
:脱俺たち
:知り合いの探索者とかいないんだから
「……散々言われてますけど、知り合いの探索者がいないってのは事実ですね。顔を知っている人なら何人かいますけど、別に連絡先を交換しているような仲でもないですし……確かに友達と呼べる探索者はいないです」
日本でもEXぐらいしかまともに知り合いの探索者いないし。
「と言うか、オーストラリアにだって顔を知っている探索者ぐらいいますけど、別に友達でもないですから。だから会ってないんですよ」
:やっぱり根本はぼっちなんだよなぁ
:なんでアサガオちゃんに惚れられたのか、わからない
:強いから定期
:やはり人間は野生の本能には勝てないんや……強い奴は、モテる
:なんの話だっけ?
:【¥30,000】如月君がぼっちだって話
:違う
あってるけど違うぞ。
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