第166話

「てな訳でニューカッスル沖のダンジョンに来ました」


:何処だよ

:ニューカッスルってイギリス?

:【¥10,000】ドルで送った方がいい?

:いや、多分オーストラリア

:なんで急に海外?

:いやSNSで海外のダンジョンに行きたくなったから配信するって話してただろ


 先にSNSで告知しておいたので、受け入れている人と困惑している人で半々って所かな。


「ニューカッスルはシドニーがあるニューサウスウェールズ州に存在する都市ですね。都市圏には人口が70万は余裕でいるので、かなりデカいですよ」


:マジか

:オーストラリアって思ってたより人口いるんだな

:オーストラリアってダンジョン大国だから、日本と同じぐらいダンジョンあるんだよな?


「そうですねー、オーストラリア広いですよ? 日本から直通の空港が6つあるぐらいには広い場所ですから。最近はダンジョン大国としての地位もあって、年々人口が増えているらしいですし」


 それこそダンジョンが出現する前はアメリカとかの名だたる大国からは少し劣る立ち位置にいたらしいけど、ダンジョンが出現してからダンジョンの数がそのまま国の資源となって、それがそのまま直結して国力になったからオーストラリアは一気に台頭してきた訳だ。

 俺が今いるニューカッスルも、ダンジョンが出現してからだけで20万ぐらい人口が増えているらしい。沖の島にダンジョンが存在しているのも関係しているだろうが。

 ニューカッスルダンジョンは、港湾都市ニューカッスルの沖の2キロ付近にダンジョンとして出現した場所だ。ダンジョンが現れた時は世界中で小規模な地震が起きたらしいけど、その中でもニューカッスルのダンジョンは噴火のような音と共に海中から浮かび上がってきたのだとか。


「で、このニューカッスルダンジョンなんですけど、俺も浅い階層まで来たことしかないので良く知らないんですね。だから、初見の楽しさを皆さんにもお伝えしようかと思いまして……英語もあんまり得意じゃないのにここまで来たんです」


 俺の英語力は、喋れなくはないし聞き取れなくはない程度である。多分、相手からしたら片言で喋っている外国人みたいな感じになっていると思うけど、通じるとみんな親切に接してくれるんだ。たまに俺がアジア人だとわかると露骨な態度を示してくる奴だっているけど、そういう奴は日本にだっているので気にしない。


「浅い階層をざっくり概要だけ教えると、星空が綺麗なダンジョンです」


:?????

:ダンジョンなのに星空とは

:そう言えば聞いたことあるわ

:なにもわからん

:情報量が多い

:あー! なんか前にテレビでやってたわ!

:満点の星空が見れるダンジョンって奴か


「それですそれ。常に薄暗いダンジョンなんですけど、頭上にはひたすら星のように美しい水晶が光り輝いているってダンジョンです。結構観光的な人気も高くて、海外からも人気のダンジョンなんですよね」


 星空に見えるほど天井が遠いのに、階段を降りるだけで次の階層に行ける理由は判明していないからちょっと恐ろしいけど。なんか空間が歪んでいるんじゃないか、とか言われているらしいけど、そんなものはどうやっても証明できないから難しいとか。


:金は?

:儲かるの?

:【¥50,000】行って見たいな

:彼女も連れて行ってやれよ

:【¥10,000】なんでそんなデートスポットみたいな場所に1人で行ってんの?

:別れた?


「別れてません。今回はお試しで来ただけです! だから深層まで行ったら帰りますよ」


 一応、このニューカッスルダンジョンも過去に深層があることは発見されているから、そこまでは絶対に行きたい。


「で、金の話ですけど……このダンジョンは上層ではあんまり儲かりません!」


:はい解散

:草

:【¥1,000】ち、しけてんな

:【¥1,000】ほいよ

:儲からないなら日本でいいじゃん

:風情が分からん奴だな……綺麗なものは見たいだろうが


 まぁ、儲けだけを考えるんだったらオーストラリア政府に差し引かれる金額を考えても、普通に日本でやっていた方がいいだろう。ただ、世界中のダンジョンを攻略するってのが楽しいんじゃないか。


「普段は全く読めてない海外の兄貴たちからのコメントもちょっと見てみようかなって思いましたけど、普通にダンジョン探索しながらじゃ読めないのでやめます。アーカイブのコメント欄に残してくれたら読めるんだけどね」


 ダンジョンの手続きは済ませているので、さっさとダンジョンに踏み込んでいこう。薄暗いダンジョンに入る時はヘッドライトなんかを持っていると足元の確認なんかもできていい感じなんだけど……ニューカッスルダンジョンに来て星空を遮るような光を持ってくるなんてありえないな。


「おぉ……空で光っているのは水晶なので星座とかはありませんけど、滅茶苦茶綺麗ですね。きっと日本の都市も光を消したらこんな風景なんでしょうね」


 東京はずっと明るくて星なんてまともに見ることもできないけど、こうやってダンジョンで見る星空も中々いいものじゃないか。


:綺麗

:カメラが高性能だから良く見える

:やっぱりいいね

:こういう星空になにも感じることが無いような人間にはなりたくない

:社畜になれば全てが無価値に感じられるようになるぞ

:休んでくれ


「あ、今更言うのもなんですけど……このダンジョンは星空が綺麗ですけど、出てくるモンスターはゴースト系が多いので苦手な人は注意してくださいね」


:は?

:【¥50,000】今日は楽しかったわ、ほなまた

:じゃあね

:速攻で逃げる奴いて草

:【¥10,000】リタイアで

:流石にお化けは怖いかなって……

:ガチでリアルのお化けは駄目だろ

:ホラゲーじゃなくて現実なんだよな

:如月君が殴って倒せるんだから怖くないだろ


 ゴースト系はねぇ……マジで人によって好き嫌いが出るからね。俺はそこまで気にしないタイプだけど、苦手な人はガチで無理だと思う。だって海外のダンジョンのはずなのに、おどろおどろしい感じのモンスターが多めだもん。海外のダンジョンなんだから、もっとびっくりさせることを念頭に置いたようなゴースト系にしてくれよって思うけど、戦う側からするとおどろおどろしい方が楽なんだな……だって消し飛ばせばいいだけだし。

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