第155話
「鎌倉ダンジョン……実は俺も深層まで潜ったことが無いんですよね」
「え?」
:草
:衝撃の真実から始まる配信
:えぇ……
:タイトルに最下層まで攻略するって書いてあるのに?
:流石に笑った
:初手でぶっ飛んでて草
いやぁ……住んでる場所から近いダンジョンって逆に挑戦するのが後回しになるんですよね。後でやればいいやって放置していたものが一番最後になる感じ、わかる?
「鎌倉ダンジョンがどういう感じのダンジョンかは知ってますよ。婆ちゃんが教えてくれましたし」
「それも調べれば普通に出てくるけどね」
そうなんだよなぁ……鎌倉ダンジョンって最上層から深層まで一切ダンジョンの環境が様変わりしない感じのダンジョンだから、ネットで調べればいくらでも情報は出てくるんだよ。
「対策として色々と持ってきたよ。水とか、水とか水とか」
「水ばっかりですねぇ……まぁ、そういうダンジョンなんですけど」
:どういうダンジョンだよ
:なんか黒い砂の砂漠じゃなかった
:そう
:黒い砂ってなんだよ
:知らん
:【¥10,000】水代
:水道代高くね?
:水道水ではないだろ
鎌倉ダンジョンは、学会では黒い砂と書いて『
「はっきり言って、ダンジョンのモンスターは全然強くないです、はい」
「鎌倉ダンジョンってそんなに難易度高くないんだ」
「砂漠なので道に迷うくらいです」
「それの方が大問題じゃない!?」
確かに、砂漠で遭難するって滅茶苦茶大変なことだと思うけど、式神を使えばそれくらいはなんとかなる。だからそこまで心配してくれなくてもいいのだ。
「で、具体的なことなんてなにも考えてないんですけど……鎌倉ダンジョンは最高到達階層が70なので、取り敢えず最下層が80ぐらいであることを想定しています」
「最高到達階層からプラス10層ってことね」
「はい……今回は完全制覇を目指すので、1階層からゆっくりと下っていくって形で……長時間の配信になると思いますので、付いて来ようとする方は水分補給やトイレなどを忘れずに」
:おけ
:まぁ、休み休み見るわ
:頑張れー
:これで如月君に攻略されたダンジョンに新たな1ページが
:アサガオちゃんはついに深層の攻略に参戦やね
:これでアサガオちゃんも一気にSランクかな?
ありえるだろうな。俺と一緒であることを加味しても、朝川さんが深層の最下層まで辿り着いたら多分……Aから一気にSまで上がれると思う。つまり……EX以外での最高到達点。
「私が目標にしてるのは司君と同じ場所だから、EXになるまで満足しないよ!」
:草
:意欲は認めるけどなぁ
:流石に相手が悪くないか?
:ちょっとねぇ……
:最近は深層でもそこそこ戦えるようになってるんだからEXも行けるのでは?
:そこそこじゃ駄目なんだよ
「そうだよ! そこそこじゃEXにはなれないの!」
おぉ……朝川さんのその向上心は素晴らしいものだと思うぞ。
「では、出発しますよ」
1階層に通じる階段で喋ってたんだけど、このダンジョンも結構人がいないな……もしかして鎌倉の近辺に住んでいる人も渋谷ダンジョンまで行っているのだろうか。本当だとしたら、渋谷ダンジョンが人で賑わい過ぎている理由もわかるというものだ。
「ごー!」
俺の考えていることな関係ないと、朝川さんは黒髪を風になびかせながら走って砂漠に向かって行った。ああいう元気さは見習いたいよね……同い年なのに俺はくたびれたおっさんみたいになってるもん。
階段を降り切って目の前に広がるのは……真っ黒の砂によってできた地面と、ひたすらに降り注いでくる魔石の光。
:マジで真っ黒だ
:【¥1,000】楽しみ
:【¥4,000】鎌倉ダンジョンは結構楽しいぞ
:鎌倉ダンジョンって広くて気持ちいいんだよね
:最上層ぐらいは遊ぶのに最適な場所ではある
:ダンジョンで遊ぶな
「いえ、鎌倉ダンジョンの1階層はほとんどモンスターが出現しないことで有名ですから、遊びたくなる気持ちはわかりますよ」
一応、存在しない訳ではないんだが……本当に極少数しか存在しないらしく、結構遊び目的で鎌倉ダンジョンの1階層に来る人がいるとか、いないとか。
「鳥取砂丘で走り回りたくなるのと一緒ですね」
:そうか?
:そうかも
:【¥6,000】鳥取砂丘おいで
:【¥1,000】鳥取はいいぞ
:鳥取県ってダンジョンあったっけ?
:ない
:あ
:そら如月君も行きませんわ
失礼な……まるで人がダンジョンにしか興味のない人間みたいじゃないですか。鳥取は行ったことないですけど。
「うへぇ……魔力を乱反射するって本当なんだね」
「え……なにしてるんですか?」
先に走って行ったと思った朝川さんは、どこから取り出しのか知らないけどサングラスをかけた状態でこちらに向かって歩いて来た。確かに空から太陽のように魔石が光輝いているけど、サングラスが必要になるほどかって言うとそうでもないと思うけど。
「魔力が地面に乱反射して、ちょっと眩しいの」
「……あぁ! 俺、魔力なんて視認できないのでわかんないです」
:そうだった
:アサガオちゃん弱体化!?
:【¥300】
:どうすんの?
:【¥10,000】眼科代
魔力が砂に乱反射しているってことは、アサガオにとってこの砂漠は太陽光を反射する鏡の上みたいなもんか。そりゃあ眩しいだろうな……そんな場所の上を歩いていたら。おまけに、ダンジョン内には魔力が充満している訳だから。
「こんな状態でもモンスターに魔法使われたら酔っちゃうよ」
「酔っちゃう……え、酔っちゃう?」
:如月君の方が困惑してて草
:珍しいな
:普段は如月君が常識を裏切る側なのに
いや、流石に魔力を視認することができるなんて特異体質のことまで100%把握するのは無理だよ。取り敢えず朝川さんは、サングラスをしていればまだマシらしいが……まさか1階層から躓く要素があるとは思わなかった。
「普段より視界が悪くなるかもしれないけど、魔法を使用するには関係ないから安心してね」
「だ、大丈夫なんですよね?」
「大丈夫だよ! 大船に乗った気持ちでいてね!」
乗り物酔いしてる人間の言葉とかどこまで信用できるかって話だっけ、これ?
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