第151話
「今日は会社の資金調達に行きます」
:資金調達(ダンジョン)
:銀行じゃなくて?
:ダンジョンは銀行みたいなものでしょ
:【¥1,000】配信してて偉い
:ダンジョンでの売り上げって会社の売り上げに入ってるのか
一応、ダンジョン配信で生計を立てていく会社だからね……ダンジョン内での報酬も基本的には会社の売り上げになる訳で。こうやって配信していればちゃんとダンジョン配信って形にもなるし、そこで投げ銭してもらったり、月額会員になってくれる人が増えれば更に会社の利益になる。いいことばかりだな。
「今回は攻略って言うか、効率よく魔石を稼ぐ方法ですね。単純に多く手に入れば多く金になるのが魔石ですし」
:発電効率がいい深層の魔石をガンガン稼いでくれる人がいるんだから、そりゃあ輸出もできるよな
:魔石の輸出な……個人でやるのは滅茶苦茶大変だけど、国を挟むと途端に楽になるのは権力って感じ
:いや、外国のインフラと取引するなら素直に国挟んでおいた方が後腐れなくていいぞ
:【¥5,000】魔石換金
:勝手にコメント欄で換金するな
魔石を効率よく稼ぐ方法……まるでゲームの攻略動画のようなタイトルだが、実際にそんな方法があるのかと言うと……実に簡単な方法だが存在する。
まず、魔石はモンスターが持つ魔力を結晶なのだから、魔石を大量に手に入れるにはモンスターを大量に倒さなければならない。モンスターの種類によって純度、大きさ、エネルギー変換効率が変わり、基本的にはより深い場所に存在するモンスターの方が全ての価値が高くなる。
「効率よく魔石を稼ぐ方法ですが、結論から言うと『自分の実力に合った場所で戦うこと』です。なにを当たり前のことをと思っているかもしれませんが、結局これが一番です」
:つまり?
:どういうこと?
:強い敵ならなんでもいいって訳じゃないってことね
:確かにね
「当然、モンスターの出現頻度とか色々と前提条件はありますが……10秒で1体倒せて100円で換金できる魔石を持つモンスターと、1分で1体倒せて600円で換金できる魔石を持つモンスターの効率は、同じです。だからどちらを狙おうと変わりません」
:せやな
:ここまでは算数
:【¥1,100】合わせて1100円です
まぁ、10秒で倒せるモンスターが5体ずつしか湧かないかもしれないし、1体なら10秒で倒せても5体いたら1分かかる可能性もある。そういう細かいことを置いておくとしても、さっき例に出した100円の魔石を持つモンスターと600円の魔石を持つモンスターは同程度の価値ということになる。
「でも、さっき言った10秒で倒せて100円のモンスターなら継続して600体倒せるけど、1分で倒せて600円のモンスターは50体しか倒せないとしたら?」
単純に計算すると効率は半減する。モンスターの持つ魔石の価値は一緒だとしても、それを狩ろうとする探索者は人間なんだ。ゲームのように機械的に効率よく倒せるわけじゃない。
:なるほど?
:よくわからん
:取り合えず簡単にまとめて
:【¥500】
:【¥10,000】参考にするわ
「簡単にまとめる? えー……無理して強い相手と戦わず、格下相手にイキリましょう」
これだろ。
:なんか違う
:イキリましょうはいらなかった
:継戦が大事ってこと?
:まぁ、モンスターによっては大量に出てきたりするからそれにもよると思うけど
:で、如月君はどうするの?
「俺は61階層でワーム狩りですかね。あそこは結構ワームが湧いてくるし、弱いので」
楽して稼ぎたい時の渋谷ダンジョンは61階層がおすすめ。ワームは弱い癖にちゃんといい感じの魔石を持っている。しかも、数もそこそこ多くて稼ぎやすい。
「欠点はたまに鮫が出てくることや、他の探索者がそれなりに来ることですね」
:それなりに来るのか
:他の深層に比べてら渋谷ダンジョンの深層は人が多いってだけだろ
:実際には殆どいないと思うけどね
:最近はアサガオちゃんがよく遊んでる階層だよ
ま、欠点と言ったが鮫だって滅茶苦茶強いって訳でもないし、探索者だって結構通り過ぎて他の階層に行く人が多いので関係ない。
色々と雑談しながら深層までやってきたが……今日は珍しく誰もいない。平日の昼間を狙ってきたから人が少ないのは当たり前なんだけども。
「『貴人』」
『呼ばれました!』
:うわ出た
:【¥100】
:【¥1,000】貴人のギャランティ
:やっす
:【¥50,000】如月君のギャランティ
:たっか
:格差がすごいな
貴人を召喚するのと同時にワームが1体地中から飛び出してきたが、既に戦闘態勢に移っていた貴人の蹴りがワームの顎にクリーンヒットして吹き飛んだ。
『はっ!』
宙を舞うワームに手を向けた貴人はにっこりと笑みを浮かべながらその手を握り締めると、ワームが肉を握り潰すような音と共に弾け飛び、魔石だけが貴人の掌に収まった。
『ふふん、どうですか?』
「おー……魔石まで集めてくれるなら丁度いいや」
なんか知らないけど今日は張り切っているみたいだし、俺はだらけながらただ見てるだけにしようかな。
:式神の殺意高すぎる
:実は貴人? とかいう式神初見なんだけど、美人ですね
:残念をつけろ
:草
:【¥10,000】かっこいいぞ貴人ちゃん
:【¥1,000】やっぱり如月君のグッズは式神を描いたタオルとかにしよう
:扇子がいいと思うな
:センスいいな、扇子だけに
:は?
『ふっふっふ……ワームの相手ならドンと来い! 荒稼ぎしますよ!』
「頑張れー……『白虎』」
俺の背後からぬるりと現れた白虎を見て、貴人は目を鋭くした。どうせ、自分だけで済むのになんで白虎を召喚したんだとか思っているんだろうけど……ワームって多きときは10体ぐらい同時に出てきたりするから、貴人1人だと流石に足りないだろ……多分。
「『火車』」
貴人から受け取った魔石を火車の荷台に放り投げる。取り敢えず……2時間ぐらいこのまま放置するかな……あ、配信の方も放置って名前つけとこう。
如月君ch:現在放置中
:ゲームかな?
:草
:おいおいおい
:ダンジョン配信中なのに放置中で草
:オンラインゲームのノリで金稼いで放置するよな
:マジでお前はなにを目指しているんだ
なにを目指してるって……そんなこと言われても別になにも目指してないけど。
敢えて言うなら……会社の資金集め?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます