第135話
「生意気なこと考えててすいませんでした。俺、そろそろマジで深層も行けるんじゃねーのかなーとか思ってました」
:反省パンダ
:アサガオちゃんの圧倒的な実力を見て謝罪し始めるパンダ草
:パンダ、お前ちょっと笑ってるだろwww
:本当にちょっと笑ってて草
:もっと反省してろお前
パンダさぁ……まぁ、俺の想定以上に朝川さんが強くなっているのは事実だけど、まさかあの象を一撃で倒せるとはねぇ……確かに他の4人とは格が違うよな。現状ではあるけど、マジで朝川さんは4人と比べたら圧倒的に強いから、中層最強クラスの象程度ならワンパン出来てもおかしくはないんだけどね。
堂林さんは反省しましたとか言いながらちょっと笑ってるし、蘆谷さんと天王寺さんは朝川さんが強すぎて視聴者さんたちと一緒になって「これだから深層探索者は」なんて言っている。そんな中、宮本さんは呆れたような笑みを口に浮かべながらも……目が全く笑っていない。多分だけど、宮本さんは朝川さんに対してライバル意識のようなものを持っているんだと思う。宮本さんは生半可な気持ちでダンジョンに潜っている訳ではない、ということだろうな。
「さぁ、取り敢えず先に進みますか。まだここは中層ですから、ここから先が本番ですよ」
「え、まだ本番じゃなかったの?」
「そもそも最初から下層行くって言ってたじゃないですか」
まぁ、俺の予想だと単体であの象より強い奴なんて早々出てこないと思うけどね。実際、渋谷ダンジョンだってワイバーンより強い下層のモンスターなんて数えるほどしかいないし。対応が面倒くさい奴は確かに滅茶苦茶増えるけど、単純な力勝負で言えばワイバーンや象より強いなんてそこまでいない。いると言えばいるんだけどね。
再び堂林さんを先頭にしてダンジョンを歩き、ようやく下層へと辿り着いた。富山ダンジョンは上層、中層、下層で全くダンジョンの見た目は変わらず、ただただ同じような光景が続いていく。変わるのは、モンスターの強さと雨風の強さだけだ。今回は最高品質の風除けのストールを巻いているので、たとえ深層に行こうと大した影響はないだろうが。
「うぉぉぉぉぉ!? めっちゃ数多いぞ!」
「くぅっ!? そっち何匹かいった!」
「『影法師』!」
下層に辿り着いた堂林さんたちに襲い掛かったのは、パッと見ただけで100匹以上の群れになっているコウモリのようなモンスター。コウモリとは言ったが、1匹の大きさが明らかに50センチぐらいあるので、滅茶苦茶デカくて滅茶苦茶多い。
ガン盾で槍をチクチクする堂林さん、魔法が使えない天王寺さんと宮本さん……そして、近距離まで近づかれるとなんともしようがなくなる蘆谷さん。どう考えても大量殲滅をするには手が足りないだろう。
:キモイ
:怖いだろ
:コウモリって単体で見ると可愛いのに、なんで飛んでるとキモいんだろう
:それはお前だけだ、コウモリはなにしててもかわいい
:モンスターのコウモリはキモいだろ
:当たり前だろ
天王寺さんと宮本さんがひたすらに武器をぶん回してなんとか頑張っているが、撃ち漏らしが後方の蘆谷さんの方まで殺到している。その対処法として、影法師を召喚して自身の盾にしているようだが……限界そうだな。
「どうする? 助ける?」
「いえ、流石にまだ早いでしょう。これくらい切り抜けれなければ……ここから先をどうやって攻略するんですか」
ソロで下層が攻略できないのは、俺は別にいいと思っている。そもそも探索者協会はソロでの攻略を推奨していないし、下層以降のような危険度が高くなる場所で好き好んでソロになろうとする奴は馬鹿だと思う。だけど……4人ですらこれが乗り越えられないならこの先で戦うのは無理だ。この程度ならば少なくとも、さっきの象のように下層最強クラスのモンスター……渋谷ダンジョンで言う所のオルトロスみたいな奴が出てきたら容易く全滅するだろう。
そうならないように俺は鍛えてきたつもりだが……敵の大量殲滅は中々難しいからな。タイミングやモンスターの行動にもよるけど。可能性がありそうなのは、やはり蘆谷さんだろう。
「僕が、なんとかしないと!」
:お?
:かっこいいぞ!
:魔法でなんとかしてくれ!
:かっこいい魔法頼む
ここは蘆谷さんが逆転の一手を打たなければならない。大量殲滅には魔法がつきものだ。
3匹がこちらに向かってきたが、俺と朝川さんが同時に魔法を放ったら余波で更に10匹ぐらい死んだ。
:なにしてんねんwwww
:カメラマン強すぎて草
:一気に10匹ぐらい殺さなかった?
:カメラマンと助手さえいればいいんじゃないかな?
:カメラマンはあくまでカメラマンだから
:カメラマン(カメラをちゃんと構えているとは言っていない)
蘆谷さんが弓を構えながら影法師を3体使ってなんとか自分を守っているのだが……いつの間に影法師を3体も出せるようになったのだろうか? 俺が知っていたのは2体までだったんだけど……成長してるのかな。
:ちなみに如月君だったらこの群れどうする?
:魔法でぶっぱだろ
:如月君に聞いたってなんの解決にもならないぞ
:草
:信用が無さ過ぎる
:ある意味は信用があるだろ、だってEXなんだから
「俺ですか……まぁ、真面目にやるなら魔力を放ってそこに後から魔力をぶつけて大爆発を起こすとか?」
「そんな器用なことできるの?」
「器用ですか? 速度は調整しないといけないですけど、案外簡単にできますよ」
元々は自爆技として使うために俺が勝手に編み出した魔法なんだけど、別に両手で揃えてぶつけるぐらいだったら放り投げてぶつけた方が効率いいじゃんと思ったんだけど。
:真面目に?
:不真面目な攻略とかあるの?
:なんだろう、嫌な予感がするぞ
:既に真面目ではなくないか?
:すくなくとも、魔力を爆発させるのは真面目な対処法ではないと思うからダメ
「不真面目に攻略するなら当然、十二天将でも召喚して適当に殲滅させて俺は観察してるだけですよ」
「いつものことじゃない?」
「そんなことないです。ないよね?」
:うーん……多分
:そんなことない、よ?
:いや、そんなことあるだろ
:アサガオちゃんにも疑われていて涙が出るな
いや、俺の中では割と真面目な攻略の一つなんだけど、多分他の人からみたら滅茶苦茶不真面目な攻略法だろうなと想像したんだけど、そもそもいつも通りじゃんって返ってくるとは思わなかった。
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