第132話
中層に入ると、少し緊張した雰囲気がパーティーにも出てくるが……宮本さんは相も変わらず舞い踊るように斧を振り回してモンスターを殺しまわっている。やっぱり、宮本さんだけは頭一つ抜けている……と言うか、下層探索に慣れている実力派みたいな動きをしている。
堂林さんたちは流石に中層で探索していた時間がそこまで長くなかったからか、やはりそれなりに緊張した動きになってしまう。今の3人なら、中層のモンスターなんて欠伸しながらでも倒せると思うけど……まぁ、適度な緊張感ってのは別に悪いことじゃないからいいのかな?
:カナコンちゃん……いつの間にか怪物になってないか?
:まだEXとかそんな明らかな化け物って感じにはなってないけど、ちょっと片鱗が見え隠れしていると言うか……数ヵ月前とは別人みたいな強さしてる
:流石に、如月君が直で見て才能があると思った人だよ
:うーん……結局、如月君が自分からコラボするって言ったのカナコンちゃんだけだからな
:それだけ才能が凄まじかったんだろ
:惚れ込んだとも言う
「惚れ込んだ? 司君、カナコンちゃんに惚れ込んだの?」
「え? あぁ……いい腕だなぁとは思ってましたけど」
「腕フェチ!?」
「そっちじゃない」
:草
:腕フェチ疑惑発生してて草
:おいおい如月君はカナコンちゃんの腕よりおっぱい派だぞ
:嘘を教えるなw
:でも如月君は巨乳派だから
:は? アサガオちゃんも充分に巨乳だが?
:でもアサガオちゃんは胸より先に足に目が行くから
セクハラコメント共め……一斉にBANするぞこの野郎。
「ひぃん!?」
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
俺と朝川さんがよくわからないやり取りをしている間に、堂林さんがモンスターの攻撃を盾で防いだ衝撃で転がっていた。多分、風と同時に攻撃されて踏ん張れなかったとかなんだろうけど、もうちょっと気張れ。堂林さんに攻撃したモンスターはデカいダンゴムシみたいな見た目をしていたが……俺が視線を向けた時には、既に蘆谷さんの魔法で8つに分かれていた。
「いや、無理だって……デカい虫とかマジで苦手で、特に足が多い奴はマジで苦手なんだって」
「男なんだからそんなこと言わない! 虫だって殴れば倒せるんだから!」
:うわ強い
:美美香ちゃん、考え方が脳筋なのよ
:あれな、幽霊を殴れるホラーゲームはホラーゲームじゃない理論
:でもデカいダンゴムシは普通にキモイぞ
:足が沢山あるのがいかんわ……デカい百足よりはマシかもしれないけど
:この辺にぃ、デカい百足を召喚できる式神使いがいるらしいっすよ?
:如月君……
:大百足w
なんだよ、大百足なんて昔から存在する有名な存在だろ? 前進することしかできない習性から、戦国時代の武将からは武勇の象徴とすらされていたぐらいの存在なんだから。まぁ、実際には毒を持ってたりするのでみんなが大嫌いな黒光りする誰かさんよりよっぽど害虫なんだけども。
「それにしてもダンゴムシ……この強風の中ダンゴムシか」
よくわからん組み合わせだよな。
富山ダンジョンは1階層ごとの天井が見えないぐらいに高い。だからどこから雨が降ってるのかもわからないんだけど……それ以上に背の高い樹なんてない、岩山みたいな地形の方がキツイ。常に山を登ってるような気分がする……けど、実際にはかなり平坦らしい。よくわからん。
雨が降っているだけあってダンジョン内もそれなりに暗いし、風も相まって気を付けないと転びそうだ。まぁ、強風は風除けでなんとかしてるけど。
:なんでやダンゴムシ可愛いだろ
:小さいならな?
:人間より大きいダンゴムシはただキモいだけだろ
:それはそう
:そもそも虫なんて全般そうだろ
虫に関しては人によって好き嫌い別れるよな……普段から触っている人は一切気にならないだろうし、逆に虫なんて大人になってから触らなくなると、蝉ですら気持ち悪く感じると思うし。
「虫が苦手な人はダンジョン潜りまくるといいですよ。慣れてきます」
「それ、ただ嫌いな感情が麻痺してるだけだよね」
:せやね
:むりむり
:俺やっぱりダンジョン探索者目指すのやめる
:そもそも目指してないだろ
:デカい虫のモンスターとか結構いるからな
:マジで生物的な形をしたモンスターキツイ
:モンスターの形見て生理的にキツイとか思ってる奴はダンジョンまともに潜ってないだろ、そんなの気にならなくなってくるから
:だからそれ麻痺してるだけだよね?
:草
:無限ループ
でも、実際ダンジョン潜ってるとそんなモンスターばかりなので今更ダンゴムシぐらいどうでもよくなってくるものだ。俺なんて海外のダンジョン行った時に人間よりデカいバッタの群れに出会ったけど、気持ち悪いとか以前に単純な質量で殺されるかと思ったぞ。なんでダンジョン内でも群れてんだよ。
まぁ、堂林さんとか渋谷ダンジョンしかまともに潜ったことないって言うし、まだまだ経験が足りないんだろうな。そう考えると、虫とか獣ばっかりの那覇ダンジョンとかいかなくてよかった……のか?
「やぁっ!」
:ひぇ
:怖い
:やっぱりカナコンちゃん怖くなった
:前はナンパしたらついてきてくれそうなぐらい弱気な子だったのに……
:いや、前から斧ぶんぶん振ってただろ
:確かに
:納得するな
:でも、斧一振りで大岩を真っ二つにするような力はなかったぞ
:確実にゴリラへの道を歩いている……如月君のせいだな
そこに関しては俺のせいです。でも、ダンジョン探索者なんてそんなもんだから、女性配信者にガチ恋とかするのはやめておきましょう。基本的にあんな人ばっかりですよ。
宮本さん斧の一振りで両断した大岩の向こう側には、同様に両断された蛇に羽が生えたようなモンスターが転がっていた。蛇に羽が生えたらドラゴンとかよく言うけど、本当に蛇そのままに鳥の羽が生えているとただのキモイ蛇にしかならないよな。
「そろそろ中層も折り返しですね、気を付けて進みましょう」
「斧振り回してる人が言うんだ……」
「パンダ、カナコンさんに失礼でしょ」
「俺には失礼だと思わないのかなぁ、美美香ちゃん?」
:完全に舐められてる……
:パンダのカーストが最下位なのに涙を禁じ得ない
:流石に草
:かわいそうだとは誰も思ってないの草生えるんだけど
:だってパンダだし
:女相手にも尻に敷かれてるのが似合ってるでしょ?
:まぁ、如月君みたいな自由奔放で誰の手にも負えないような人間ではないよな
しれっと人のことを誰にも縛れない人みたいな扱いをするな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます