第117話
「視聴者方も、これで岸谷さんと美美香さんの戦闘方法を理解できたと思います」
:3割くらい?
:あんまり理解できてなくて草
:ダガーから変なの飛ばして攻撃する人と、魔力の矢を撃つ変な人
:端的だけど普通に酷いの草
:能力だけならマジで中層探索者でもおかしくないよな
:なんでランクGなの?
:初心者だからじゃない?
「じゃあ、同時に見えてきた欠点を教えましょうか」
今の動きを見るだけで、2人がどうしてランクGのままで止まっているのかがわかった。まぁ、蘆屋さんの方がちょっと本人だけではどうしようもない部類の話だと思うけど。
「まず、美美香さん」
「はい!」
「うん……魔法、使えないんですよね?」
「え!? なんでわかったんですか!?」
だろうと思った。
:どういうこと?
:わからん
:如月君の目にはなにが見えているのかさっぱりわからん
「カナコンさんと似たような感じですね……魔力を放出するのは得意だけど、それを形にするのが大の苦手……魔法を扱う上でもっとも必要なイメージ力が欠如しているんだと思います」
魔法は自身の魔力を使って起こす奇跡のようなものだ。ただし、ある程度の指向性を自分の頭で考えてそれを起こさなければならない。だから、同時並行で物事を考えるのが苦手な人は、魔法を扱うことが苦手だとされている。ただ、美美香さんやカナコンさんのように全く使えない、というのはまた本人の素質の問題だと思うが。
「要するに、今の美美香さんは魔力を無形のまま放っているだけなので……銃弾を銃に入れずに、そのまま筋力だけで投げてるようなものですね。それでも、ゴブリンの頭を破裂させるぐらい威力が出せるんですから大したものですけど」
:ゴリラじゃないか
:草
:また魔法使えない系ゴリラか
:おい、カナコンちゃんのこと両手斧ブンブンゴリラって言った奴誰だ
:お前だよ
:ダンジョン探索者って魔法使えないとなれないんじゃないの? 結局ゴリラ力が高い奴がダンジョンに適応するの?
:最終的にものを言うのは自分の筋力だぞ
:やっぱりゴリラじゃないか
「改善点としては……カナコンさんと同様に、魔力が通しやすい武器を用意すること。それと、遠距離で魔力を飛ばすのを諦めて、近距離で最大威力を叩き込む方が強いです」
「つまり?」
「近づいて殴れ」
「おっけー!」
:草
:超速理解
:言葉噛み砕くの上手くて草
:それでいいのか
:おいおいおいやっぱりゴリラじゃないか
:ゴリラ好きだな
うん……これ以外に言うことが無かった。後は魔力の循環が下手だから、みたいな話もあるんだけど……それに関してはまだ初心者だから仕方ない。それを教えるために今日は一緒に潜ってる訳だからな。
「じゃあ次は岸谷さん」
「は、はい!」
「……近接武器、致命的に扱えないタイプですね?」
「わ、わかります?」
足運びとか、視線の動きとか……色々と得られる情報は多かったけど……多分、マジで近接武器を扱うのが苦手なんだと思う。だからこそ弓で戦っているんだろうけど。
「それ以上に、恐らくですけど……敵に近づかれたらなにもできないんですよね?」
「はい……その、なんとなく近い所の狙いがつけられなくて」
:普通逆じゃね?
:でも魔力の矢だし
:矢も無しに弓を撃つ奴の感覚なんてわからん
:そういうもんじゃないの?
魔力の矢、とは言っているが……実態はそういう形の魔法を弓から放っているだけだ。つまり、彼は矢を持たずに弓の弦を引くという独特なルーティンを行うことで魔法を扱っている訳だ。風を放ってゴブリンを真っ二つにするぐらいなら、俺も素手で放てるからな。つまり、本質的に彼は魔法をメインとした神代さんのような戦い方をする人だ。
美美香さんは魔法を放つイメージが足りないから魔法が使えないが、蘆屋さんは魔法を放つイメージを弓で行っている訳だ。かなり独特なルーティンなのでアドバイスしにくいが……言えることはある。
「まず、敵が近づいて来た時のことなんて忘れてください」
「え!?」
「そもそも、貴方の戦闘スタイルは単独で戦うことを想定されていません。無理です」
:無理ですw
:確かに弓を引いてそこから矢を放つって動作には援護必須だよな
:身体強化して高速で動けば問題ないのでは?
:それができたら近接戦闘できるわ
:捨てちゃうのか
「俺でも堂々さんでも誰でもいいので、ダンジョンに潜る時はツーマンセル以上で潜るのがいいです。その為の箱なんですから」
「……堂々さん、お願いできますか?」
「俺? 社長じゃなくて?」
「いえ、社長は……なんでもできるじゃないですか」
いや……そうなんだけども。
:うん
:草
:せやな
:そら、如月君は弓での援護とか必要ないからな
:必要だったら式神作ればいいんだぞ
:ワンマンアーミーがよぉ
:やっぱり如月君は1人でいいんじゃないかな?
:なんで神代さんとか普通にソロで潜ってるの?
:EXだから
:その言葉便利か?
まぁ、蘆屋さんが選んだことなら俺からはなにも言わないけど……ちょっとショック。
「後は2人とも基礎的な部分です。他には魔力の循環とかありますけど……あれはまず魔力を身体の内側で回す感覚が重要なので、ちょっと難しいかもしれませんね。そこはアサガオさんに見て貰ってください」
「え、社長じゃなくてアサガオちゃんなの?」
「はい。あの人、魔力が見える特異体質なので、そこら辺は感覚じゃなくて言葉で説明してくれると思います」
普通の探索者はあくまで感覚で回してるけど、朝川さんはそれを視認して意図的に回してるから、そこら辺は俺なんかよりよっぽど上手く教えてくれると思う。
:魔力が見えるってチートじゃない?
:そうだよ
:アサガオちゃんが持ってるやばい能力の1つだぞ
:どれくらいやばいって、如月君ですら見えないんだよね
:アサガオちゃんって実はガチだよね
:いや、どう見てもガチ勢探索者だろ
:高卒でそのまま専業探索者になるのはガチすぎるだろ
「じゃあ、次は堂々さんですね」
「おぉ……俺も?」
「はい。まだ無茶はさせないので大丈夫ですよ」
「そっか」
:まだ、な
:騙されてて草
:いや、パンダお前ニブチンか?
:草
:視聴者の方が気が付いてるのは流石に笑うんよ
正直、堂林さんの戦闘スタイルを考えると朝川さんより無茶させても大丈夫だと思う。防御力だけなら、かなりのものだ。まぁ……それでガン盾して動かないのはどうなのかと思わないでもないけど。この人もソロで潜る戦闘スタイルしてないんだよなぁ……そういう意味でも、蘆屋さんとは相性いいかも。
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