第101話
「……見えてますか?」
:微妙
:如月君ははっきり見えるけど、ダンジョンは見えない
:待ってマジで無理
:暗所恐怖症にはきついだろ
:恐怖症じゃなくてもキツイって
:暗所恐怖症と閉所恐怖症はそもそもダンジョン探索者になれないからヨシ!
:配信だからヨシじゃないが?
45階層までやってきたが、もう既に俺が感知できる光は、俺の持っている刀だけ。ここまで来ると人間の視力では数十センチ先まで見通すこともできないだろう。刀を蛍光灯のように光らせて探索しているけど、これでも少し頼りなくなってきた。
天后の能力によって水圧の影響を受けていないが、なんの対策もせずにここに立っていたらどれくらいの水圧に襲われているのか考えられない。一般的に水深が200メートルを超えると、太陽光は海面の0.1%になると言われている。ということは、今いるこの45階層は最低でも20気圧はあるということだ。数字にすると大体20000ヘクトパスカル……よくわからないな。とは言え、人間は素潜りの世界記録で100メートルを超えているのもあるし、実は案外行けるのではないかと思ったけど……それは人間の中でも一部の人だけか。
『……映っているのでしょうか?』
:急に天后さんでてきてびっくりした
:美人の顔がアップで出されて心臓がやばい
:カメラさん美人すぎて草
:カメラさん(水中移動の元凶)
:映ってるぞ
:ちょっと暗いけど天后さんはちゃんと見える
「人の式神にデレデレしてコメント流すのやめてくれませんかね」
:美人に作ったのはお前定期
:いいだろ男なんだから
:こんな暗くて怖い世界でぐらい救いを求めてもいいだろ
:そうだそうだ
:もっと美人映せ!
:如月君がカメラマンになって天后さんを映せ
いや、確かに美人に作ったのは俺だけど……折角身体を作り上げるなら美人に作ってあげたいじゃん? 俺は別に異形の姿でもよかったけど、そこにナニカを降ろしてくるんだから器は綺麗な方がいいかなって……思ったんだけど。
いや、男として美人の方がいいなとは確かに思いもしました。すいません見栄張りました。
そんな風にカメラを調子を見たり、コメントを見ていたりしている間にも沙悟浄は勝手に泳ぎ回ってモンスターを狩っているようだ。俺にはもうこの深海の世界が見えないから、沙悟浄頼りになるんだけど……式神と視界共有とかできないかな。
『できるのではないですか?』
「え、できるの?」
『さぁ……それは貴方様の力の使い方次第だと思われますが……』
ちょっと試してみようかな……流石に真っ暗でなにも見えないのに、沙悟浄があれだけ泳ぎ回っているとは思えないし、もしかしたら視界を共有したら色々と見えるようになるかもしれない。まぁ、俺視点じゃないから使いにくいかもしれないけど。
式神とは脳内で会話することができるから、その応用みたいな形でなんとか視界を……できない、かな?
:なにしてんの?
:さっさと進もうぜ
:如月君が黙ってると怖いからなんか喋って
:深海で黙らないで
:怖いから進もう
:進んだらもっと怖いのでは?
「あ、できた」
いや、ちょっとできてないけど。本当は沙悟浄の視界を共有して見える様にしようと思ってたんだけど、視界を共有じゃなくて視力を共有しているような状態になっている。端的言うならば、俺が沙悟浄の視界と同じ様に周囲を見ることができるようになった訳だ。
正直滅茶苦茶なチート能力のように感じたけど、急に視界に色々な情報が流れ込んできて気持ち悪いし、度数の合っていない眼鏡を無理やりかけているような感覚なので長く維持するのは無理。とは言え、一瞬だけ周囲の状況を把握することはできる。まぁ、想像していたように周囲が明るく見えるって感じではなく、熱源なのか魔力なのかよくわからないものが見えるだけだったけど。
「無理なんで大人しく手探りで進みます。画面は暗いままですが、ちゃんと進みますよ」
:マッピングしないの?
「……俺以外に入ってこれないのにマッピングする必要ありますか? それに、仮にマッピングするとしても、周囲が暗すぎるので正確な地図にできる気がしないんですけど」
マッピングなんて言うけど、ゲームのように規則的なカクカクとしたダンジョンじゃないし、目測で色々と書かないといけないから普通に無理。
沙悟浄の位置は式神として魔力が繋がっているのでなんとなくわかるけど、それ以外はよくわからない。とは言え、沙悟浄の居場所がわかればどこにモンスターがいるのかも大体わかるからいいけど。
「『貴人』」
『お呼びですか、貴方様』
「……うん」
なんか、普通のテンションで出てこられるとそれはそれで調子狂うな。
:うわ出た定期
:定期なのか……
:テンション低いの珍しいぞ
:水中だから?
:そもそもなんで水中なのに貴人さんは無事なんですかね
:式神だからでしょ(適当)
:如月君が平気なんだから式神だって平気でしょ
:その如月君も自分の式神の能力を使って平気になってるんだから、式神の能力使えば平気になるのでは?
『それにしても、随分とヘンテコなダンジョンに来ていますね』
「ヘンテコとか言わないで……え、もしかして見えるの?」
『はい? 周囲ですか? 見えますよ?』
えぇ……君の目どうなってるんだよ。沙悟浄だって魔力を追って移動しているだけなのに、貴人は普通に見えてるのか。でも、視界借りたらまたあの気持ち悪い感覚が出てくるからやめておこう。
「沙悟浄のサポート頼む」
『……あのスイスイ泳ぎ回って三叉戟を振り回している鰐ですか?』
「そう」
『天后、私がこの方を守るから役目変わりなさい』
『あぁ……貴方様、こんな暴走特急女を召喚しなくても……』
:草
:散々言われてて草
:貴人さん、一応は十二天将の頭領ですよね?
:なんでこんなボロクソ言われてんの?
:もしかして、今までの白虎とか青龍とか喋ってなかっただけで貴人のことを内心でボロクソ言っていた可能性が……
うん……君たち、仲良くしなさいね? 一応どっちも俺の式神なんだからさ。
そんで、貴人は我儘言ってないでちゃんと沙悟浄のサポートしろ。俺は天后がいるからもういいの……というか、水中でサポートしてもらうなら絶対に天后がいいから、お前はさっさと沙悟浄の所行け。
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