第95話
「で、結局なにが言いたいんですか?」
「はぁ!? だから他人に迷惑かけたんだからここで謝罪しろって言ってんだよ。頭下げろよEX様が」
「いいですよ。すいませんでした」
:草
:頭軽すぎぃ!
:そら、如月君は別になんとも思ってないからな
:プライドとかないのか?
:プライドがあってもダンジョン攻略できないだろ
:無駄なプライドは持ってないだけだろ
:探索者としての誇りはちゃんと持ってるぞ
いや、別に俺が頭下げたってなにかある訳じゃないし……俺が頭下げたら世界が滅びるとかなら死んでも下げないけど、別にこの人たちが勝手に騒ぐだけでしょ? 勝手にやってればいいんじゃないかな?
「……」
「あの、もういいですか? そろそろ帰りたいんですけど」
「あ、頭下げたぐらいで済むと思ってんのか?」
「いや、謝って頭下げろって言ったの貴方達ですよね?」
:あー
:初めて相手するタイプだったんやろうな
:カスどもさぁ
:そろそろしつこいぞ
:さっさと帰っていいよ如月君
:普通にアイカスの配信通報しておいたわ
学校帰りちょっと寄っただけなんだから、普通に帰りたいな……なにか目的があるんだったらもうちょっと色々と言ってたかもしれないけど、今日はマジでやる気ないから。
「そうやって誤魔化して逃げる気か? そんな軽い謝罪じゃなくて正式な──」
「ん?」
さっきまで気配すら全くなかったモンスターが、急に周囲に湧いて来たな。もしかして……今日は他の探索者が狩りつくしたのかと思ったけど、なんか異常事態でも起きてたかな。しまったな……ぼーっとしてないでもうちょっと疑問に思えばよかった。とは言え、協会が感知していないということは大した脅威じゃないだろう。
そんなことを考えていたら俺と、そしてアイカスさんたちの携帯端末もけたたましいアラーム音を鳴らし始めた。
:びびった
:急にアラーム鳴ったぞ
:どうした?
:渋谷ダンジョンにいる奴はアラーム鳴ってる?
「もしもし?」
『……如月君、今渋谷ダンジョンの中層にいるでしょ』
「いますよ?」
『多分、丁度そこに魔力異常出てきたわよね?』
「……まぁ、多分そうだと思います」
また魔力異常か……いや、頻度的には例年よりは少ないんだっけか? そういう細かい数字は協会の仕事だから俺は殆ど覚えてないんだけど、ニュースでそんな話してた気がする。
『魔力異常値としては+3よ』
「ギリギリ警報が鳴るレベルですか」
『まぁ、それでも一応警報が鳴ってるから……一番近い場所にいた貴方に対処を任せたいのよ』
「いいですよ……そもそも見えてますし」
信濃さんの説明を聞きながらも、俺の視界には頭上を飛び回るよくわからない鳥のようなものが見えている。多分、強さ的に言うと下層レベルで、まだ未熟だった頃の朝川さんが倒していたフロストワイバーンより遥かに弱い。本来なら俺が出るようなモンスターじゃないけど、目の前にいるから仕方ない。
:おー
:出てくる場所悪すぎて草
:目の前にEXがいる場所に出てくるとか終わってて草
:享年数分か
:享年? 享分になってますけども
:草
「お、おい……まだ俺たちの話が──」
あの程度の鳥だったら式神出すまでもなく、魔法でも撃っておけば倒せるだろ。
氷の槍をイメージして頭上に作り出して射出する。細かく狙いをつける必要はないだろう……狙わなくても速度で上回れば回避なんてできないからな。もし当たらなかったら今度は50発ぐらい同時に撃てばいいし。
:グッバイ鳥さん
:悲しいな
:魔力異常終了w
:こんなんでいいのかよ
:EXの前に出てきた奴の方が悪くない?
「……終わりましたよ」
『せめて通話切ってからやってくれない?』
「いや、通話切って数秒後に通話始めるの面倒じゃないですか」
『……解決したってホームページに載せておくわ。ありがとうね』
一件落着。これで渋谷ダンジョンの魔力異常は解決したのだった、と。
「あ、まだいたんですか?」
なんかすごい顔してこっちを見ている人たちがいたけど、まだいたんだ……迷惑配信者なんてやめてさっさと帰ればいいのに。俺は仕事も終わったから本当に帰るぞ……本当は仕事なんてするつもりなかったんだけどな。
:なにも言えなくて草
:これどうすんの?
:アイカス連盟がこれからなにしても、如月君にビビってなにもできなかったって言葉がついてまわるの草
:自業自得では?
:俺だったらさっさと手が出てるから如月君は強い
:やっぱりメンタル最強だろ如月君
:アイカスはさっさとチャネル削除して消えろ?
はー……明日からどうしようかな。渋谷ダンジョンと八王子ダンジョンだけじゃ飽きてくるし、そろそろ視聴者の為とか一回ガン無視して俺の趣味でダンジョン潜る配信でもするかな。配信始めてからはあんまり全国のダンジョン巡れてなくてフラストレーション溜まってるんだよな。
家に帰ってからパソコンの電源を入れて、雑談配信でもしようかと思ったらネット記事にデカデカと俺とアイカス連盟とかいう迷惑配信者が写っているものが出てきた。タイトルとしては「EX探索者・如月司と迷惑配信者が口論!?」だった。いや、口論はしてませんけど。
SNS見ても、結構な人がそれに関して色々と言っているのが見えるけど、なんの責任も持たない適当な落書きなんて興味もないので、普通に雑談配信でもするかな。
「ん……あー、大丈夫ですか?」
:い つ も の
:なんで突発ですぐ雑談配信するの?
:会話する相手いないからやろ
:俺も会話相手いないから助かる
:おーネットの有名人じゃん
:またネットで話題になってる人だ
:こいついつもネット記事に出て来てるよな、最近毎日トップ飾ってるだろ
:良くも悪くも目立つ配信者だからな
「なんですか良くも悪くも目立つって……別に配信者なんですから目立つのは仕方ないじゃないですか」
:いや、お前みたいに目立ってる配信者なんてそう見たことないよ
:配信しかしてないのにな
:テレビとか出てる訳でもない癖に目立ってるよな
:今日は災難でしたね
:アイカス連盟アカウント停止されてて草生えた
え、あの人たちアカウント止められたんだ。迷惑行為を配信してたからかな……それとも、俺が獅子島さんにちょっと文句のメッセージ送ったからかな。いや、多分後者だな……獅子島さんがちゃんと動いてくれたんだろうな。ああいうダンジョン探索者を野放しにしてると問題にしかならないから当然だけど。
:なんで君はいつもトラブルの渦中にいるんですかね?
俺が聞きたいが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます