第81話
「とうちゃーっく!」
「これが77階層に繋がる階段ですね」
以前に札幌ダンジョンの76階層までマッピングしてくれた人が誰かは知らないけど、その時は77階層に繋がるこの階段まで来て帰ったらしい。まぁ、物資が尽きたとか魔力の残量がキツイとか色々と理由はあるんだろうな。
そうすると真に未知な階層は77階層から先の全てだ。深層に入ってからこの76階層に来るまで、出現するモンスターの数が増えたりすることはあっても、ゴーレムの強さはそんなに言うほど変わってるとは思わなかった。数が少ないと婆ちゃんが速攻で蹴りを叩き込むし、数が多くても神代さんが魔力を散らす装甲すらも貫通するような魔法を放つし。
ダンジョン内の環境も大きく変わるような様子はない。いつまでも薄暗い洞窟に、ぼんやりと光るクリスタルが壁から生えているような光景ばかりが続く。想像していたような北海道の寒いダンジョンって感じにはいつまで経ってもならないし、気温的には20度前後って所だ。
「ガッツリ深層を探索するのは本当に久しぶりだなぁ……」
「なんだか楽しそうですね、相沢さん」
「勿論、私だってダンジョン探索するのが好きで探索者やってるところもあるからね」
:かわいい
:深層じゃなきゃかわいい
:可愛いこと言ってるのもテレビで流れてるからな
:草
:まぁ、いつものや
:あんまり気にしてないだろ
「婆ちゃんもいつもよりちょっと張り切ってますし、神代さんも珍しく飽きることなく探索を続けていますから、EXを4人集めたのは正解だったかもしれませんね」
戦力的な話以上に、EXがこんなに集まってダンジョンを探索するという初めての体験が、俺も楽しい。勿論、未知の階層を探索するのは楽しみだけど、それ以上に仲間とワイワイやるのは楽しいのだ。
:如月君も友達はいないけど仲間はいるんやなって
:友達はいないけどwwww
:しれっと友達がいない扱いで草
:事実だろ
:事実だけども
:やめてやれよ
俺には友達がいない煽りなんて効かない。なにせ、朝川さんという本物の友達が俺には存在するのだからな。視聴者の人たちとは違うのだ。
階段を降り切った先の光景は、なんにも変わらず洞窟のまま。ただし……ここ先はマッピングなんて一切されていない場所だ。別れ道も色々と考えながら選択していかないといけない訳だ。
「じゃあ俺、マッピングしてきますよ」
「よろしく頼むね」
「私はガンガン進むよ!」
「あの、道が分からないのガンガン進もうとするのはやめてくださいね?」
マッピングの意味知ってるか?
俺はこの階層全体のマップを作りたい訳じゃなくて、下の階層まで向かう正規の道を発見したいだけなんだが?
全体をマッピングすれば結果的に最短の道を発見することもできるかもしれないけど、神代さんのガンガン進もうはなにも考えていないただの直感頼りだからな。全く信用できる要素が無い。
「じゃあ行くよー! まずは真っすぐ!」
「まぁ、いいか……『
:お?
:始めて見る式神だ
:イケメンキタァ!?
:如月君がイケメン召喚してる
:イケメンは爆発しろ(発作)
『……また、書類仕事ですか主殿?』
「マップ記録して」
『はぁ……わかりました』
白髪長身のイケメンである太裳は、天帝に仕える文官とされる善神である。俺のイメージがふんだんに盛り込まれた姿なので、有能な文官として糸目の長身イケメンである。自分でイメージしておきながら、ちょっと羨ましいので爆発して欲しいと思ってる。
式神としての能力は、貴人とはまた別のサポート系の魔法を得意とする十二天将だが、俺はもっぱら面倒くさい書類を書く時とかに召喚することが多いので、ダンジョンで召喚するのは稀だ。今回はマップを記録してもらうために召喚した。
:仕事押し付けられて可哀そう
:如月君……なんて酷い上司なんだ
:式神を便利に使ってて草
:は? 俺も式神に確定申告して欲しいんだが?
:如月君は確定申告してもらってるのかな
:してもらってるに決まってるだろ
「……また別れ道ですか」
「多いね……まぁ、ここまでもマップがあっただけでこれくらい別れ道あったけど」
全部確認していくと時間がかかりそうで嫌なんだが……こんな複雑な構造をしているから仕方ない。アリススプリングスのダンジョンのように迷路になっていないだけマシだ。
前衛は相沢さんで、後衛に神代さんが来て真ん中に俺と婆ちゃんが布陣すると思っていたんだが……現実は勝手に先行していく神代さんと婆ちゃんの後ろを、俺と相沢さんがマッピングされた地図を見ながら歩いている。あの人たち、自分がどの距離を得意にしているのかよくわかってないだろ。
前方から出てくるゴーレムは、基本的に婆ちゃんが速攻で片付けるし、背後からやってくるようなのは相沢さんが相手をしているので俺は基本的に太裳のマップを見ながら、色々と考えているだけだ。
『ここはさっきと同じ場所ですね』
「本当だ」
別れ道に遭遇する度にダンジョンの地面に色と形が区別できるものを置いて歩いて来たが、いつの間にか途中の道に合流していた。
:真っ直ぐ進んで右に曲がったらここに戻ってくるのか
:じゃあ左は?
:真っ直ぐ進んだ先を左でしょ
:そもそも最初から間違ってたりして
「正解のルートが分かるまでは取り敢えず進むしかないですね」
「いっそのことダンジョンの床を破壊するとか」
「次に来るときにどうやって通ればいいかわからなくなるから嫌です」
「いや、ダンジョン破壊しちゃだめだよ? わからなくなるからとか以前にね?」
まぁ……ダンジョンは勝手に修復するんだから、迷うぐらいなら床を破壊した方が速いのは本当だから……仕方ないことだと思えば。
:ちょっと納得してない顔するな
:最終手段ならとか思ってるだろ
:草
:普通に考えてダンジョン破壊していい訳ないだろ
:破壊してなにが起こるかわかったもんじゃないのに
:それで札幌ダンジョンが崩落したらどうするんだよ
そうか。札幌ダンジョンだって札幌の地下にあるんだから、下手に破壊して地上に影響が出たら大変なんだから破壊したら駄目だな。魔力の影響なのか、どれだけ潜っても星の核にすら近づくことが無いダンジョンだけど、地上に対して影響が一切ないなんてことはないかもしれないしな。
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