第51話
結局、貴人と神代さんが暴れ回りながら階層を進み続け、85階層まで来てしまった。最高到達階層から10個も下だけど、案外大したことは起きずそのままずるずると下までやってきたが、このまま進んでもいいものか。
:対して気にしてないだろうけど、ネットが凄い盛り上がってますよ?
:知ってた
:そらそうよ
:この視聴者数が見えないのか?
:外国語のコメントもいっぱい来てるな
:祭りの開催場所としては最適だ
:この配信が祭りなんだよなぁ
:ダンジョン界隈もとんでもないことになってる
:探索者の総合掲示板もものすごい勢いで加速してるぞ
「……モンスター、いないですね」
「暇だねぇ」
なんか地上はとんでもない騒ぎになっているみたいだけど、こちとら85階層でぶらぶらしているんだから、地上の出来事は自分たちでなんとかしてくれ。まぁ、渋谷ダンジョンが攻略されそうな勢いで進んでいる自覚はあるし、それを配信してることによる社会的な影響も理解はしているが……探索者としては好き勝手に探索するのが楽しいので許してくれぐらいにしか思ってない。なんなら、神代さんはそんなことすら考えてないと思うし。
:どうすんのこれ
:配信してる本人がこれだからな
:興味なさ過ぎて草
:いや草生えん
:翻訳ニキは頑張って
:英語で「どうなってんだこのイカレ探索者たちは」ってコメントは見たぞ
:合ってる
:日本語と大差ないな!
:ヨシ!
:なにを見てヨシって言ったんですか?
イカレ探索者とは失礼な……これでもWDAOで調印したちゃんとしたEX探索者だぞ。アメリカとかのEX探索者だってきっとやってること自体はあんまり変わらないと思うぞ。
:コメント欄から意識的に視線逸らしてるぞ
:こいつ
:知りながら無視してやがる
:質問タイムしようぜ(唐突)
:いいね
:暇なら雑談しよう
:視聴者の頭もイカレた
:知ってた
:元からでしょ
「質問タイム? いいですよ」
こうなればやけくそだ。どんな質問でも答えてやる。
:85階層は気温的にはどれくらい?
:神代璃音のことどう思ってる?
:最強ってマジ?
:式神のこと好き?
:日本最強の配信者になった気分は?
:グローバルだねぇ
:女にモテる?
:モテる訳ねぇだろ
:俺たちだぞ?
:そうだそうだ
「不名誉なコメントは無視させていただきます。誰が俺たちですか」
「あはは! そうだよー視聴者たちとつーくんだと実力も地位も資産も天地の差でしょ」
「ぶっ叩きますよ?」
:あ?
:珍しく如月君と視聴者の意見が合った瞬間である
:許せねぇ
:マジかよ許せねぇ
:美女だからって言っていいことと悪いことがあるんだぞ
:もっと罵倒してくれ
:変態混ざってるぞ
なんでナチュラルに視聴者を煽るのかこの人は。そういう芸風は自分のチャンネルでやってくれ……これで俺の配信に低評価ついたらどうしてくれるんだよ。
「じゃあ適当に質問ですね……85階層の気温は……25度前後って所ですかね。動いてたら普通に快適ぐらいです」
「もうちょっと涼しくてもいいかなーと思うけど……流石に贅沢かな?」
「ダンジョンですから」
でも、薄暗い洞窟で珍しい気候変化もないダンジョンだからそこまで苦にならないのは助かる。面倒な時はひたすらに面倒だったりするからな……ダンジョンってそういう場所。
「神代さんは……自由人すぎて気が合いませんね。いっつも適当にふらふらしてるし、日本のEXのはずなのに依頼は全然受けないしで」
「えー酷い! でも個人的な部分は?」
「滅茶苦茶苦手ですね。押しが強いですし、親戚のおばちゃんかってぐらい構ってくるしで、最悪に近いです」
「もっと酷い!?」
当たり前でしょうが。そもそも、俺が神代さんと知り合ったのは向こうから一方的に因縁つけてきたので殴り合った結果、俺が神代さんをボコボコにしたというのが経緯だし。
:印象悪くて草
:えぇ……
:これは最早普通に嫌われているって言っていいのでは?
:確かに陰の者とは相性が悪そうな性格してる
:仕方ない
:俺だって普通に苦手だと思う
:画面越しだからな
「そんなー!?」
「どんどんいきますよ。次は……最強? いや、俺は別に最強だとは思ってませんが。式神は好きです。そもそも好きじゃなければ頑張って召喚したりしてません」
『やはり私が主様の正妻!』
「あ、貴人は別枠で」
『そんな!?』
:反応がほぼ一緒なの草
:やっぱり同類だろ
:式神が表情豊かなの笑う
:式神に喋らせているだけで普通に配信できるだろ
:式神配信は新しいな
「女にモテるか、ですね。端的に言うと、モテるとかモテない以前に、そもそも女性と会う機会がほとんどありません」
:あ
:すまん
:そもそもボッチ
:探索キチだったわ
:そらダンジョンに女はいない
:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているぞ
:ダンジョンから出ろ
:合コンいけ
:今ラノベタイトルなかった?
:街コンでもいけ
:18歳に街コンは草
:酒も飲めないの街コンで草
「いや、そこまで飢えてもないんですけど……実際、結婚ってした方がいいんですかね?」
:この少子高齢化社会の中で結婚をしないなんてとんでもない
:少子化対策は政治家とイケメンの仕事だから放り投げろ
:でも金は持ってるぞ
:金だけじゃ、結婚はできないんやで
:金だけでモテるほど甘くないぞ
:金で寄ってくる女は金だけだぞ
:俺たちなんだからモテる訳
ひでぇ……でも、実際には高校生までに恋愛しておかないと、大人になってから恋愛の仕方が分からなくなるとかなんとか……そうなんだろうか?
探索者としては滅茶苦茶成功していると自負しているけど、人生経験は未熟なのでそういったことはよくわからない。むしろ、そういうところは視聴者の方が詳しいんだろうか。
「……でも視聴者も陰キャだしな」
:あ
:言ってはならんことを
:戦争、やね
:炎上案件だぞ
:事実陳列罪
:事実だろ
:許せねぇ
:SNSに切り抜いて拡散してやる
:アンチになりました
:レスバ開始や
事実陳列罪なんて言われても、本当のことだから仕方がない。いや、本当のことだとしても言えば視聴者がどんな反応するのかわかって言ってるから俺の方が悪いのだが……別に俺は行儀のいい配信を目指している訳じゃないからこれでいいのだ。
それはそれとして、86階層まで行ったら帰ろう。これ以上深く潜るなら事前に色々と準備しておきたいこともあるし……神代さんに連れられて最下層まで行きましたとか普通に嫌だから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます