第41話
「と言う訳で、作戦会議の時間です」
:こいつ配信慣れてきたな
:まだ三回目だぞ
:どういう訳だよ
:こいつやっぱり唐突だな
:勝手にやれ
今日は新しい挑戦と言うことで、ダンジョンではなく自宅から配信している。ダンジョン配信者だけを雇う計画が頓挫したので、いっそのことバーチャル配信者も雇ってみようかなと思ったのだ。そういう訳で、ゲーム配信なんかも今度やってみたいと思っている。
「この間、ダンジョン配信者の会社を立ち上げて運営したい的なことを言ったじゃないですか」
:言ったか?
:記憶にねぇ
:そうだっけ?
:知らん
:なんか深層に潜る前に言って気がする
:あー……そうだっけ?
「皆さんテキトーですね」
:お前に言われたくない
:お前にだけは言われたくない
:如月君が言うのか
:無計画の極みが?
視聴者を俺のことをどう思っているのかは理解できた。売られた喧嘩は買うぞこの野郎ども。
「で……最近知ったことなんですけども、ダンジョン配信を専門にやっている人、実は滅茶苦茶少ないです」
:うん
:知ってた
:え、逆に知らなかったの?
:えぇ……
:やっぱり無計画じゃん
「だから、ダンジョン配信者以外の人も募集しようかなと思ったんです。いや、まだ起業してないですけど」
俺が思っていたダンジョン配信の数より半分くらい現実は少なかった。流行ってるって聞いたからいんなもっとやっているものだと思ったのに、やっててもダンジョン配信専門じゃなかったり、上層や最上層でチマチマしている人ばかりだ。
「下層に行ける人とかもっと配信するべきだと思うんですよ」
:お前とかな
:深層行け
:高そうな部屋やな
:テレビでか
:こんな高そうな部屋に住んでる癖に無計画なのか
:無計画でもなんとかなるほど金持ってんだろ
「人の部屋の内装とか関係ないじゃないですか?」
みんな俺の私生活のこと気にし過ぎでは?
「そんなに言うなら高山ダンジョン行って狩ってきた蟹の調理配信にしますよ?」
:それならそれで面白そうだからいいよ
:蟹なんて狩ってきたのか
:美味い?
:料理配信にしよう
:料理しながら雑談しよう
:調理配信でいいよ
はークソムカついてきたので本当に蟹の料理配信にしてやる。
舐めんなよ。一般人は一生かかっても食えないような蟹料理だけど、値段は教えずに料理してやる。
:その蟹って高級料亭とかにしか流れないやつじゃない?
:高山ダンジョン産の蟹って、なんかテレビで見たことあるぞ
:ちょっと前に市場に出たとかニュースになってたな
「……」
:黙って草
:押し黙るな
:沈黙は肯定だぞ
:時価じゃん
:何億の価値なんですかね?
「俺が自分で狩ってきたので無料です」
誰がなんと言っても俺が今から食べようとしている蟹は無料だ。だって俺が狩ってきて、そのままちょっと脚を貰っただけなんだから無料に決まってる。
:無料でゴリ押すな
:無料(自分で獲ってきた)
:生産者表示配信じゃん
:私が出荷しました(如月司)
:生産者表示は草
:草
:俺にもちょっとくれよ
:転売しよう
「蟹食べながら質問返信していくので、適当に質問考えておいてください」
もう諦めた。この視聴者たちの距離感はこれぐらいできっといいんだ……だってコメント欄で勝手に盛り上がって遊んでるから。
個人的に蟹はシンプルに蟹鍋で食うのが一番美味いと思っている。そして締めは雑炊。料理酒、みりん、しょうゆ、和風のだしにポン酢を少し入れれば普通にそれだけで食べられる味になる。後は豆腐とか白菜とか入れておけば終わり。ただし、普通の蟹鍋と違って、食べる蟹の高級さが段違いなのでこれだけでも滅茶苦茶美味い。
「はー……夏にクーラーが効いた部屋で蟹鍋食べるのは、なんとなく贅沢ですね」
:腹減ってきた
:夕方にこんなもん流すな
:クソ、蟹食いたくなってきた
:ズワイガニの旬は冬だからな
:紅ズワイガニなら夏でも食えるぞ
「視聴者さん達はそこら辺の蟹でも食べててくださいね」
:こいつ急に煽ってきたぞ
:本性表したね
:飯テロやめろ
:残業中のサラリーマンのこととか考えないんですか?
:帰宅ラッシュ中に飯テロとか最悪で草
おーおー、さっきまで俺のことを煽って楽しんでた視聴者たちが、今度は歯を食いしばってこちらを恨みがましそうに見ている姿が思い浮かぶぞ。
「それで、質問は考えておいてくれたんですか? 今なら質問受け付けますよ」
:蟹美味い?
:蟹は美味いか?
:蟹幾ら?
:蟹どんぐらい美味い?
「蟹の質問は受け付けませんから」
:は?
:最大手の質問やろうが
:ちゃんと受け付けろ
:質問に答えろ
「はー? 受け付けませんが?」
蟹については黙秘させていただく。知りたいなら金払って自分で高級料亭に行くか、自力で蟹を狩れるようになって高山ダンジョンに行ってこい。
:アサガオちゃんと付き合い始めた?
:渋谷ダンジョンってどこまで行ったことある?
:海外のダンジョンで二度と行きたくないとこ
:式神見せろ
:ダンジョン探索って苦行じゃない?
:日本のことどう思ってる?
:テストの順位どれぐらい?
「はい、一個ずつ答えていきます。えー……あさか、アサガオさんとは付き合ってません」
:あの子、普通に個人情報載せてるから普通に朝川さんでもいいのに
:結構頓着してないぞ
:みんな普通に本名知ってるからな
「それでも一応です」
なんでみんなそんな朝川さんとの関係を知りたがるのだろうか。俺としては普通の友達なんだけど、やっぱりネットの人たちからしたら、男女で一緒に歩いているとカップルに見えるんだろうか。わかる……俺も陰キャだから街中で男女が歩いているとカップルだと思うもん。
「次は、渋谷ダンジョン? あー……どうでしたかね……なんか去年に82階層ぐらいまで行った気がします」
:は?
:公式の最高到達階層75とか言ってなかったか?
:おっと?
:やってしまいましたね
「えっ!? そ、そうでしたっけ?」
やべ、結構面倒だから申告とかしてないんだよな。流石に申告せずに最下層まで行ったことはないけど、多分公式で発表している最高到達階層より下に行ったことがあるダンジョン幾つかある気がするぞ。
「つ、次ですね。行きたくないダンジョンの海外……グリーンランドにダンジョンがあるんですけど、そこですかね?」
:どこだよ
:グリーンランドは草
:想像以上に僻地だった
:なんで?
「寒いんですよ。ダンジョンの内部も」
:えぇ……
:くっそどうでもいい理由だった
:寒いと運動能力下がるからな
:そんな僻地も行かないといけないの?
:EXは大変だな
「いや、趣味で行きました」
実は全世界のダンジョンを巡るのが夢だったりする。
ちなみに、グリーンランドは国じゃなくてデンマークの自治領だったりするので、グリーンランドのダンジョンに行くためにはデンマークとグリーンランドの両方に話を通さないといけない。
「次、式神見せろ? 嫌です。次……日本? あー……相変わらず全ての対応が後手に回る国だな、ぐらいですかね?」
:シンプルに嫌ですで草
:断られてるの笑う
:日本に対する感想がちょっと悪いのなんでなん
:国の奴隷だからね
:式神見せろ
:EXが国に対する印象悪いのは洒落にならないのでは?
「はい、次……テストの順位? えーっと」
確かファイルの中に入れてあった気がするけど……どれくらいだったかな。
「514人中の……124位ですね。テストの5教科平均で言うと72点ぐらい?」
:悪く、ないけど……良くもない
:いい方やろ
:はえー俺は昔500人ぐらいいて450位だったぞ
:俺の方が頭いい
:現役だけど5教科平均84だ
:うーん普通
「平均点以上あるからいいんですー」
元々、勉強はそれほどできる方じゃないからいいのだ。平均点を超えているからちゃんとできているということにしておいてくれ。
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