第4話:幼馴染の秘密
ショッピングモール内にある喫茶店。
一角が個室とは言わないがブース状になっており、特に今は喫茶店を利用するお客さんは少ないのでこれなら落ち着いて話が出来るだろう。
慌ててお財布を取り出そうとするも、大人の男性が「ここは僕が出すから」と言ってくれた。もっともその直後に陸翔が彼の脇腹を突いて「穂乃香の分は俺が出す」と言い出す。
「こら、陸翔! そんなことしたら失礼でしょ。……まさか、陸翔が脅す側!?」
陸翔が脅されているのは大問題だが、陸翔が脅す側でも大問題だ。
そんな!とショックを受けるも、陸翔が「大丈夫」と返してきた。脅され疑惑の男性も苦笑しながら問題ないと告げてくる。
そうしてブース席に着く。
「変に隠しても余計に心配させちゃうし、こうなったら全部話した方が良いと思うんだ。陸翔君、太我君、良いよね」
「俺は穂乃香になら良い。というか、ずっと話したかったし」
「俺も。陸翔の幼馴染なら黙っててくれんだろ」
いったい何の話なのか、三人が何かを確認し合う。
次いで代表するように男性が名刺を取り出した。
陸翔達には「こういう事があるから持ち歩いてって言ってるのに」と文句を言っているあたり、陸翔も名刺を持っているのだろうか。
見せてもらった事もないし、そもそもどうして中学生が名刺を……?
「自己紹介が遅れてごめんね」
そう告げて、男の人が名刺を差し出してくる。
名刺なんて初めて貰うからドキドキしてしまう。どうやって受け取れば良いのか分からないのであわあわしてしまった。
それでも受け取った名刺を見て……、「えっ!?」と声をあげてしまった。その瞬間に、陸翔達全員が唇に指を当てて静かにと訴えてくる。
でも驚いてしまうのは仕方ない。
だって名刺に書かれてるのは……
「『
「あ、その愛称で呼んでくれてるんだ。嬉しいなぁ。やっぱり若くて可愛い子から呼ばれると喜びがっ……、ご、ごめんよ陸翔君、だから防犯ブザー出さないで!」
「今のは智樹が全面的に悪いな。でも許してやれよ、陸翔」
「……二度目は無いと思え」
陸翔がじろりと睨みつければ、トモル兄の名刺を渡してきた智樹さんが平謝りしてきた。
次いで改めて私に向き直る。
「名刺にも書かれてるけど、僕は『
智樹さんが、派手めな井出たちの高校生を紹介する。
タイガこと太我君は私の方を見て「よろしく」とだけ言ってきた。
あっさりとした短い挨拶なのは、元々彼の性格か、それとも私が既に次に明かされる事実に、……私にとっては衝撃すぎる事実に気付きかけていて、話を進めようとしてくれているのか。
「……陸翔、もしかして」
まさかという思いで隣に座る陸翔を見れば、陸翔は穏やかに目を細めてうんと一度頷いてきた。
「俺がレト。穂乃香の推しのレトだよ」
陸翔の言葉に、私は言葉を失い、目をぱちくりと瞬かせるしかなかった。
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