第5話 ドロシイ、不思議な卵を見つける?

「ええと、なんで僕のが大丈夫なのか、ブリキのが駄目なのかをきちんと見て確認しよう!」


 集めてきた薬草を草があまり生えていない地面に広げる。

 全部大丈夫だと言われたカカシの癒され草は根から取っていて、土がまだうっすらと残っているみたいだ。丁寧に採集したみたいだ。

 ブリキのを見てみると……。

「あ、茎から取ってる!」

「これ、葉がつるつるかも。もしかして、くたびれ草かも?」

「乱暴に握ったいたから、ちょっとしおしおしているね」

「そっかぁ、採集するって、取るだけじゃ駄目なんだね。きちんと依頼をした人に届けるまでがクエストだもの」

 ドロシイは自分の取ってきたものが半分しか使えない、と言われたのを思い出す。確かに、あわてて茎から千切ってしまったものもある。

 カカシはカバンから薬草図鑑を取り出す。

「前に母さんに聞かせてもらったんだ。癒され草から作るポーションは新鮮なものほど良いって。癒され草は茎から取るとすぐに萎れちゃうから根からとらないといけないって」

「薬草によって採集する時に気を付けないといけないのね」

「ビビり草は根に毒があるから茎から。聖水草は葉だけしか使わないから、一株から数枚だけ取れば、また大きくなるって。たくさん取りすぎないで適度に残すことも大切だったて言ってた」

「すごいやカカシ!」

 レオンもにこにこと物知りなカカシを誉めた。

「ぼ、僕まだ全然……知らないことが多いから……」

「よーし、じゃ、根っこから取れば良いんだな? もう少しがんばるぞー!」

 なんて、調子の良いブリキの声が聞こえた。


  ドロシイも今度は丁寧に癒され草を採集していく。

 その時、草の合間から何かがごろんと白い卵かわ転がってきた。

「わわっ」

 両手に入るくらいの大きさの卵。これは何の卵だろう?

「ニワトリの卵よりもずっと大きくて、ドッジボールの玉ぐらいの大きさ……?」

 するりと出てきたその言葉に疑問を覚えることもなく、ドロシイはコツコツと卵をノックしてみる。

「卵さん、卵さん、入っていますか?」

「ココツコツ」

 卵の中からコツコツと返事があった。ドロシイはビックリして再び問いかける。

「もうすぐ産まれるんですか?」

「ココツコツ」

「お母さんは近くにいますか?」

「……」

「ひとりぼっち、ですか?」

「ココツコツ」

 ドロシイは、ひとりぼっちは寂しいとしんみりとしてしまった。

「一緒に来ますか?」

「ココツコツ!」

 ドロシイは、この卵の中の子がどんな子でも、育てようと思って、怒られないようにひっそりとランドセルの中に優しく卵を入れた。


 再び皆で集まったときには、52本も癒され草を採集することができた。

「うーん、この最初に取ってきて、オズに使えないって言われた薬草が勿体ないね」

「あっいいこと思い付いた! 孤児院のシスターが癒され草を潰して薬草クッキー作ってくれた事があって! 持っていったら作ってくれないかな!?」

 ブリキの提案に、薬草クッキーは苦くておいしくないけれど、シスターがこのクエストに使えない薬草を活用してくれるならと袋に入れて渡すことにした。


 お昼寝から起きたオズはじっとドロシイたちを見て、「報告までがクエストだからな」なんて声をかけた。


 帰りに同じ様に靴の裏の泥を落としてから、歩いて街まで帰っていった。


「受付のお姉さん! クエスト依頼の癒され草納品だよ!」

「2……4……6……うん、きちんと12本づつの束になっていて、根から綺麗に採集されていて品質も良いわね、はい。確かにクエスト達成です! 銀貨12枚が報酬ね」

「「「やったー!」」」

 はじめてのクエスト達成に皆が喜ぶ。

「さ、皆。クエスト終わりはちゃんと手を洗って、足も洗って怪我が無いことを確認するんですよ? 気づかないうちに……なんてこともありますからね」

「さ、帰ろーぜドロシイ!」

「ブリキ、えっと……帰るって……どこに?」

「何いってるんだよ、カカシは魔法使いの両親の家に、レオンも母さんのところに。俺たちは孤児院のシスターのところだろう?」


 私の帰るおうちはそこだったかな? なんて疑問もするりと溶けて、そうだった。シスターのところに帰らなきゃ。なんてドロシイは思い直す。


 ブリキとはじめてのクエスト達成について報告すると、シスターはとても喜んでくれた。

 手を洗って皆でご飯を食べて、お風呂に入って……。


 中を整理しようとランドセルを開けると、そこにはつるりと白い卵が入っていた。


 そうだ、草原で拾った卵。

 卵からどんな子が出てくるかな……楽しみになりながら卵をぎゅっと抱いて眠りについた。



 朝早く、ドロシイは何かに頬をつつかれる。


「んんっ……なぁに?」

 目を擦りながら開けると、そこには黒くてふわふわの何かがいた。

 くりくりのつぶらな瞳と目があうとーー

「ウキュ?」


「ドラゴンの赤ちゃん!!?」


 その子は小さな角と小さな牙と小さな翼を持つ小さなドラゴンがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る