第7話 初恋の想いが溢れて
次の日はバーベキューを俺の家でした。マイカは楽しそうにしていて俺も嬉しい。俺の母親は、肉を焼いているだけでマイカに話しかけているのだが、それもマイカは喜んで話を聞いていた。俺もそこに混じって会話をした。
肉は新鮮なものを用意できなかったが、野菜は沢山準備していてマイカはそれに夢中になっていた。
あれから数年経った。料理を食べたり、外で走り回ったり、本を読んだり、ピクニックをしたり……。
ピクニックをする時は、天気が良い時。ジュースとデザートをカギに入れてピクニックを行った。主に学校でのことを話していたが
「好きな子でも出来た?」
と聞いてきた時にはドキッとして、ムスクれてしまった。
「揶揄うなよ……」
と言って。
しかし、ある時のこと。
長期休みが終わり、学校が始まった。また、いつも通りの毎日が続くと思っていたが、違った。
「おはよう」
朝、俺より早く家を出たはずのマイカがいたのだ。
「え?あれ?」
寝起きでぼけている頭で考えるが何も浮かばなかった。
「先に言っておこうと思って」
「何を?」
「引っ越すの。ここよりずっと西の方にね。もうここには戻ってこれないかも」
「へぇ……そうなんだ……」
あまり、驚きはしなかった。俺はマイカがいなくなることよりもこの家がもっと静かになってしまうことが嫌だった。
「ねぇ、ジュンのご両親によろしく伝えておいて」
「あぁ……分かった」
「まぁ、後三ヶ月はいるからその間にいっぱい遊ぼうね」
それからいつも通りの三ヶ月を過ごして引っ越していった。
「また、会える?」
その言葉に彼女は
「いつかね」
と答えてくれた。
それから数年経って、彼女も結婚したと風の便りで聞いた。それからの連絡は聞いてない。
ケイマの過去について、俺は聞くことが出来なかった。ただ、俺は思うところがあった。
それは、俺にもマイカのような存在がいたということ。その人を失った経験をしてきたから分かる。俺はケイマにその人の影を重ねて見ているのだろう。でも、俺はケイマをマイカとして見ることが出来ないでいた。ケイマは俺のマイカではないとはっきり自覚しているからだ。ケイマのことを、恋人としては見ていないが、大切な存在になっていた。もっと言うなら、小学生にもなっていない小さな少年を守らなくてはと強く、強く思っている。
彼の心を守るのは俺の仕事だと。だから、彼に何が何でも俺がついていてあげないといけない。
「…………」
いつの間にか寝ていたらしい。夢を見ていた気がするが、思い出せない。
ただ、大切な夢を見ていたと思う。
外は寒く、部屋の中が暖かいのが安心できた。ケイマも俺に寄りかかって寝息をたてて寝ている。
ケイマは大分懐いてくれた。細すぎる体も年相応の体重まで戻ってきて、表情も良くなってきた。それでもまだ俺が支えてやらなくてはいけないが、少しずつ成長していることを感じている。俺と二人っきりになると甘えた声を出すので、それが愛おしくてたまらない。まるで親鳥になった気分だ。
ふわっと風が入る。寒い冬はまだ続く。ちゃんと春を迎えられるだろうか。今年の春の花がは咲いてくれるのかな?と心配してしまう。
俺は冬から春にかけて、雪が溶けるのが好きだ。季節が巡るのが好き。
春には、花を愛でてピクニックをする。
夏には、色んな虫を見て発見したこともあったな
秋には、木の実が落ちていてそれを拾った。本を読んだりもしたな。
冬は、部屋の中で温かいご飯を食べる。
初恋は俺を縛り付けるかのように、想いが溢れてきた。
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