第3話 休日のお出かけ

 ニューズト大陸の経済活動は主に二つに分けられている。第一次産業として農業・水産などの自然・天然資源の採取産業。海に囲まれた大陸なので、水産や船旅は栄えている。第二次産業として金融、観光、教育などのサービス産業がある。

 山脈、乾燥帯の地域もあるが、俺が住んでいるアパートがあるのは東部高地の温帯地域にあたるので、一年を通して過ごしやすい環境だ。ただ、寒い時は本当に寒い。特に冬の寒さは身に染みる。

 俺はこの東部地域のとある小さな街の会社に勤めている。主に中小企業向けで営業をしていて、企業と仲介に入るなどの中間業者だ。仕事内容は簡単に言えば「企業の相談相手になること」と、いった感じ。仕事のやり方は自分で考えないといけない。

 

 結局、仕事の間はケイマを実家に預けて、休日に俺のアパートに来るようになった。

 ケイマの服は、ボロボロの布の服が一着あるだけで着替えなどはなかったので、とりあえず母親が俺のお下がりを着させれいるが、ほとんど人にあげたか捨てたかだったので、数着買いに行くことにした。

「好きなのある?お金は両親から貰っているから」

服屋はお子様用の衣類も揃えられていて、ケイマに似合いそうなのを選んだり試着させたりした。

子供は嫌いだ。昔は好きだったが、小学校から中学校にあがるにつれて段々と子供らしさを失っていく同級生達を見ると子供はいいやと思ったのだ。だからケイマに対しても特別優しく接するつもりはなかった。

でも、ケイマは人の顔色を伺うのが得意なのか、「これが良い」「これはダメ」と言っても、ちゃんとその通りにしてくれた。俺にとっては、このくらいの子なら駄々をこねたりするのかと思っていたので意外に思った。それにしても子供にしては静か過ぎる気もするが……。

「ケイマの本当の両親は誰なんだ?」

俺は聞いてみた。するとケイマは表情を曇らせて下を向く。

ケイマの家庭事情はあまり話したがらないし、聞くと悲しそうな顔をするので俺も深くは追求しなかった。


 服屋ではトレーナーと羽織るパーカーを一着ずつとフードがついた中がモコモコのコート、靴下を何足か買って車に乗った。

「どっか、行きたいとこある?」

俺は赤茶の髪の毛を掻きながらケイマに聞いたが返事はない。ずっと窓の外を見て景色を覚えようとしていた。

 ただ、俺はなんとなくだがケイマは感情表現が苦手なのではないかと感じた。俺も人と会話するのは得意じゃない方だし人並み以下だと思うがケイマはそのレベルを超えている。というより感情が欠如しているようでもあった。

「どこかに行きたいなぁ」

独り言のように呟いた。

ケイマがこちらを向いて首を傾げる。

「ハンバーガー食べたことある?」

「見たことはあります」

「よし、食べよ」

と言って、都心の駅前に行ってハンバーガー専門店に行った。オージービーフを使い、さらにベーコンやチーズを挟むボリュウム満点の見かけは食欲をそそりそうだ。

 ケイマはあまりご飯を食べないから、消化出来なかったら大変なので、コーンスープとお子様サイズのポテトフライのセットにした。

「美味しいですか?」

ハンバーガーを食べる俺にそう言った。

ケイマのその声は少し弾んでいて、初めて見る無邪気な子供らしい姿だった。

「うん、凄い美味い」

冬だというのに、店内の雰囲気は温かく感じて、外は雪がちらつく寒空なのに心まで暖まるようだ。この子にとってこういう経験がなかったのだろう。俺はそんな風に思えた。

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