第4話 最終巨神兵
そこはもはや地球とは思えなかった。
ひっきりなしに、通低音の Buzzing ,、五月蠅いことの象徴的表現でもある虫の羽音が、すさまじい勢いで、嵐のように渦巻き、もはや”轟音”と化していた。
真っ黒なヒョウゴロシの大群が、無意味に、無目的に、すべてを食い散らし、空白の、地獄のように殺伐とした空間だけがあとに残された。
全く見通しは効かず、押し寄せる殺戮と暴虐の津波の中に、ヒョウゴロシの美麗な甲殻のキラキラした玉虫色の反射光のみが散乱していた。
気象用語に倣えば、それはさしづめ”ゴールド・アウト”ともいうべき奇妙な光景でもあった。
恐竜の滅亡以来の、いやそれよりもっと徹底した、完全な地球の「最期」、「終末」をもたらしかねない最悪の”地球地図の虫食い”がじわじわと広がりつつあった。
衛星写真はラテンアメリカ全部が黄色い荒野と化していることを壮観なくらいに如実に示していた。
もう、その禍々しい”虹色の巨大津波”が、殆どユカタン半島全土を食い尽くそうとする、その間際だった。
アラスカの某所に密かに設営されている、小都市ほどの規模の気象兵器研究施設「FEATHER」。そこで総力を動員して”創造”された空前絶後の超大型ハリケーン「アトラス」が、緊急事態を終息させるバグバスター、救世主の「最終巨神兵」として、大西洋経由で、いまはもはやそれどころでない「トランプの壁」付近に送り込まれたのだ!
”水”が、この「E・T?」の昆虫モドキの弱点なのは実験で確認済みで、それはこのムシが、水が命の源である地球の生命体のおよそ異質な、アンチテーゼですらあるシステムで成り立っている”アント”なことを示していた。蟻の”ANT”が同じ綴りなのは皮肉な一致だった。
「FEATHER」の存在や、目的、活動内容その他は極秘で、内実に接近を図ったものは容赦なく抹殺された。そうして現在では、ピンポイントに地球上のどこのでも、ほぼあらゆる種類の気象現象を惹起するのが可能だった。複雑怪奇な原理で成り立っている中核システムで、エイリアンやESPなどのオカルトな要素が介在しているのではといううわさもあったが、やはり詳細は闇の中だったのだ。
その「世界軍事力七不思議」の嚆矢たるアングラ施設が神秘のベールを脱ぎ、地球防衛のために「最終巨神兵・アトラス」を醸成した!
最終対決の時は迫っていた…
<続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます