第8話 新しい弟弟子
私は稽古着に着替えると家の隣の敷地にある道場に向かった。表門から入るとちょうど一般の生徒さんたちが稽古後の礼の前に正座で黙想をしているところだった。私は静かに生徒さん方の後ろに移動しながら私に気が付いた
「一同、礼!」
「ふー、今日もきつかった」「コンビニ寄ってく?」
皆、緊張を解いて稽古後の心地よい疲れを満喫しているようだった。
「あれ
近所のおばさんが私を見つけて声を掛けてきた。
「おばさん、こんばんわ。部活があるので最後の礼だけ。」
そう言って〝ペロッ〟と舌を出した。
「さあ遅くならないうちに帰った帰った。風邪をひかないよう気を付けてな。」
「
「今日、クラスに転校生が来たんだけど…誠の忍者修業がしたいって。」
「どこで誠の忍者の事を?忍者の末裔か?」
「そう、加藤段蔵の子孫だって。」
「〝とび加藤〟の子孫、それは有望じゃないか。」
「そうかな。加藤君の〝
「〝とび加藤〟の子孫なら、得意とするのは幻術系だろうな。」
ちょうどその時、加藤君を後ろに従えて
「
「
「はい、初めてお目にかかります。
「加藤君、ここに来たという事は本格的な忍術を学びたい、という事でいいかな。」
「はい、我が加藤家は幻術においては色々な秘術を伝え持っていますが、忍者としてバランスがいいとは言えません。風の噂で戦国時代から脈々と引き継がれる伊賀の棟梁から忍術を学べると聞きました。僕にも是非お教えください。」
「加藤君、私は表向きは「忍者塾」という看板を出して、忍術をベースにして適度に体を動かしたり、サバイバル術を教えている。誠の忍術を教えるにはいくつかクリアしなければならない条件がある、それら条件は必ず守らなけらばならない。」
加藤君は
「では一つ目の条件。誠の忍術を学ぶ者はその事を口外してはいけない。」
加藤君が答えた。
「守れます。」
「二つ目の条件は当たり前だがこの現代において忍術を使って人を殺めてはならない。」
「もちろんです。」
「最後に忍術は誰に教えても身につくという代物ではない。その資質を見せてもらおう。」
「我が一族に伝わるは幻術。しかしそれは正直幻覚を誘発する薬を嗅がせたり、前もって仕掛けを用意しておいて驚かすなど準備がです。」
「我が服部家に伝わる忍術の中心は体術と剣術だ。稽古もそれらが基本となろう。幻術以外の忍術が全く伝わっていないという事もあるまい。仮にそうだったとしても、一度手合わせをすれば、君が忍者としての稽古を受けるに足る資質を持っているかはわかるでしょう。」
そう言うと
「
私は立ち上がると二人から距離を置き、道場の壁に掛けてある時計を確認すると「はじめ!」と声を掛けた。
「一本!そこまで!」
勢い余ってぶつかってきた加藤君を
「なかなかやるじゃないか、加藤君」
加藤君は慌てて数歩下がると正座をして頭を下げた。
「今の君の技、初見の者ではなかなか防げないでしょう。仕掛けるタイミング、そして小学生離れした跳躍力、いいでしょう。君が望むなら私の持っている忍術をお教えしましょう。」
頭を上げた加藤君が顔が喜びで溢れた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
そう言うと加藤君は再び深々と頭を下げた。
「ついに俺にも弟子が出来たわ。あんたの事はダンゾウって呼べばええか?」
「はい、ダンゾウとお呼びください。」
私は新しい弟弟子が出来た事は嬉しかったが、クラスメートに弟弟子がいるといういう状況に、一抹の不安も覚えていた。
花音はくノ一修行中? 内藤 まさのり @masanori-1001
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