第6話 部活の風景
午後の授業が始まっても、さっきの昼休み、体育館裏での三人のやり取りが私の頭から離れなかった。
私はこれ以上
私は忍術の稽古をする事は嫌いではない。例えば木刀を振るう稽古はソフトボールのバッティング技術の向上に役立っているし、私が県下でも有名な陸上競技のオールラウンダーとして常に活躍できているのは、幼い事から父に叩き込まれた、忍者の走りや跳躍の技術がベースにある事に疑いようがない。
しかし私が忍術の練習をしていると学校のみんなが知ったらどう思うだろう。きっと「この令和の時代に忍者?」とか「12歳になって忍者ごっこ?」とか学校の笑いものになるに違いない。それだけは避けたかった。
放課後になって私は着替えると更衣室から走り出た。頭の中のもやもやは体を動かすことで吹き飛ばそう、そう考えに整理をつけていた。二つの運動部を掛け持ちする私のルーティンはこうだ。日が高いうちはソフトボール部で守備やバッティングの練習をし、薄暗くなってからは陸上部に合流して走り幅跳び、走高跳そして800mの練習を気分やコンディションに合わせて練習をさせてもらっていた。
「
後ろから
「なんかスカッとしたくて。今日は打撃練習、最初にやらせてくれないかな。」
「何言ってんの、いつも陸上部との掛け持ちを理由に最初に打たせてもらってるじゃん。それよりどう?転校生の加藤君。背も高いしなかなかかっこよくない?」
頭から振り払いたい加藤君の話題が出て、私は気分が下がるのを感じながら
「
「はいはい、スポーツ万能、学園のアイドル
「そんなこと思ってない。ほらキャッチボール始めよ。」
私はベンチに道具を置くと、グラブだけ持ってグランドに飛び出し、まだグラブをはめていない
グランドに私の長い影が伸びている。私はソフトボール部の集団で作り出す活気の中で自分のテンションが上がっていく時の感覚も好きだが、この陸上部での自分と静かに向き合う時間も大好きだ。右斜めに前に位置する走高跳のバーをじっと
「やった!」
自然とガッツポーズが出る。跳躍系の陸上部員からの拍手がパラわたいパラと聞こえた。その拍手に笑顔で答えつつも内心〝忍術の『
部活動が終わり、着替えて家路につくと校門のところで
「
そう言うと
「
見ると加藤君が〝うんうん〟と頷いている。私は〝プイ〟と横を向くと二人を置いて校門を出た。
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